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暗夜行路



「ねえ、紫」


振り落ちる桃色の雨を眺めながら、彼女はまるで囁くように言った。

ゆるやかに笑んだその顔が薄い日の光に照らされて、血の気のない白い肌をますます色のないものに見せている。


――まるで、散り際の花のように


「なあに」


にこりと薄く微笑み返して、背中に這い登る違和感を振り払う。

盛りの季節は過ぎたというのに、私がそう意識しなければならないほどの力が、それ(・・)には芽生え始めている。


「私ね。この子はきっと悪くないのだと思うの」


細く痩せこけた手が伸ばされる。

その先にあるものに向けて


「この子は・・・・・・ただ、普通に生きていただけ」


ひらひらと舞い落ちる桃色の花片。

その一枚を掴み取りながら、彼女は言った。


「決して呪われてなんていない。必死で生きて・・・・・・美しく咲いただけ」


宙へ手放された花びらは、一時吹き抜けた風にのって、空遠く舞い上がっていく。

まるで、溶けていくかのように姿を消していくそれは、美しく――どこか儚げだ。


「最後の最後まで、それは変わらない」


歪んでしまったいうのなら、それはきっと――



________________________________________




天から降り注ぐ数え切れない水滴の群れ。

灰色だった雲はいよいよ濃度をまして、黒くその姿を染め上げる。

時折、ごろごろと唸るような声を上げるのは、天の神が怒りの声を発しているのか。それとも、ただ腹を空かしているだけなのか。

どちらにしても、癇癪をおこしているのには違いない。


「さて、ここまでは大丈夫、か」


辺りの気配を探りながら、目の前の緑を両手でかきわけるようにして道を開く。ちりちりと肌の露出した部分に触れる草々が、くすぐったくてうっとうしい。


――にしても、きついもんだ。


塩辛い汗交じりの雨水が頬を流れ落ちていく。

それでも、休まずに進み続ける。


正道どころか裏道ですらないこの逃走路は、進みづらいことこの上ない。悪天候であるならなおさらのこと。湿った着物がさらなる負担を身体に強いて、残りの体力をじわじわと削り取っていく。


