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今日も剣士は、端末のディスプレイを見ながら登校している。
(それらしいニュースは…無しか)
ゴシップ的な記事は、何も先進学園の事ばかりではない。有名人の色恋がどうの、政治家の汚職がどうのと…。ネタさえあれば、そこに群がり野次を飛ばす。
今のところ、先進学園についての新たなネタは、世間に広まってはいないようだった。
(まあ、このタイミングであっても困るしね)
昨日の今日では、自分が情報を漏らしたと勘繰られる可能性がある。ほんの少しでも、自分に不利益が生じる可能性がある以上、無いに越した事はなかった。
「………」
「………」
剣士は、目線を変えぬまま意識を余所へ飛ばす。
今は世間の事より、新たに気になる事が一つあった。
そんな朝の教室…。
「あら! 奇遇ね!」
「…おはよう、野村さん。ここ俺達の教室だけどね」
二人が会うのは当然の場所だった。
「えあっ……。ま、間違えたのよ!」
(間違えたも何も…ねえ…)
剣士が呆れたような反応になっているのには、理由があった。先程の通学中…、彼はそこで、すでに花子を目にしていたのだ。
(まあ…察するに通学路の時点で、声掛けようとしてたんだろうけどね)
剣士が気にしているのは、状況から察するに、最初から待ち伏せされていた可能性がある事。今日、花子を最初に見たのは学園の傍と言う訳ではなく、かなり離れた場所だった。そこから教室へ入るまで、後ろから付いてきたり、近くまで寄ってきたりしていたのを把握している。問題は、どうしてそんな事をしたのかだった。
(昨日の今日だからね…。変な事考えてないといいけど)
せっかく心を整理してきた剣士は、心底何事も起こらない事を願っていた。しかしそんな願いは、ここ最近叶った試しがない。
花子は、何か言いたいけど言い出せない…そんな態度で視線を散らしている。やがて決心したように…口を開いた。
「平城っ」
「うん、何?」
「今週の土曜、またあたしとデ…デ……」
(土曜、また…。ええ…そういう誘い?)
すでに思い当たる事はあったが、自分からはそれを言わない。
「デ……っ遊びに行きましょう!」
「…ふふっ」
「何よ!?」
(いや、意味はわかるんだけどね)
昨日の指摘を受け、何かしないといけないと思った。そして仲良くなる手段として、以前の課題同様、デートに誘おうとした。
(でもいざとなって、デートとは言いづらかった…ってところかな。それならそれで、でかけようとか、そういう言い方で誤魔化せばいいのに。本当に純と言うか、バレバレ…何意識してるんだか)
「いいよ」
先日の件で、心を閉ざしたのは間違いない。しかしなぜか、剣士は自然にそう答えていた。
「え、え?」
「遊びに行くんだよね。まあ、課題だからね」
「そ、そうよ! 課題だから仕方ないのっ」
「どこへ行こうか」
「そ、そうね…」
二人は、二度目のデートの約束をした。




