突然始まる現実パート~その1~
本編に入るのはまだまだ先です
しばらくの間はささやかな日常パートをお楽しみ下さい。
「ピリリリリリリリッ!!」
どこかで機械的な鐘がなる。
「っ!?」
思わず飛び起きた俺は周囲を確認する。
目に入ってきたのはお気に入りの
バンドグループのポスターに
ラメがかったグリーンのエレキ、
何度も見飽きたいつも通りの自分の部屋だ。
(なんだ……夢か)
起き上がって寝汗で濡れたシャツを脱ぐ。
現れたのは骨と皮しかない腹、
筋肉なんてかけらもない、
おかげでスポーツなんてできやしない、
体力も華奢な女子には勝てるかなってレベルだ。
小さいころはスポーツだってやっていたが、
中学に上がって以来やらなくなってしまった。
以降は文化系の部活の中でも比較的ゆるい部活ばっかだ。
(まあ文化系の俺がムキムキでもおかしいだろ)
自己弁護をしながらシャワールームに向かう。
シャワーを浴びたのち制服に着替え
今は朝食を食べている。
「あれハルにぃ、朝からシャワーとは珍しいじゃん」
そう話しかけるのは良夜 琴音
苗字は同じだが家族ではなく、いとこだ。
だからハルにぃと呼ぶが、本当の兄妹ではない。
(俺からしたら一番の家族だけどな)
ちなみに俺の名前は良夜 遥
体力皆無の高校2年生の天文部員
そして琴音は中学3年生の薙刀部員
「勝てっこないよなぁ……」
「え?なにが?」
(まあ琴音と争うことなんてないだろうけど……
いやフラグじゃなくて……)
「もしもし?聞いてます?」
「あ、悪い悪いぼーっとしてた」
「本当に珍しいね、なんかあった?」
「いや別に「あ!わかった!!」は?」
「お父さんとお母さんに会えなくて寂しいんでしょ?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。なんかすごく腹立つ。
「断じて違う」
ちなみに両親は死んだわけじゃない。
父親が仕事の関係で出張になったのだ。
普通なら単身赴任だろうが、
なんとうちの母親はそれについて行ってしまったのだ。
(とんだバカップル夫婦め・・・)
その変わりと言ってはなんだが、
母親がおいていったのが琴音だ。
たぶん家事や家計が管理できない俺のためなんだろう。
(おかげでずいぶん助かってるけどな)
琴音は基本なんでもできる。
昔一度うちのキッチンに漆黒のあいつが出たことがあった。
(琴音が見たら怖がるだろう)
そう思って格闘すること30分、
いまだ倒せずにいると…
「なにしてるの?」
琴音がやってきた。
(今は入ってきてはだめだ!!)
心の中で叫んだそのとき……
「あ」バコォン
琴音の持っていたティッシュ箱とつぶれたあいつ…
(いま何が起こった……?)
ほんのわずかな一瞬、時間にすると5秒ないぐらいで
琴音はテーブルのティッシュ箱を手に取り……
あいつを仕留めた。
この一件以来、俺は家のことのすべてを放棄した。
ご飯も洗濯もお掃除も、そして虫退治も
すべて高性能琴音がやってくれる。
俺はたまにお皿を洗ったり、トイレ掃除をするぐらいだ。
(いい嫁になるんだろうな)
そんなことを考えながら
今日も相変わらずおいしい朝飯を食べ続けた。
一家に一台、高性能琴音。
※2017/05/25 追加、修正を行いました。