――まあ、でも


この雨のお蔭で助かったということは確かなのだ。

あの時、この雨が降らなければ、こんな風に逃げ出せていなかった。

少なくとも、それだけは感謝しなければならない


――残りの札は十枚程度、か。


袖に仕込んだ分と荷袋の中にしまってある分――この前に作っておいた分はそれだけで、心もとないことは確かだ。

あの場に残してきた身代わりは、そろそろ一掃されているところだろう。

いや、もうとっくの昔に吹き飛ばされていたかもしれない。


「――運が悪いのかどうなのか」


それが問題である。


上手く時間を稼げているのか。

上手く引っ掛ってくれているのか。


――どれを引いたのか。


どちらにしても、脚は動かし続けなければならない。

あんな規格外の妖怪を正面から相手するなど真っ平御免である。


――さてさて、どうなることやら。


もはや、お決まりとなった思考に僅かに笑いを漏らし、視界を塞ぐ雨水を拭う。

ぬかるんだ地面は、ひどく歩き辛い。



________________________________________




「――うっとうしい」


額に張りついた前髪を払う。

水を吸った髪は、すぐに目に入りそうになって面倒だ。

同じく多量に水を吸った衣服もぴたりと肌に張りついて、身体を重く制限する。


――本当にうっとうしい。


すっかりの濡れ鼠。

一張羅が台無しだ。


「ああもう」


それもこれもあの人間の――あの胡散臭い男のせい。

あの男さえ手早く食べられていてくれれば、こんなことにはならなかった。


込み上げる怒りに、思わず手の中のそれ(・・)を握り締めた。

それはくしゃりと小さく潰れ、元あった形を失くして破れてしまいそうになる。


――ああ、いけない。


これは手がかりなのだ。

あの男を捕まえるためにも大切に扱わないと――


折角の材料を自らの手で壊してしまう。

それでは意味がない。


雨で大分薄まりながらも、微かに香る人間の香りが染み付いている。

多分、血と何かを混ぜて作ったのだろう。

意味はわからないが、複雑な文字が描かれているもの。


人型に切り取られた白い紙。


――こんなもので・・・



― ― ―



――これは・・・


落ちた雫が地面を染めて、それが斑点となり、徐々に範囲を広げていく。

空気に満ちた水の気配は、とうとう水そのものとなって辺り一面を埋めていく。


天から落ちているのは無数の水の塊――つまり、雨だ。


――とうとう降ってきた。


感想はそれだけだった。


ずっと空は雲で覆われていたし、徐々に雨の気配が濃くなっているのを感じていた。

そもそも、太陽が雲に隠れきっていたからこそ、私はここまで来たのだ。いつもなら、余程お腹が空いた時でないと夜以外に出歩こうとは思わない。

辺りが暗かったから、散歩をしようと思った。


だから、雨が降ってきたのは予想通り。

特別思うこともない。


けれど、多分ずっと待っていたのだ。

この偶然に見つけた獲物は、その時を待っていた。


だから、その瞬間(・・・・)にはもう、動き出していた。



「――雨巡り、火炎と結べ」


聞こえるか聞こえないか程度の小さな呟きと共に、投げられた何枚かの札が、男の手によって、まるで弓で射られでもしたかのような速度で打ち飛ばされる。

空気の抵抗を感じさせないそれは、真っ直ぐとこちらへと向かい――


「・・・へえ」


多分、雨を利用しているのだろう。

そのいくつかが、鈍い光りを放ちながら、辺りの水滴を絡めとり、力を増していくのがわかる。


――さっきまでの私のと、同じくらいか。


人間がよく扱う、環境を利用した術というものなのかもしれない

力を増強させた札が、空気を切り裂きながらこちらへと飛んでくる。


――でも、その程度で・・・


それに応戦するようにして、無数の妖力の塊を辺りへ生み出し、相手へと打ち放った。

その数は、男が飛ばした札の倍以上の数――込められた力も数倍のもの。

ほんの少しました程度の攻撃では、覆せるような差ではない。相手の攻撃すら呑みこんで、男に襲い掛かることになる。


物量差で、質量差で――持って生まれた差の違いだ。

いくら人間が力を得ようとも、同じ以上に力を得た妖怪に敵うはずがない。


黒の光球は、札を消し飛ばし、そのままの速度で男へと襲い掛かる――


「さて」


――はずだった。


「火と水が打ち消しあって――混ざり合って何となる?」


呟く様に男がいった――その瞬間に目の前が白く覆われる。


「――?」


まるで爆発するかのように発生した白い塊。

自分と相手の間に突然現れたそれは急激にその範囲を広げ、あたり一面を埋め尽くす。


――煙?・・・・・・いや違う。


まるで呑みこまれるように、それに触れると、僅かに肌が湿るのがわかった。


それは、水蒸気――つまり、霧や靄のようなもの。


――さっきの札はそのための・・・?


降り注ぐ雨の中、突然現れた水の煙幕。

空気に溶けきれない膨張した水分が、粒となって辺りを漂って・・・・・・視界のほとんどを奪い取っていく。


「――こんなもの」


それに紛れるようにして飛び掛ってくる気配。

視界が奪われて、混乱している私の不意を討つつもりなのだろう。

今まで感じた以上に素早い動きに、一瞬の焦りが生まれるが――本気でなかったのはこちらも同じこと。


一瞬で頭を冷やしきり、それ《・・》に向かって真っ直ぐに手を伸ばした。


ひゅん――っと風切り音。


指先を伸ばし、そのまま真っ直ぐと腕を突き出しただけの、贅力にものをいわせただけのただの突き。それでも、たかが人間の身体は容易く突き破る。


――もう少し遊びたかったけれど・・・


狩られる側の獲物が狩人に牙を向いたのだ。

仕方のないことだろう。


白い靄の中から飛び出しだそうとする影の中心。

その真ん中を私の腕が貫いた。


――が


「何・・・?」


感触がない。


その人型の真ん中を確かに私の腕は貫いた。

それは、予想通りに向こう側へと突き抜けたが――それにしては、あまりにも抵抗がなさすぎる。


「おやおや、何をしているんですか」

「な・・・!?」


右手側からの声。

振り向いた瞬間には眼前にまで迫っていた靄の中の影に対して、右腕を薙ぐことで応える。

しかし、返ってきたのは――


「また・・・」


ただ、靄をかき回しただけの空を切る感触。

振り払われたはずの影はまるで溶け込むように消えうせて、感じていた気配も掻き消える。


「これは・・・」


――にせもの・・・?


再び表れる気配と、靄の中にうっすらと写る影。

よく見ると、周りには無数の影が写り、辺りを囲んでいる。


「あんまり長くは保たないんですが――さてさて」

どれが本物でしょう。


おどけるような調子の声が響き、その影の一つがこちらへと飛び掛ってきた。

それを片腕で振り払い、切り裂くが――それもまた、粉微塵になって散り失せる。


――幻術。


昔に何度かだけ味わったことがある。

術者が作り出した幻――何かの形に象った幻で相手を惑わせる術だ。

術師が自分の偽物を作り出し、それを囮に使って、私を誘き出し、退治しようとしていたのを覚えている・・・・・・獲物の数が減ったのを見てがっかりした。


これは多分、その時ほど上等なものではない。あるのは影と気配だけだし、完全な人型を作り出しているわけではない。霧はその細かい部分を隠すための手段であり、また、そういう術の媒介にもなっているのかもしれない。


