ちょっとだけオチのある短編集(ここを押したら短編集一覧に飛びます)
辛いコウシン料
世の中はスパイシーだネ。刺激的なものばかりで溢れてル。
特にこのカレーなんてものはソレの代名詞ヨ。そう言ってもいいくらいだヨ。
実にスパイシー。辛いコウシン料がこれでもかというくらいに入っていル。どうしようもないくらいニ。
そして、ワタシはこのコウシン料という名前のものを甘く見ていタ。
「賃貸物件のコウシン料……まだ待っていただけませんカ?」
「いいや、ダメだ。もう三ヶ月だぞ。三ヶ月待った。それなのにお前は更新料を払えなかった。三度目の正直でもダメならもう諦めるんだな。世の中そんなに甘くないんだ。もう明日には出ていってもらうぞ」
非情な言葉が耳に飛び込んでくル。
突然家に押しかけた彼は、その非情で辛辣な言葉を言い残し帰っていっタ。
ワタシはどこで間違っていたのだろうカ。
やはり日本の高級な一等地でカレー屋を始めようと考えたあたりだろうカ。
それとも、世界一激辛で誰も食べられないカレーを作ってしまったあたりだろうカ。
今ワタシの鼻腔には、世界一スパイシーなカレーの匂いが立ち込めていル。
だが、もうこの辛さとはもうおさらばダ。
甘くやさしい家族が待つインドへと帰る時が近づいていル。
しかし、最後にワタシには、やらなければならない辛い仕事が待っていル。
この三ヶ月、日本で学んだ日本人の心。やさしい日本の心。それは、もったいないという日本独自の精神。
ワタシはこの精神が大好きダ。だから、この精神をもって、ワタシが作った世界一激辛なカレーを全部食べるのダ。帰国するまでニ。
そしてワタシは皿にカレーを盛ル。
スプーンですくい、口に放り込ム。
「ああっ! 辛いネ! 辛いネ!」
目から涙が出てきタ。辛すぎテ。
もったいないはやさしくなかっタ。辛かっタ。
それにしても、この量はとても一人では処理できそうになイ。ひと口であの辛さなのダ。
ワタシは無事に帰国できるのだろうカ。行き先不安であル。