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第6話 くそっ人間どもが!


 この世界の秘密……もとい、ゲーム『アルカディア』の事を考えていたら、図書館の人…なんて言ったっけ?


 まあいいか、その司書が「もうそろそろ閉館です」と伝えに来た。

 俺は、混乱してたのか狼狽しすぎてたのか、気が付いたらすぐ横に人がいてビックリしたよ。


 とりあえず、本を片付けて孤児院に帰るか。


 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 

 孤児院の食堂で、子どもたちと一緒に晩御飯を食べていると、ミネルヴァさんに「収穫はありましたか?」と聞かれたけどなんて答えたっけな……。


 その後も、「大丈夫ですか?」「顔色が……」とか聞かれたけど、曖昧に答えて、あてがわれている部屋に引きこもった。


 

 考えがまとまらない。

 混乱がおさまらない。


 

 よし!いったん素数を数えて落ち着こう。


 12345678910・・・ふう。

 素数って何だっけ?


 馬鹿なことを考えていたら、多少頭がすっきりした。

 考えなければならない事がいくつもある。


 しかし、さっきから頭の中をぐるぐる回っているのは、俺の所為でサーシャさんを危険な目に合わせているという事だろう。


 いや、厳密には俺の所為ではないと理解できている。

 ゲームを普通にプレイしていただけだし、俺がやったこともサーシャさんを聖女に任命した事だけだし……。


 確かに、寿命の短い人族とは言え(聖女すぐ死ぬな~)と思った事はある。


 しかし、キャラクター全てのフレーバーテキストなんて読まないし、というか読めるわけがない。


 もしかしたら、何故死んだのか?という死因もフレーバーテキストを辿っていけば、特定出来たのかもしれない。


 とは言え……人族が聖女を使って何かして、失敗をしたら処刑しているなんて思うわけがない。


 それともなに?あのゲームは、そこまで調べて対処するのが正解だったのか?

 

 しかもサーシャさんを聖女に任命したけど、サーシャさんである必要は別になかった。


 聖女を任命するのに必要なのは、信仰心や特殊能力ではなく、女性でカルマ値が一定以上であること、ただそれだけである。


 俺がいつも任命する時は、容姿とかも気にしないし、年齢なども気にしない。

 ……家族構成や伴侶がいるのか、恋人がいるのかも気にしたことがなかった。

 ゲームだから当たり前と言えば当たり前なのだが。


 唯一気にしたことはステータスで、聖女にすることができるリストから、ステータスの能力が一番高い人を任命していた。


 ただそれだけである。


 別に今までの行いを反省するとか、後悔するとか、悔い改めるなんてことはないけど、ゲームだったことが現実になると、こう……罪悪感が半端ないな!


 魔王に都市を襲わせたり、人族とエルフ族の戦争で神の武器引っ提げてエルフ守りながら、人族の軍勢焼き払ったこともあったっけな。


 あの時は確か「汚物は消毒だ~」ってノリノリでやった覚えがある。


 まあ、この世界がまだ俺のやっていたゲーム『アルカディア』かどうかわからないし、俺のやっていたゲームデータかどうかもわからないよね!


 ふと思うんだが、ここがアルカディアで、俺がプレイヤ―=神だとするならば、ゲーム中に使えていた権能であるテレポートやアイテムボックス、鑑定は使えるのだろうか?

 

 使えなければワンちゃん、まだ現実逃避ができる!


 とりあえずやってみるか。


 とはいえ、テレポートは危ない気がする。

 壁の中にテレポートした場合、一体全体どうなるのか考えたくもない。


 というわけで鑑定系の能力である『神の目』を使うことにする。部屋のベッドに座りながら机を見て【神の目発動】と呟いてみる。


 すると、その机の近くにウインドウが開かれ、文字列が確認できる。

 ふむ、視界を遮って周りが見えないという事もなさそうだ。


====================

 簡素な造りの小さな机である。そこら辺にある木材でヨシュアとミネルヴァにより作られた机。作られてから3年ほど経っている。

====================

 

 そうかそうか、ヨシュアとは現在11歳の男の子でそばかすが特徴のある生意気な奴だ。

 昨日飯を作っていたら後ろから蹴ってきたやつだ。あの野郎!

 

 それにしても、ふむ、この机は手作りだったのか~。素材の味を生かした素朴ながら雰囲気のある机だな!


 って、まじかよ!!普通に使えるのかよ!いったいどういう原理だよ……。


 いや、ポジティブに考えよう。


 ここがどこだかわからないより、わかる方が色々対処できるし、なんなら神の権能であるチート能力も健在だとわかったことは僥倖だろう。


 ま、まあ。どこまで反映されているのかは、追々検証するとして。


 それにしても、ここは『アルカディア』なのね……。竜王にしろ魔王にしろ、俺が付けた名前と一致してるし。


 つまり、ここが仮想現実なのか現実なのかは分からないけど、俺のプレーしていた『アルカディア』と何かしらの関係があるという事はわかった。


 ていうか、どういう原理か分からないけど、ゲーム内に生身のまま連れてこられた感じかな?……相変わらず人族は、斜め向こう側の行動を起こしてくる。


 

