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プロローグ
どうしてこの世界は存在するのだろう?
なぜ人々は子を生み、育て、やがて死んでいくのだろう?私にはわからない。
たったそんなことだけのために何十年も生きなければならない理由が。
周りの能天気な同年代たちは日々が楽しそうだ。悩みなどなさそうだ。
そんな彼ら彼女らがうらやましいとは思ったことはない。
所詮私はあの人たちから見ればただの日陰にしか過ぎない。
こんな無意味な私に一瞥もしなければ気付きもしない。
私はいつも一人で帰路につく。
特に寂しいと思ったことはない。
私にはこの世界がモノクロに見える。
幸福、恐怖、憧憬、苦しみ、妬み・・・・・・それらのすべてが
失われてしまった。
彼が死んでしまったあの日から・・・・・・。