三話
「へぇ~、あなたも文学部なんですか?知らなかったです」
「ま、まぁ目立たないような生活してたから・・・あと敬語じゃなくていいよ?」
「そうなんですか?じゃあお言葉に甘えて・・・そうなの、全然知らなかったわ」
あれから傘に入れてもらい、彼女の家に向かっている。
私の隣を歩いている女の子は、天塚葵さん(あまづかあおい)。
同じ文学部一回生らしいが、性格は私と対照的ですごくはきはきしている。
さっきまで天塚さんが敬語だったのは私が一浪して大学に入ったので年齢的に先輩だったからだ。
「クシュン!」
大きなくしゃみをしてしまった。体が寒さに応えたのかブルッと震える。
「ほら、言ったじゃない。もうすぐ着くからそれまで辛抱してね」
「はい・・・」
これでは天塚さんの方が年上っぽい。大きなため息を心の中でつく。
「今日の講義内容難しかったよね。私ちんぷんかんぷんだった」
「え、そう?面白かったしわかりやすかったと思うけど」
「まじ?」
「うん、まじ」
「もしよかったら教えて~」
「私でよければ・・・・・・ってかお風呂貸してくれるんだしそれぐらいはするよ」
「助かる~」
とりとめもない会話をしながら天塚さん宅へと到着する。
三階建てで白の塗装がされているどこにでもあるようなアパート。
「私、ここの三階なんだけどエレベーターがないことだけが欠点かな」
「あぁ~」
確かにこのご時勢、一軒家でもない限りはアパートにもエレベーターがないほうが珍しいかもしれない。
ちなみに私の住んでいるアパートは五階建てエレベーター着いてます、はい。
「何でもここの大家さんが言うには『若いんだから三階ぐらいは足で登れ!』ってことらしいの」
「あ、あはは」
なんてパワフルな大家さんなんだろう。愛想笑いしか出てこない。
だがいつの間にか三階に到着し、天塚さんは自分のリュックから鍵を取り出そうとしている。
「あったあった。どうぞ、入って入って」
「お邪魔しま~す」
促されるまま天塚さんの部屋に入る。
部屋に入ると小さな玄関とすぐ右側には洗濯機と風呂場。天塚さんはお風呂に入ってしまった。
まっすぐ行くと左手にはキッチン、冷蔵庫などの料理に必要なものが並んでいるが・・・そのすべてが昨日新調したかのようなきれいさだ。少し眺めていると・・・・・・。
「お風呂沸かせてないけどとりあえず入って。体冷えきっちゃうし」
「あ、うん」
「バスタオルと着替えは用意しとくから」
「何から何までごめん」
「ううん、気にしないで」
とりあえず今はあたたかいシャワーが恋しかった。
すぐに着ている服を脱ぎ、風呂場に入る。すぐさまシャワーレバーをひねり浴びるが・・・。
「つめたっ!」
・・・・・・私は馬鹿だろうか。すぐに温かいのが出て来はしない。
ただでさえ、体が冷えているというのに冷たいシャワーまで浴びてしまって体が小刻みに震え始めたところで、シャワーから湯気が出始めた。
「や、やった・・・」
シャワーノズルを手に取り、持ってないほうの手で確認する。
「あったかい・・・」
今度こそ体を温め、癒すために全身でお湯を受け止める。
勉強以外に天塚さんに恩返しできたらいいのだけれど。
そんなことを考えながら体を洗い始めるのだった
萌がないですね。いつも一旦書き終えて読むのですが激しくそう思います。
感想、レビューを何とぞよろしくお願いします。