 こう……何というか、今までのゲーム内の事を振り返っていると、ふつふつと人族に怒りが込み上げてくる。


「だいたいさ、世界樹燃やすとか馬鹿なんじゃないの?見ればわかるじゃん!すげぇ大切でしょうが。何のために神が世界樹の守り手なる役割を任命してると思ってんだよ!おかげで、土地の穢れ浄化能力が下がって、各地で作物が育たない、魔物が増える、邪神の一族が生まれる等、超大混乱に陥って大変だったんだから!人族の馬鹿は、作物が取れなくて満足度ガンガン下げていくしさ、いやお前らの所為だからな!世界樹がそれなりに育つまでのあの期間、どれだけいろんなものが壊れて修理したか……。他にも勝手に魔獣を神だと崇めて、どんどんその魔獣に魔力とか存在力とかあげて、気が付いたら魔獣が邪神の足元レベルまで力を付けちゃって、それの討伐に、どれだけ獣人が被害を被ったか……。いやさ、いいんだよ。勝手に人族だけが滅ぶならそれはそれでいいんだけど、むしろ俺のデータから人族居なくならないかな?と結構な頻度で思ってたし。ネット見ても、人族召喚すると今までのゲームじゃなくなるから、慎重に!って注意喚起されてたしな。まじで他の種族巻き込むなよ!でも人族が滅ぶ前に、他の種族が滅んじゃうから、絶対に対処しないといけないし。ちなみに、人族を自分の世界に召喚してしまったユーザーが、人族を駆逐しようと試みた結果。途中までは調子いいんだけど、なかなかすべての人族を駆逐できず、最終的にすべての種族が敵に回り、邪神に認定され、邪神と竜王に殺されるエンドを迎えたらしい……。どういうことだ。で、今度は何だよ?普通に生きていた日本人の俺を神として呼び出すって……。そいうのは、俺がゲームをしている時にイベントとしてやってくれよ!なんで、リアルの俺呼んでんだよ!斜め上過ぎるだろ!」


 ベッドから勢いよく立ち上がり、両手を握りしめながら天高く拳を突き上げる!


「くそっ人間どもが!!!」


 うがー!


 と怒りで発狂して叫んじゃいました。

 テヘペロ。


 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 


 あの後、もちろんミネルヴァさんに「何があったのかわかりませんが、夜なので静かにお願いします」と普通に怒られた。


  

 とりあえず、この世界は『アルカディア』である、ということを前提にして行動していこうと思う。

 一応の目的は、元の世界である地球、その中でも俺の居た現代日本に帰る事であろうか。


 別に待っている家族がいるとか、大切な人が居るとかではないのだが、ここより安全であるというのが重要だ。


 なぜなら状況によっては、この世界は簡単に崩壊してそれに巻き込まれる可能性があるからだ。


 どういう事かというと、ここがゲームの中であった場合だ。

 ゲームということはただのデータであり、そのデータを消す事なんて簡単にできるということだ。


 仮に、アルカディアの自分のデータに捕らわれてたとしよう。


 このゲームのサービスが終了したり、自分の家が火事などにより焼失、泥棒が仮想現実に行くための機材を盗んで、売るために初期化したりした場合。


 今いるこの世界はどうなる?

 普通に考えると消滅してしまうだろう。


 考えたくはないが、そうなった場合、それに巻き込まれる可能性はかなり高い。


 そしてその可能性は、割と高い気もする。

 神の権能がどこまで使えるかわからないけど、使える時点で、ゲーム的なシステムを引き継いでいるという事ではないのだろうか?


 まあただ、可能性だけで言うならば、神崎徹という存在は、今までと同じように普通に生きていて、俺という自我がただのデータあり、仮想現実に保存されている存在とかの可能性もあるんだが……。


 後は、仮想現実内のゲームだったアルカディアが、何かを切っ掛けに世界として確立したとか……。


 うん、考え出すとキリがないな!


 ま、どれにしたってやることは変わらないから、新しい情報を手に入れるまでは考えてもしょうがないか。


 ただ俺のカンでは、ここは実際の世界として”在る”と告げている。


 

 後、これからの行動で大切なのがサーシャさん事であろう。


 知らなかったとはいえ、聖女に任命したの俺だろうし、大司教に「貴方が神ですか?」と聞かれた時も「イエス!」って答えられていたら、サーシャさんの状況は変わっていただろうし。


 今のところ命の危険は高くないとはいえ、刑に処される可能性もある。

 もし、テレポート……空間転移が使えるなら、最悪それで助ける事にしよう。


 それにしても、ゲームの世界にリアルの人間を召喚するとか、サーシャさんと俺の縁はそんなに強かったのかな?


 ま、とりあえず明日からは、俺の権能の検証だー!




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 朝、ベッドで微睡んでいると、バタバタと足音が向かってきた。

 そしてバタンと勢いよくドアが開かれた。


「神崎さん!大変ですサーシャが!」


 はい。知っていました。人族はそういうやつらだって。


唐突なフレーバーテキスト。

補足すると、ゲームをするときにアイテムや人物に書かれている、ちょっとした設定の事。



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