つまり、霧が晴れれば、消えうせてしまうような脆弱なもの。


「――で、どうするの?」


種が割れてしまえば、どうということもない。

ただの幻で、ただの影なのだから――


再びその内の二体が左右同時に飛び掛ってきたのを両腕で吹き飛ばす。


――全てなぎ払えばいい。


周りに漂う霧も少しずつ薄まっている。

時間が過ぎれば、その仕掛けは露出してしまうはずだ。


「・・・・・・」


ほんの数秒。

沈黙の時が流れる。


こちらの様子を伺っているのか。影はその場に留まるのみで、動く様子を見せない。不意をつこうとしても、通じるわけがないことに気づいたのかもしれない。

ただ、散漫に時間を待って、生きる時間を引き延ばすだけ。

この霧が晴れる(・・・)までは――自分の命を守れると思っている。


「何もしないの?」


挑発するように言い放った言葉。

何の反応も見せない相手。


――それでは面白くない。


こうやって少しずつ追い詰めていくのもいいが、私はもっと能動的に動きたい。

逃げる獲物を、自らの力によって追い詰めて、怯えさせて――狩りを楽しみたいのだ。


なにより、相手の思惑の中にいる今の状況が――


「――なら、こっちの番ね」


――気に食わない。


洗練された技術に、工夫を重ね、時間をかけ、それを成し遂げた。

そんな、男がやっとのことで作り出した状況。


努力の結晶のようなそんな領域に――私はそれを振り下ろした。




―――


・・・・・・あの瞬間。


私は確かに吹き飛ばした。


その水蒸気ごと、姿を隠す仕切りごと、あの影達を吹き飛ばした。

それが振り落とされた地面は、辺りにあったものごと全て消し飛んで――そこには何もなくなった。


そう・・・・・・そこには何もなかった。



――みしりっ


そんな音を立てて、支えにしていた木が揺れた。

どうやら、当てていた手に思わず力を込めてしまったらしい。


千切りとってしまったその残骸を放り捨てる。


――本当に・・・ご丁寧に。


そこで激昂した私は、すぐさまその気配を追いかけた。

騙されたという屈辱感にはらわたを煮えたぎらせながら、それを追ったのだ。


そして、そこにあったのは――より高密度に造られたさらなる分身体。

気配と僅かな霊力を放つ、霊符を媒介とした身代わり人形。


それが浮かんでいるだけだった。


「・・・・・・」


真っ白になった視界には、何も見えなくなった。

そして、それを通り越して(・・・・・)、私は冷静になった。


ただ――


「捕まえてあげないと」


そんなことを考えて


くしゃくしゃになってしまったそれを丁寧に握りなおしながら――その感情(おもい)を呑みこんだ。

これを吐き出すのは、それを目の前にしてからだ、そう決めて――



「――行って」


真っ暗な形を空に放った。


――必ず見つけるの。


ぽっかりと森の中に空いた広場で、その知らせを待つ。



________________________________________



「――ふう・・・」


こんなものだろう。

これで、出来るだけのことはした。


森の中に存在する小高い丘の上の、さらに一際高い一本の木の枝の上で、景色を見下ろすようにしてそれを待つ。

弱冠小降りにはなったが、雨は依然治まらず、雲は晴れないままで・・・・・・多分、少しの小休止程度だろう。台風の目のようなもの、きっとさらなる暴風が、この辺りを襲うことになる。


――しかも、二つ以上・・・か。



握り締めたのは、先ほど自分が使ったはずの札。

人形として媒介としたはずの霊力を込めた幻身の符。

その切れ端。


――力を伝えるためとはいえ、血を使ったのがまずかったかね。


よりらしく(・・・)錯覚させるための一工夫。それが仇となったのかもしれない。

妖怪というものは、人間の臭いに敏感で、それ以上に血の臭いに敏感だ。

その本能に従って、真っ直ぐにこちらへと向かう。


「雨だから、大丈夫だとおもったんですがね」

まさかそんな方法でくるとは・・・


そんなことを呟きながら、辺りに集まりだした黒い塊を見下ろした。

先程より数が増えたそれは、こちらを監視するかのように周りを囲んでいて・・・・・・今から何処へ逃げたとしても追いついてくるだろう。

一度見つかってしまえば、終わりなのだ。


「ねえ、鳥さん」

返事のないそれに小さく呟き、嘆息を漏らした、


何の鳴き声もなく。瞳も継ぎ目もない、ただ形だけをなぞったもの。

まるで、闇をかためたかのような暗い色彩の――鳥の形。

ただ、その主に従うだけの方向性とその身の内に仕込まれたもの。

それを追うためだけの存在。


そして、その報告は、その主へと届けられることとなる。


――上手い力の使い方だ。


自分の能力を把握し、それに合った力の使い方を創りだす。

それは鍛錬によってつくられた努力の結晶なのか、はたまた、本能に従って生み出した天性の力のなのか。もしかしたら、生まれたときには既に知っていた天然のものなのかもしれない。

