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シュナ、真の魔王と対峙す

「何でお爺さんもついて来るのよ」


 私たちとルヴルフの魔王見学……じゃなかった、討伐に、なぜかドワーフのお爺さんまでついてきた。

 お爺さんが口を尖らす。

 全然可愛くないから、それはやめたほうがいいと思う。


「何でってそりゃぁ……。魔王なんて珍しいもん、わしだって見てみたいじゃろうがい。せっかくなんだからよぅ。それともあんた、年寄りをいじめるんか? 仮にも竜であるルヴルフが一緒なら、危険はあるまいて」


「まぁ、いてもいいけどさ。いざとなったら、私は守んないからね。アイシャちゃん連れて逃げるから」


「かーっ。お前さんみてぇな娘っ子に、守ってもらおうとなんざ思わんわい。そんなチンケな剣よか、わしのツルハシのほうがよっぽど強いっつーの」


 そう言って、お爺さんはぶっとい腕をがしっと叩いた。

 まぁ、そんだけ筋骨隆々なら、ちょっとやそっとじゃやられないか。

 みんなで魔王見学……じゃなかった討伐としゃれこもう。


「おいっ。そろそろのようじゃぞ! そなたら、もう少し、緊張感を持たぬかっ」


「だって。ルヴルフなら、楽勝なんでしょ?」


「そなたのぅ。一応、手伝いに来たということじゃったろう? われ一人にやらせて、な~にが『お互いの利益のため』じゃ!」


「まぁまぁ、危なくなったら助けに入ってあげるから。万が一の時のためだと思ってさ。大船に乗ったつもりでいてよ」


「ふんっ。……気を引き締めろ。仮にも相手は魔王じゃからな」


     :

     :

     :


 何もない、だだっ広い空間が広がっている。

 その中央から、にゅっとハゲ頭の男が現れた。


「このダンジョンに、私が生み出した魔物以外の魔物が入って来たのは久しぶりですね。何者です。このダンジョンは、七災王の配下、ランドールの持ち物と知っての狼藉ですか?」


「ランドールだとぅ? 知らん知らん。われはこのダンジョンを乗っ取りに来たのじゃっ。さっさとわれに倒され、ダンジョンを明け渡すがいいっ」


 モグラがびしっと指を突きつける。

 一方の、突きつけられた方はちょっと呆れ顔だ。

 まぁ、そりゃそうだよね。

 どう見てもモグラだもんね。


「ふむ、どうやってここまで入って来たかは知りませんが、魔王のことをよく知らぬと見える。どれ、少し遊んでやりましょうか」


 と、ランドールと名乗った魔王が指をパチンと鳴らした瞬間、地面が急激にせり上がり、土の柱がモグ竜を天井に叩きつけた。


「貴様らはなんなのです。見たところ、魔物ではない……人間のようですが」


「あ。こっちのことは気にしないで。見学ですんで。……それに、ルヴルフもこのぐらいでやられるとは思わないし」


「ほう。だいぶ買っておるようですね。あのデカブツを」


「そういうわけでも、ないんだけどね。あ、ほら。上。気をつけて」


 魔王が上を振り仰ぐ。

 すると、土の柱から逃れたルヴルフが巨体を活かし、魔王を叩き潰そうと落ちてきたところだった。


「やるぅ!」


 これで魔王は跡形もなくぺしゃんこに……

 と思ったら、魔王は別の場所からまた、にゅっと出てきた。


「おのれっ。すばしこいやつ!」


 振り向きざま、ルヴルフは爪を振るう。

 爪から生じた斬撃が真空派となって、魔王を切り刻む。


 竜巻にも似た暴風が魔王を細切れにした。

 あれではひとたまりもない……と思っていたら、また再び魔王が別の場所から、にゅっと顔を出した。


「無駄なのが分かりませんかね?」


「なんの、まだまだ!」


 モグ竜は両手をつき、意外にも素早い動きで魔王に駆け寄る。

 おお。

 走ってる姿は結構、様になっている。

 竜……って感じではないけどオオカミみたいでちょっとかっこいい。


 モグ竜が大口を開けた。

 口の端からチリチリと火花が散っているのが見えた。

 ブレスだ!


