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いきなりバディ学園!  作者: らいず
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 週末。剣士と花子は、近くの商店街前で待ち合わせていた。時間外労働だなんだと、内心で文句を言いつつ指示に従うのは、これが覆る事は無いとわかっているからだった。例えばこのデートも、宿題や課題と言い換えられてしまえば、なるほど普通の学校でも当たり前に存在している。内容が特殊と言うだけだった。遊びに行く事が課題なのは、むしろ人によってはラッキーだとも言える。もっとも、剣士にとっては不運であったが…。

 剣士は今日も端末を開きながら、億劫な気分で歩いている。

『上手くやれよー』

『死んだら骨は拾う』

(縁起でもない…)

 彼が開いているのは、自分の所属するグループのチャットだった。そこでこれからの事を、“お祈り”されていたのである。花子と出かけるとなれば、無事では済まないかもしれない。そんな共通認識が、既にクラス内で出来上がっていた。


 食堂の件が噂となったのもあるが、それにはもっと直接的な原因があった。剣士と出会った翌日、花子は転入生として自己紹介をした訳なのだが…。

「…馴れ馴れしくして来たら! ぶっころぉ!?」

(声裏返ってるし…。と言うかまたそれ――)

「ぅ…うおうらああああああああああ!!」

 剣士の内心での突っ込みが終わる間も無く、彼女は叫び声と共に教室で暴れまわった。結果教室は半壊。当然のごとく、花子はクラスで浮いた存在となったのだ。


 微妙な雰囲気のまま、その後は何事も無く数日が過ぎ…。剣士はこうして今日を迎えている。からかい半分とはいえ、剣士に心配の声が掛かるのも無理は無かった。

 そんな警戒すべき相手との待ち合わせ。剣士は遅れる事の無いよう注意しつつ、無駄な時間を割いて堪るかとばかりに、数分前到着になるよう調整していた。ゆっくりとした足取りで、到着した待ち合わせ場所には…。

「…おはよう…ございます」

 既に、私服の花子が待っていた。

「…おはよう」

 しかし彼女は、なんとも違和感に溢れていた。なぜかその印象はしおらしく、挨拶も敬語になっている。ここ数日で早くも根付いた印象からは、パンツルックの力強い服装が思い浮かぶが、今日の彼女はスカートを着用していた。シンプルに、めかし込んでいると言ってもいい。

 そんな様子に、いつもなら息をするように、「もう昼時だけど」などと適当な軽口を続ける剣士が、挨拶するだけに留まっていた。それでも何とか気を持ち直し、黙ったままの花子に話しかける。

「お待たせ。時間には間に合ったかな」

「別に。あたしもさっき来たところだから」

「じゃあ、とりあえず行こうか」

「ん…」

 そうして、二人は店が立ち並ぶ商店街へ入っていく。

(あれ、なんか…)

 何の問題も無く、テンプレのような会話が成立した。それに肩透かし感を覚えながらも、二人の課題(デート)は始まったのだった。


 待ち合わせをこの商店街にしたのは、いわゆる鉄板だからだった。程よく安物ではないそれっぽい服屋があり、変わった食べ物屋があり、雑多な店があり…何より活気がある。そして、歩くだけならお金がかからない。単に課題でデートをするのに、高い入場料などがかかる場所は躊躇われたし、お互い好みも知らない。そんな知り合ったばかりの学生が遊びに出かけるのに、ここは絶好の定番スポットなのである。引っ越してきたばかりの花子は土地勘が無いので、全て剣士の提案だ。

「珍しいで…わよね。こんなに人が多い商店街」

「あー…。最近は、寂れて閉鎖になるところもますます多いって聞くしね」

「はむ…。これもおいしいし、なかなか…新鮮だわ」

「それは何より」

 二人は、店に入って昼食をとっていた。厨房に鉄板がずらりと並ぶ、地元では“焼き屋”と呼ばれる店だ。なぜそう呼ばれるのかと言うと、粉物焼き物が大抵揃っている。小さな個人店なのだが、人気は高い。

「なんだっけ…これ」

「オリジナル焼き」

「名前でどんなものか全っ然わかんないわね」

「まあね。お好み焼きとかの有名どころとも、なんか違うし」

「見た目それっぽいけどね」

 剣士が待ち合わせを昼頃にしたのは、LCを納得させるだけの時間を花子と過ごしつつ、その上で出来るだけ短い時間で済ませようという考えだった。朝からでは長いし、ほんの一、二時間では、駄目出しを喰らう可能性がある。それならば、どうせ食べる昼食をデート内に組み込み、日暮れには解散しようという計画だ。

(適当な食べ歩きにでもなるかと思ってたけど、こういう店平気なのは嬉しい誤算だね。ファーストフードより時間も潰れるし。何より面倒臭くない)

 剣士は、いわゆる洒落た店以外、拒否する人間も居る事を知っていた。その点、この店は通りがかりに花子の方が選んでいる。理由は単純に、“おいしそう”だった。

「うん。ごちそうさま!」

「ごちそうさまです」

 カウンター向こうの店主に、元気良く挨拶する花子に釣られ、剣士もそれに習う。自分から言う発想は無かった為、彼は少しばかり驚いていた。

「じゃあ、また適当に歩きましょうか」

「…だね」

 剣士は話に合わせ、返事をする。それは、平和だった去年まで、ずっと彼がしていた事だった。

(意外すぎるほど…気が楽だな。警戒は解けないけど)

 デートはまだ始まったばかり。二人は、再び商店街へと繰り出した。

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