表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いきなりバディ学園!  作者: らいず
31/35

31

 基本的に、生徒は用がなければ立ち寄らない。通称タワーと呼ばれる棟の廊下を、剣士と花子の二人は歩く。目的地は例の部屋だ。

「絶対何かの間違いよ! あの時周りに人なんか居なかったし…。やっぱりこの制度無理があるんだわ。そう思うでしょ(けん)!」

「んーいやー…どうかなー…」

 今週の評価が相変わらず悪かったのは、自分達の仲の良さを把握出来ていないせいだ。花子はそう言っているのだ。

 一方で、ここでの生活も2年目になる剣士は、そんな事は無いと思っている。人ひとりの行動や言動を追う事など、今の世の技術なら難しくない。ましてこの学園には、ほぼ筒抜けなのは間違いなかった。

(まあ、それはいいんだけど…)

「…ねえ」

「? 何よ剣」

「……やっぱり、苗字呼びに戻さない?」

「戻さない」

「…そう」

「……そんなに嫌なの? そっちも乗り気だったじゃない」

「いやまあ、そこまで心底嫌とかでは無いけど…」

 剣士は先日の一件を振り返り、少し後悔していた。

(あの時は流されすぎた。どこの青春劇場だよって…)

「そんな事じゃ困るわよ。直談判しようって言うのに」

「…わかった。花」

「…んぅ」

(そうやって呼ぶ度に恥ずかしがられるのも、止めたい理由なんだけどね…)

 二人が指導室に向かう目的は、バディの評価に物申す為だった。発案者は花子の方で、不当な評価だと詰め寄るつもりで居る。片や剣士は、別の部分で悩んでいた。

(あの青臭いやり取りも、LCは把握しているはず。だからこそ意外だった。なんだかんだで、こいつとはそれなりに踏み込んだ関係になったはずだし、明らかに他の奴らとは違う。それでもたった5点…。“仲が良い”ってのは、何を基準にしてる? 何を求めてる? まさかとは思うけど…)

 前を行く花子を見ると、精一杯大股で歩き、力強さを表面に出している。今日もロールプレイには余念が無い。お互い本心を打ち明けたからといって、これまで演じていた自分が無くなる訳ではないのだ。

(まあ、様子をみるか)

 そんないつもの傍観事なかれ主義の結論に達したところで、問題の部屋へとたどり着いた。

「いくわよ」

「了解」

 ノックに対する返答を受け、二人はいざ踏み込んだ。


 先陣を切り、花子がLCに詰め寄る。

「――どうなんですかっ!」

「はぁい。野村さん、残念ですが、今回の評価はそれも踏まえてのものです。間違いでは無いんですよ?」

「…へっ?」

(やっぱりね…)

 LCの返答は、剣士の想像通りのものだった。

「な、ならどうして5点なんですか!」

「逆に聞いてしまうのですがー…。今お二人は、百点満点中どのくらい仲良しさんだと思ってるのですかー?」

 それは、いつぞやと似た問いだった。

「えっ!?」

「どのくらいー…仲良しさんなんですかー?」

「い、いやそれは…あれ、あれの…。お互いの秘密的な事を知ってるんだしその…いやでも百点とかそんなあ!?」

(まあ…。俺達百点満点の仲良しでーすなんて、さすがに恥ずかしすぎだよね)

「ご、ごじゅ…あれ? それだと仲がまだ良くないみたいな…でもでも!」

「平城君はどう考えてますかー?」

「…ノーコメントで」

「なるほどー」

 一人の世界に入りつつある花子を余所に、LCと剣士は最短で確認を終える。

 そしてLCは、全てわかったとでも言うように二、三頷くと、両手を鳴らして花子を引き戻した。

「つまりはー、そう言う事なんですよね~。あなた達自身がそう思っているように、こちらの基準でも、まだまだ高評価はあげられないと言う事です」

「…そ、それにしたってたった5点なんて」

「そこについては…まあ俺も同意ですね」

「あらー…。平城君もですかー?」

「これも教育なんですよね? なら、基準くらいは明確になっているべきでは?」

「うーん…」

「まさかとは思いますけど…。恋人とか、そういう関係になるのを求めてるわけじゃありませんよね?」

「こっっっ!!?!?」

(おいやめろ。この前聞いた話からして免疫が無いんだろうけど、そんなその気があるみたいな反応はやめろ)

 剣士の懸念どおり、目の前のLCの笑顔がより一層深まっている。微笑ましいですねーとでも聞こえてきそうである。

(ほらみろ…)

 何が変わるわけでもないのだが、剣士は極力LCにネタを提供したくは無かった。それはどうにも面白くない。

「まあお答えしますとー…。近からずとも遠からず…な感じでしょうかー」

「わあー。LC先生もったいつけた台詞ですねー。使ってみたかったんですかー?」

 これは、いつぞやの意趣返しだった。

「言いますねー平城君ー」

 しかしながら、LCの方はどこ吹く風。

(ちっ…)

「近い…近いの? 初めての仲良しやお友達どころかこっ…こっ…」

「あーそれで?」

「まあ、恋人になればいいとかではないですね。ある意味では、それ以上の関係とも言えるかもしれませんが」

(…結局、大して状況は変わっていないって事か)

 直談判は徒労に終わり、二人は指導室を後にした。


 廊下を歩きながら、剣士は考える。

(俺はこんなだし、花の方もさすがに文句なしに仲良いとは思ってないみたいだし…。というか、そもそも根本が解決してないんだよね。仲の良さが成績になるっておかしすぎ…。これ成績が良くなると…イコールこいつと仲良くなった証明になるって訳で…)

 当の花子は、剣士同様何かを考えているのか、一言も話すことなく黙っている。

(うん、勘弁だね。この歳になって…何の罰ゲームかって。名前の話題を克服したと思ったら、バディ課題について聞かれるのが嫌になりそう。絶対弄るネタにされるでしょ。……うん、適当にやりすごそう。別に良いよ退学にならなきゃそれで)

 バディにおける仲の良さ。その終着点はまるでわからない。理不尽に感じても、授業ならばやるしかない。学生なら、当たり前の感覚だ。

「うーん…」

 その取り組む姿勢に、個人差はあるが…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