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第2話 ゴージャス大司教現る!

 

「ぐっ……」


 うつ伏せになっていた体を、うめき声をあげながら起こそうとする。

 しかし、腕がしびれて力が入らないうえ、頭がくらくらし視界もぼやけていてなかなか起き上がれない。

 それでもなんとか片膝立ちになり、手を額に当てながら今の状況を考える。


「何がどうなってんだ……?」


 混乱する頭で考えても何も浮かばない。何故?何が?ここは?どうなっている?そんな疑問だけが湧いて出てくる。


 頭を振り、とりあえずここがどこなのかを確認するため、周りに目を向けようとした時、何かがいる気配を感じそちらを目を移す。するとそこには怪しげな黒いローブを着て手には長い杖を持った人が居た。


 混乱に拍車がかかり頭が考えるのやめたのが分かる。


 とはいえ、そのまま呆けているわけにもいかず、謎のローブの人物から視線を切り、周囲を確認する。

 自分が居るここは、ダンスホールや大広間の様な大きさの、石造りの部屋であることがわかった。蝋燭?ランタン?のような電気的な照明ではない明かりが、このほの暗い室内をユラユラと照らしていた。


 そして特徴的なのが、床に半径5メートルほどのいわゆる魔方陣的なものが描かれている事であろうか……もっと言うならば、何故、魔法陣の真ん中に自分が居るのであろうか。


 そして魔方陣の外側には、先程見たローブを着た人物と同じような格好の人が、ぐるっと等間隔で6人囲んでいた。そして俺の正面には、自分が乗っているものとは違う小さな魔方陣があり、その中で、肩で息をしている白いローブを着た金髪の女性がいた。


「……はい?」


 周囲を確認した結果、やっぱり何がどうなっているのかわからず数秒から数分放心していた。


 すると右手の方からギイという音とともに扉が開かれ、この部屋の人たちより数段ゴージャスなローブを着た、40歳ほどの外人男性がその扉から現れた。

 そのゴーシャスな男性は中肉中背の目つきが鋭い人で、後ろに部下らしき外人男性を2人伴っていた。

 ゴージャスな人物は、部屋の中を見渡した後、俺のほうに目を向けそのままカツカツと静寂の中、こちらに向かって来た。


 そして近づくなり片膝をつき頭を下げながら、


「貴方様が神ですか?」


 と、渋い声で話しかけてきた。

 

「は?」


 ……さすがに言っている意味が分からな過ぎて、素で「は?」と言ってしまったのはしょうがないと思う。しかしそれに意を介さずゴージャスさんは畳みかける様に、

 

「貴方様がこの世界をお創りになった、創造神ウラヌス様であらせられるのでは?」


 と聞いてきた。


「えっと……?」


 そりゃあ俺の返答もこうなるのは仕方ない。ただでさえ混乱しているのに、「あなたは神ですか?」なんて聞かれたら、口を半開きにしながらこんな対応になるであろう。


 数秒の沈黙の後、そんな俺の対応が良くなかったのか、ゴージャスさんは立ち上がり、


「ふむ……聖女サーシャ。これはどういうことだね?」


 と、肩で息をしていた白いローブの金髪の女性に話しかけに行った。


 ふむ……にしてもあの金髪さんはサーシャさんっていうのか。遠目から見ても凄い美人さんだな。背が高くスラっとしていて、the北欧美人という感じだ。まあ北欧人かどうかは知らんけども。


 そんなことを考えている間、ゴージャスさんの部下らしき2人は、トゲトゲ鉄球が刺さった鉄の棒、もといメイスをこちらに向け油断なく構えていた。


 ちょっとまて!俺が何をしたよ!


 そんな何とも言えない空気感の中、やっと話が終わったのかゴージャスさんと金髪女性のサーシャさんがこちらに向かってくる。


「とりあえず聖女サーシャとクランは、彼に鑑定を行いなさい」


「はいわかりました。大司教様」


「了解しました」


 と、サーシャさんと部下の一人、クランさんといったかな?は、こちらに体を向け手をかざし、


「「その者の能力を写し出せ。鑑定!」」


 と言った。


 ほ~ん鑑定ねぇ。何俺、異世界にでも転移されちゃったの?……ったくバカバカしい、今どきそんなドッキリある?


 そういえば思い出してきたけど、たしか俺って仮想現実にダイブしようとしてなかったっけ?なんか変なゲームでも勝手にスタートしたのかな?それとも何らかの事故だか事件だかに巻き込まれたかのかな?


 でもまあこの感じは、俺の知らないゲームをやらされているみたいだな。そのゲームのチュートリアルでもやらされてるのかな?