往々にして、妖怪というものには後者二つのものの方が多いが。



「どっちだろう、ね」


今までの相手の動きを思い起こしながら、それを考える。

何の意味もなく、ただの時間つぶし程度ではあるが、そこから何かを考えるのが人間である。


圧倒的な力に対してどう対応するのか。

工夫に工夫を重ね、新たな段階へと繋げていく。

それが、発展であり、進化であり――人間のもった特性だ。


生きるために、自分と周りのものを最大限に活用する。

出来るだけのことを、出来るだけするのだ。

それが、生き残るための方法。


「――といっても」


世界が揺れたかのように感じた。


森の一部が歪んでいるように見えて、まるで陽炎のように揺らめいている。

きっと、抑えきれない力が空気を震わせているのだ。


背中に流れる冷や汗は、露出した肩に当たる雨水と混ざりながら衣服を濡らす。

手首に巻きつけた布とそれに挟んだ残りの札を確認し、雨水と汗が視界を塞ぐことのないように、額にもしっかりと手ぬぐいを巻きつける。


最後に、思い切り息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。


「最後は運次第。風にまかせるしかないと」

この場合は雲行きにまかせるしかない、かね。


そんなことを呟きながら、すっと脚を踏み出して、目の前の浮遊感に身を任せた。


神のご利益があるのか。

自己の不運に呑まれてしまうのか。


一人ごちて、その前に立つ。

一対の黒翼のひろげる美しい闇の化身の――その前へと




________________________________________



ごろごろとした音を鳴らし、降り止まない雨。

濡れた植物が埋め尽くす地面の上。


ふわりと、まるで重さを感じさせない感覚で、男は降り立った。


「おやおや、また会うとは偶然ですね」


そんな調子で嘯いて、おっくうそうに肩を回す。

軽く身体の調子を確認しているだけというような、今から作業を始める農夫のような様子だ。


「ええ、落し物を返そうと思って」


重荷を感じさせない相手に応じるように、こちらも軽い調子でそう答えた。

持ち上げた片腕に舞い降りたその黒の塊を撫で、薄く微笑んで見せる。


「そりゃあ、ご苦労様で――お礼にお茶でもどうですか」


変わらぬ様子で微笑み、布を巻いた手首に手を当てる男。

額に巻かれた布きれにより、先程よりも、その細く引き絞られた目が鋭くこちらを見据えているのが解る。


「いえ、遠慮しておくわ。それより――お腹が空いたな」


口の両端を持ち上げて、にっこりと微笑む。


――そう、限界だ。


これ以上は待てない。

身体が熱くなって、意識が焦げついて――コワレソウニナル。


「――早く」


抑えていた激情が溢れ出す。

これ以上我慢できないと身体が震えだす。


「ハヤクタベサセテ」


止まらない。

止める必要もない。


ただ、身を任せる。

妖怪としての本能に。


「――さてさて」


私の感情に影響されたのか。

空を飛び回る中の一匹が、我慢ができないというように男に向かった。

鋭く尖る嘴をもって、その肉を食いちぎろうと迫るそれは――


「なら、届けてもらった分はご馳走しますか」


――こともなげに掴み取られて、霧散した。


残ったのは、小さな紙片。

追跡に利用した、男のものだったもの。


それを受け取って(・・・・・)、男は構えをとった。

ゆらりと、まるで力を込めない姿で、その手を揺らす。


「ご満足いただけたら、お引取り願いますよ」

「ええ、満足したら、ね」


変わらぬ調子に男は微笑んで、

こちらも心地いい開放感に身をゆだねて


「始めましょう」


晩餐会の幕が上がる。




________________________________________




静かに寝息を立てて、肩に寄りかかる少しの重さ。

確かな温かさと――そうは思えないほどの軽さに、そう遠くない未来の光景が思い浮かんだ。


「――大丈夫、よね」


それを実現させないために、私は力を尽くしているのだ。

間に合わなければ・・・・・・間に合わせなければならない。


――もう、私は知ってしまったのだから


一陣の風が吹きぬけて、辺りに散った花びらが舞い飛んだ。

薄い芳香を纏ったそれは、遠くの――季節違いの木々の間へと降り注いでいく。


「――また、探しにいかないと」


このまどろみのような一時が・・・せめて、最後まで続いてくれるように。

ほんの僅かな胡蝶の夢が、途中で覚めてしまうことのないように。


――もう少しだけ・・・この時間を過ごしたら


降り落ちる花片と、まるでその色を映してしまったかのように染まる薄紅色の髪。

それを片手で撫でながら、隣に立つ満開の老木を見上げた。



枯れない桜は、美しく咲き誇ったまま



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