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剣士は、自らを見つめ、整理していた。
(今回の話…状況は変わってないけど、成果はあった)
小、中、そしてこの先進学園と、実に10年もの間、送っている学園生活。そこに突然落ちてきた異変。
それでも彼は、納得しようとしていた。
これまでもそうだった。これはそう言うものだと思い込むのだ。
自分にとっての敵を、どういうものなのか客観的に定義する。そうする事で、自分に降りかかる形の見えない脅威を、明確なただの出来事に置き換える。
知っている事だからこそ、理論的にそれを跳ね返せる。その為に、周りをよく見た。
つらい時期もあった。しかし彼は、ずっとそうして生きてきた。
自分を害するあらゆるものを、精神的に、自らと関係の無い外側に追いやり、管理してきたのだ。
(嘘か本当かは知らない。でも、少しは現状に納得できる、向こうの本音を聞けた)
何も変えない。何を言われても、自分の心は傷つかない。その何かは、ただ放っておく。無関係なのだから、そのままでいい。実際のやりとりは、全て表面上の演技に過ぎない。
そうする為に、他人をよく見る。
そういう矛盾を抱えて、彼は生きている。
花子は、周りを見つめ、探していた。
(えっと…。頭を、潰す…)
剣士と、似た境遇を経験してきた。そして今、同じ調整委員の立場に居る。
けれど彼女は、現状に納得するつもりは無かった。
これまでもそうだった。自分に非がないのなら、やられる前にやるのだ。
自分にとっての敵が何なのか、その大元をしっかりと見極める。そうする事で、自分に降りかかる明確な脅威を、根本から潰しにかかる。
自分の事だからこそ、自分でやるしかない。その為に、途中でぶれないよう、自らに言い聞かせた。
つらい時期もあった。しかし彼女は、ずっとそうして生きてきた。
自分を害する要因に対し、害される前に、物理的にこちらからいく。相手との関係が決まる前に、自分が優位側に立てば、相手を管理する側に回れる。
(今日の話…。今回の敵ってなに? 仲良くするには、何を潰せばいいの?)
何かを変えないといけない。そうしなければ、またひどい成績を付けられてしまう。ぶつかるしかない。他人も関わる事なのだから、放っておけない。上手くやって、状況を打開しないと。
そうする為に、自分をよく見直す。
(でも…、いつまでもこれで……いいの?)
自分の拠り所だった生き方。
それは自分の性格と言ってもいいし、常識と言ってもいい。その人の根幹。それを変えるのはとても難しい。
しかし、それは…。
「…やっぱり、決めなきゃ」
一人、帰り道を歩く花子が、ぎゅっとその拳を握り締めていた。