「大司教様。こちらが鑑定の結果でございます」


「大司教様こちらを」


 と、いろいろ考えているうちに鑑定が終わったらしい。2人はいつの間に書いたのかわからないがその鑑定結果の紙をゴージャス大司教に渡していた。

 

「……ふむ。2人の鑑定結果は同じか。神崎徹殿、この鑑定結果に相違ないだろうか?」


 大司教がそう言いながら、こちらにその鑑定結果の紙を渡してくる。


 その紙には日本語でこう書かれていた。

====================

名前  神崎徹

種族  人族

役割  なし

職種  商人

位階  10

筋力  100

体力  100

精神  100

知力  100

魔力  100

器用  100

幸運  100


特技 剣術2 交渉3 算術5 言語5


特記事項 特になし


====================

 

 ……うん、なんていうのかな?よくあるゲームのステータスだ。あえて言うなら、日本語表記なのがめずらしい事ぐらいかな?STRとかHPとかMPとかではないらしい。にしてもこれが合っているのかどうかは正直わからない。そもそも筋力100が高いのか低いのかすら分からんし。


 俺は曖昧な顔で、ゴージャス大司教の方を見ると、


「そのステータスは、数値的にいわゆる平均的な一般人のステータスですね」


 一般人かい!

 うーん。ゲームならそこは冒険者とか勇者とかさ、なんかあるじゃん?どういう事だよ!

 ……あれかな?一般人が異世界に跳ばされました的なゲームなのかな?んで、リアリティを追求したところ、最初は一般人スタートとであると。

 

「多分合っているのではないでしょうか?」


 であるならば、多分この答えが正解であろう。


「なるほど……この世界の一般人の平均レベルが10前後で、そのステータスで間違いないということは、何か商売でもやられておいでですかな?」


「商売ですか?」


 鑑定結果の紙を見ると、交渉3となっているな。この辺は、俺のリアル情報でも参考にしてるのかな?ならまあ、


「はい。商売というか食品関係の会社で営業をやらせていただいておりますけど」


「そうですか。それは残念です」


 と、ゴージャス大司教の雰囲気が変わる。


「は?」


「クラン、ルスト。この者を牢屋に連れて行きなさい」


「「はっ!」」


 急激な話の流れで意味が分からない。

 俺の予想では、今からここに召喚された説明(魔王を倒せ的な?)があって、お願いパターンでのストーリー展開だと思っていたのに、いきなり牢屋にぶち込まれるの!?


 命令された部下2人がこちらに来て、手を後ろに持っていき縄で縛ろうとする。


 ちょっと待て!話が急激すぎやしませんかね?!おい!ていうかゴージャス大司教まじふざけんなっ!


「ちょ、ちょっと待ってください!牢屋って何ですか?そもそもここに連れてきたのはあなた達ですよね!?ていうかここどこですか!?」


「ふむ、そうですね説明しないのも神の御心に背くことになりますか……な。まあいいでしょう」


 と、大司教はコホンと咳払いをひとつして話し始めた。

 良かった説明がある!


「ここは人族の中で最も信仰の大きいウラヌス教の総本山がある都市ロムルス。そして、ここはウラヌス教会総本山の奥にある神と交信する神殿の中ですな。我々は悲願である主神ウラヌスの現界を行うため、何年も前から地脈の力や星々の力、また魔力などを集め準備をしてきました」


 こちらを見る目が怒りというか侮蔑というか、まあよくない目線で射抜かれてしまった。


 そんな目で睨まれても俺の所為じゃないし!


「まあというわけで、今日先程その大魔術の儀式を執り行ったところ、何故かただの一般人らしき者が紛れ込んでしまった。というわけです」


「それはまあ、なんかすいません。でも自分が牢屋に入れられるのはなんか違いませんか?」


「いえいえ、この場所は神を呼ぶために造られた場であり、その大魔術も行われました。つまりここに貴方が居るということは神の名を騙ったのと同じなのです。もちろん神の名を騙ったのですからそれなりの罰を・・。まあ他の宗教の方が、何らかの方法を使い我々の邪魔をしにきた可能性もあるので、それの調査のためにも、貴方を捕縛しなければならないのです」


「いやいやちょっと待って!まじ意味わからん!えっ、これゲームだよね?こういうストーリーだよね?ドッキリとか、ガチの異世界転移じゃないよね!?」


「何を言ってるのか意味が分かりませんが・・クラン、ルスト早く連れて行きなさい」


「「はっ!」」


「てっおーい!」


 俺の叫びを無視して、そのまま両側から腕を持ち引きずっていく2人。まじか!


「何がどうなってんだ?」

 

 ドォォンと重々しく牢屋の扉が閉まる。その中で一人、途方に暮れるのであった。


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