「ふん」


 超高温のブレスが魔王を焼き尽くすかに見えた寸前、魔王はまたしても床にどろっと溶けて、別の場所からにゅっと現れた。


「こ、これではキリがないっ」


 モグ竜がつらそうに息をつく。

 あいつ、太めだから……すぐ息が上がるんだな。


「ほらほら、どうしました。それで終わりですか。ではこちらからいきますよ? まずはこれを受けてみなさい。〈鋭利化〉三倍」


 魔王の足元から、土の剣が生み出された。

 剣はくるくる回りながら飛び、ルヴルフの首を跳ね飛ばさんと迫る。


「ちぃっ!」


 間一髪、華麗にバック転して難を避けるルヴルフ。

 だが、どんどん土の剣は量産されていき、二十本近くが舞い飛ぶようになる。


「だあっ!」


 ルヴルフは土の刃に突進し、全身で受け止めた。

 その皮の強靭さに刃が立たなかったのか、土の刃が粉々に砕け散る。


「少しはやるようですね。ですが、私の力はまだこんなものではありませんよ? 次は〈鋭利化〉六倍までいってみましょうか」


 次も腕で防ごうとしたみたいだが、ルヴルフは慌てて腕を引っ込めた。

 まともに当たったら、次こそ切り裂かれると思ったんだろう。


「われを、なめるなぁあああっ!」


 ルヴルフが巨大なブレスを吐く。

 熱せられた土の剣はぼろぼろと崩れ去ってしまった。


「はぁっ、はぁっ」


 うーん。

 助太刀したほうがいいかなぁ?

 でも、別に魔王だって悪いことしてるわけじゃないんだよね。


 なんて思ってたら、ドワーフのお爺さんから服のすそを引っ張られた。


「のうのう」


 それ……、アイシャちゃんがやると可愛いけど。

 お爺さんがやっても可愛くもなんともないやつー。


「なに?」


「さっきから〈鋭利化〉何倍とかゆうてるんは、どういうことじゃと思う?」


「え? だから、そのままでしょ。〈鋭利化〉の魔法を込めてるんじゃない?」


「土くれで出来た剣にか? そら、おかしくないかね」


「おかしくはないんじゃない? ただのブロンズソードでも〈鋭利化〉が2~3もつけば、鋼の剣と渡り合えるぐらいにはなるんだから」


「むぅ。それもそうか……ちぅことは、待てよ……?」


 と、お爺さんは自分の世界に入り込んでしまった。

 一方、魔王とルヴルフの戦いは佳境に到達していた。


「鱗を持たぬ竜の分際で、十倍まで耐えますか。では、次は、二十倍と行きましょうか。……さすがに、この私でも、一本しか作れませんけどね」


「くぅっ! なんだって、お前、そんなに強いのじゃ! こんな、バウンドエイプしか出ないようなシケたダンジョンのヌシのくせに!」


 あ、ルヴルフのやつ、イワカゲスライムのことを知らないんだ!

 実はここ、イワカゲスライムがバウンドエイプの遺体を食べちゃってるから分かりにくいだけで、魔石ザクザクの超優良ダンジョンなんだけど。


「クハハハ! 身を隠すため、わざと人間にも興味を抱かれぬような、シケたダンジョンとして作ったかいがありました! おかげで、あなたのような竜を呼び寄せる羽目にはなってしまいましたが……」


「おのれ、卑怯なぁっ」


「何とでも言いなさい! さぁ、私の最大の力を受けてみなさい! 〈鋭利化〉二十倍だぁッ!」


 あ、これは助けに入らなきゃダメなやつ!

 私はその場を駆けだした。


 そして……


「な、な、なんだ? あなた、一体何を!? 私の〈鋭利化〉二十倍の剣が、いとも容易く……! その剣は一体何ですっ!?」


 ブロンズソードが薄暗いダンジョンに閃く。

 ランドールと名乗った魔王は、驚いたように目を見開いていた。


◇実は嬉しいお知らせなのですが、この度、こちらの作品が書籍化していただけることに決まりました。わーいわーい。

詳しくは割烹に書いてあります。それで、私自身あまり詳しくないものでお願いなのですが、感想や割烹などで、お好きなイラストレーターさんを教えてもらえると嬉しいです!

編集者さんにも提案してみますので!(通るかどうかは分からない)

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