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東方幻人録  作者: ポカ猫
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プロローグ 幻想郷への招待

今回が初投稿となります。これからよろしくお願いします!

「はぁ〜……最近寒くなってきたなぁ〜」


 高校での部活動が終わり、家路につくために自転車に乗った時には既に夜の7時を過ぎていた。


「こんな寒い日は鍋とか食べたいな」


 などという呟きをしつつ自転車を漕ぐ俺は市井義人(いちいよしと)、商業高校に通う至極普通な高校生である。

 パンッ!―――――――――

 何だか嫌な音が聞こえた様な気がするな。


「あちゃ〜、やっぱりパンクしちゃったか……」


 みごとと言わんばかりに自転車のタイヤに穴が開いていた、でもどうやったらこんな大穴が開くんだろうか……。

 何とかしてタイヤの穴を塞げないか試行錯誤していると、いきなり首根っこを引っ張られた。


「うぎゃ!」


 我ながらとても変な声が出たと思う、そしてそのまま俺は気を失ってしまった。

 ――――――――――――――!!

気がつくと畳の部屋で横になっていた、それに見知らぬ天井。

 そして…………。


「やったわ藍!大物が釣れたわよ!」

「そんな事言ってる場合じゃないでしょ紫様!」


 綺麗な女の人2人が言い争っている、てか片方耳生えてんだけどどうなってんの?


「あの〜、お話中悪いのですがここはどこで、あなた方はどちら様ですか?」


 すると耳の付いていない方の綺麗な女の人が振り返り笑顔で近づいてきた


「あら〜起きたのね、ここは幻想郷そして私は八雲紫(やくもゆかり)。それで私の後ろで騒いでるのは(らん)、私の式神よ」


 紫さんの紹介から疑問点がいくつか生まれた。


「ここは日本じゃなさそうなんですが、俺は死んだということですか?」


 俺が死んだとするといつ死んだんだ?自転車のパンクを直している時までしか記憶がない……


「あなたは死んだのではないわよ、世界から忘れられたの」

「忘れられたとはどういうことですか?」


 どういうわけかまだ全然理解できない、忘れられたってどういうことなんだよ……

 すると藍さんが静かに口を開いた。


「ここ幻想郷には世界から忘れられたもののみが来ることができる、つまり君は死ぬよりももっと恐ろしいことになったんだよ」

「そんなわけあるはずないです!だって自分は高校に通ってるんです生徒として学校に登録されているはずです!」


 そうだ、自分は高校生だ。データ社会の日本で忘れられるなんてことあるはずがない、必ず高校の生徒名簿に名前があるはずだ。

 しかしそんな俺の期待を裏切るかのごとく紫さんから非情なき一言が飛んできた。


「言葉が足りなかったわね、あなたはそういうデータ上ではそもそも存在してなかったことになってるの」

「紫様!言い過ぎですよ!」


 存在してなかった?俺は今日部活を終えて、鍋でも食べようとか考えてパンクした自転車を直そうとしてただけなのに、そんなのって………


「死んだほうがマシじゃないか………」

「でもあなたは幸運な方よ」


 えっ?それってどういうことだ?


「死んだらそれっきりだけど、ここ幻想郷で新たに第二の人生を歩むことができる。それってとらえ方次第ではとても素晴らしいことじゃない?」


 紫さんが今までにないほどの明るい笑顔を見せて俺に手を差し出してきた。


「そして、ここにはあなたを忘れるものは誰もいない。出会った人との縁によっては人間とは思えない程長生きすることも、老いることもない体になることだってあるかもしれない」


 藍さんも笑顔とまではいかないが先ほどまでの深刻そうな顔ではなく少し和らいだ顔になり俺に近づいてきてくれた。


「だからそうやって、死んだ方がマシなんて言うのはやめてください。これからあなたを必要としてくれる人ができるかもしれないのですから」


 そして紫さんがやさしくまるで歌でも歌っているのかと思うほどの綺麗な声でこう言った


「幻想郷はすべてを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」


 この世界で俺を必要としてくれる人ができるかもしれない、いやきっとできる!

 そんな自信までもが湧いてくるほど紫さんの言葉は説得力のある一言だった。


「俺、この幻想郷で頑張ってみます!今度こそ誰にも忘れられないように生きてみせます!」


 日本の世界で自分が忘れられたと言われた時は、もう何もかもがどうでもよくなっていた。でも、紫さんの言う第二の人生を歩むことができる、そういわれた時は逆にわくわくしている自分までいた。


「よし、それでは聞きそびれちゃったあなたの名前を教えてくれるかしら?」


 そうだった、ここに来てからいろいろありすぎてつい自分の名前を名乗るのを忘れていた。


「俺の名前は、市井義人です。これからよろしくお願いします!」


 すると紫さんは、何かが書かれた紙を5枚ほど取り出した


「市井義人ね、わかったわ。でもねあなたはここに住むわけではないの、ここにある5枚の紙から1枚選んで頂戴。それがあなたが一番最初に訪れる場所になるから、それからは自由にしてもらって構わないわ」


 最後にそれがあなたの人生なのだからと付け足して5枚の紙を差し出した


「じゃあ、真ん中の紙を頂ます」


 真ん中の紙を開くとそこには………


白玉楼(はくぎょくろう)?」

「あ~、幽々子のところね。じゃあさっそく行きましょう幽々子には私が話をつけるから」


 そういうと紫さんから今度は違う紙を1枚渡された。


「何ですかこれ?」

「そのうち分かるからとっておきなさい」


 すると紫さんに手を引っ張られていきなり現れた大きな穴に連れていかれた。




「ほら、着いたわよ」


 目を開けるとそこにはたくさんの桜が植えられた大きな庭のようなところだった、そしてなんだか少し肌寒いような。


「幽々子~、ちょっと用があるから出てきてくれない?」


 紫さんが声をかけると、大きな屋敷の中から青色の服に包まれた女の人が出てきた。


「なに〜?紫どうしたの?」

「この子をここにおいて上げてくれないかしら?」


 その言葉を聞くやいなや、俺の顔をじっと見つめ始めた。


「新しく幻想入りした子なのよ〜」

「あ、あの!俺市井義人と言います!」


 すると女の人は笑いながら俺の頭を撫で始めた。


「緊張しなくても良いのよ?私はただ可愛いな〜って思って見ていただけだから、それと私の名前は西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)よ、これからよろしくね」


 えっ?これからよろしくねってことは……


「あら、幽々子そんなに簡単に決めちゃうのね〜ほんとに良いの?」


 幽々子さんは俺の頭を撫でながら紫さんの方を向いた。


「大丈夫よ〜、どうせ妖夢と2人だけだったから〜」

「で、その妖夢はどこに行ったの?屋敷にいきなりの男がいたんじゃ妖夢も驚くでしょうに」


 妖夢さんという方もここにはいるのか〜って、ここに2人で住んでるのか!?


「妖夢は今里に買い物に行ってるわ〜、でもきっと大丈夫でしょう」

 すると紫さんはまたあの大穴を開いてから俺に振り返った。


「まぁ、幽々子が良いと言うのなら別に良いんだけどね。じゃあ義人私はこれで帰るわね、これから良い人生を歩みなさい」


 そして最後にまた会いましょ♪と言い残し消えてしまった。


「それじゃあ義人、まずは服を着替えましょうか」


 幽々子さんから男性用の浴衣を貰って別室で浴衣に着替えた。


「あら、似合うのね〜。あの黒い服よりよっぽど似合うわ〜」

「ありがとうございます」


 何だか褒められるのは慣れてないから照れくさいな……


「紫から、幻想郷について教えてあげてくれって言われたしまず能力の事でも話そうかしら」

「能力……ですか?」


 空でも飛べるのだろうか?


「ここ幻想郷に住む人々は全員何らかの能力を持っているの、言い方は可愛らしく”〜程度の能力”と呼ばれてるわ」


 程度の能力か、俺にも何かしらの能力があると言うことだろう。


「1番分かりやすい能力で言うと”空を飛ぶ程度の能力”というのもあるのよ、あなたは何の能力なのかしらね〜」

「自分でもその能力が何なのかさっぱり分からないんですよ」

 空を飛べる様子もないし俺には違う能力があるのかもしれない。


「まぁ、能力はそのうち見つけていけばいいわ。そして次に大事なのがスペルカードルールね」

「スペルカードルール?」


 何だろうかカードゲームでもするのだろうか……


「スペルカードルールは、幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段なの、人間と妖怪が対等に戦う時や、強い妖怪同士が戦う場合に必要以上に力を出さないようにするための決闘ルールなのよ」


 別名弾幕ごっことも呼ばれているわよと、幽々子さんが付け足した。


「ところで、義人は紫から白紙のスペルカードを貰ったんだって?何枚貰ったの?」


 スペルカードなんて俺貰ったかな?あっ!もしかしてあの紙の事かな?


「この紙の事でしたら、1枚貰いました」


 すると幽々子さんが驚いた様な顔をした。


「1枚!?紫もケチねぇ〜、幻想入りした人間なんだから10枚くらいあげてもいいのに」


 すると幽々子さんはまた俺の頭を撫でてくれた。


「あ、あの幽々子さん……、俺一応の男なので頭を撫でられると恥ずかしいというか……」


 いや、嬉しいことには嬉しいのだがやはり恥ずかしさが勝ってしまう。


「あら〜、そう?恥ずかしいなら仕方ないわね〜」


 と言い名残惜しそうに俺の頭から手を離してくれた。

 すると屋敷の玄関の方から声が聞こえてきた。


「幽々子様〜、ただ今戻りました!」

「あの子が帰ってきたみたいね、あなたを見た時の反応が楽しみね〜」


 だんだんと足音が俺たちの居る部屋に近づいてきた、どんな人なのだろうか楽しみだな〜。

読んでくださり誠にありがとうございます。

次回更新は今週中には上げたいと思っております。

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