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真夏の夜の夢

この話は、9歳の奥さんができるまでの話です。

  暑い……。

 寝苦しい夜、ふと目を開く。ああ、夢か。あれは、確か初めてこいつとであったときで。


気づくと、すーっと優しい音をたてて寝ている物体が隣に。

  ……ふとんから体、はみでてるぞ。


  少女はまだ幼い曲線にキメの細かい肌を息を吸って吐くリズムでゆらす。なんというか、なまめかしい。目の毒だ。しかもこれ、ネグリジェじゃないか。薄いシルクの布から白い下着が透けてみえるのが、恥ずかしくてどうも顔が真っ赤になる。

 「はあ」 

 少女にふとんをかぶせながら、改めて、考えてみる。まあ、運命なのかねえ。本当はお姉さんタイプが超好みなんですけど!


 *************************************



 あくる日の朝。


 「なにニヤニヤしてんの?」

 ……いやしてないって


 「ふーん。女か?」


 ぶるぶると首を振る。違う違う。

 ……いや、そうなんだけどね。


 そう、今日の夕方、オフ会であう予定なんだ。しかも一対一、ワンオンワン、サシオフってやつだ。口元が緩まないわけがない。特に目の間にいる奴と比べると、大人の女だしな。憧れるなーと、ポリいゴンで描かれた大人の体の曲線を思い描く。イヤーだってさ、いきなりサシオフだし、実際の外見がアバターとそんなに違うってことはないよな。よな。

 ニヤケたところを見せないぞ!と口をきゅっと結んでいるのだが、どうもピクピク頬が動いているようだ。


 「ぶっ!哈哈哈哈!!(アハハハ) なんだよそれ、不動」

 こういうまったなしの元気な声は”りくも”さんだ。

 「口数少ない男を気取ってるのはわかるけどさーバレバレなんだよね」

 そう、こうやって俺はいろいろ心では話しているようだが、実際に口に出すことはあんまりない。例外はオンラインゲームくらいだ。まあ、寡黙な男だ。ムッツリと呼ばれてはいるが・・・。

 目の前にいる”りくも”さんは、本校トウキョウ1年1組のエリートさん。俺が行ってる聖ヘルメス学園って学校は、1組から20組まであるんだけど、それって成績順なんだよね。で、俺は2年17組……。

 ということは”りくも”さんにしてみれば、俺は劣等生で、1年年上ということになる。が、目の前の憎たらしい奴はそういうことを全く気にしない。

 おだんごにまとめあげた黒髪、白い肌に、チャイナドレスとショートパンツからすんなり伸びた手足が眩しい少女だ。見かけは抜群なんだが、まあ、俺にしてみれば若すぎる。うるさすぎる。もっとこう、年上で、落ち着いたのがいいんだ。


 「……ボク、知ってるよ」くいっとメガネの真ん中を押して、牛乳瓶の底のようなメガネをかけた人間がしゃべった。ボサボサの髪、だぶっとしたネルシャツにジーンズ、ザ・オタクナードという外見のやつ、ゲイツだ。

 「知ってるって、何が」

 さすがに俺も喋らざるを得ない。なんだ、こいつ、何を知っているというんだ。

 「ボクは管理者だからね。ログをたどれば誰が何を話していたかなど」

 おれは慌ててゲイツの口をふさいだ。

 「おい、だめだ、わかった。俺の負けだ。だから、だまれ。だいたい、そういうの、ゲームの製作者としてタブーじゃないのか?」

 ゲイツは悪びれた風もなく。

 「そういう意見もあるだろうけど、ボクの場合、別に他人が作ったソフトだってログ見放題だしね。だからあんまり関係ないんだ、そういうの」

 「あー分かった、何?何がいい?またプログラムを手伝うのか?昼飯おごろうか?」

 ゲイツはあははとわらった。

 「いや、まあ喋りはしないさ。知ってるってのは冗談じゃないけど。ただね。たしかにボクのゲームはリアルな外見を元に見栄えの良いアバターを作ることが売りなんだけど、それって、身長とか顔の作りもふくめて20%増しにできるってことでこの差は大きいよ?髪や目の色はそんなにカスタマイズできないんだけどね。それが売りだし」

 「あーもう、夢、壊すなよ。おれは、優しく教えてくれる保健室の先生みたいなのを期待してるんだから」



 2人の会話で事情を察したか、ふーんという顔の”りくも”氏。

 「……なに、またオンラインゲームの話。またそういう事やってるの?

  というか、そういうビジネスって終わるの早いよ。何も残らないし。こう、手にとって触れるものを作りなさいよ。それこそが実業。真のビジネスの道よ」

 ”りくも”さんは結構はやっているラーメン屋「雲々ユンユン飯店ハンテン」のオーナーだ。

 「いやまあ、”りくも”さ」

 「”りくも”じゃないよ。さんか、雲老師ユンラオオシーと呼びなさい」

 「「なんで、老師せんせいなんだよ!!」」

  老師とは中国では先生のこと。目の前の”りくも”さんは李雲リ・ユンさん。中国系の華僑の娘なんだ。この聖ヘルメス学園って、ビジネスの仕方を教える学校だから、中国系は結構多い。

 

 「まあ、たしかにさ。この前作ったオンラインカジノは失敗したけど。今度はオンラインゲームのファンクラブサイトを作ろうとおもってね」そう、これは俺の温めていたアイデアだ。

 「はあ?ファンクラブサイト?」

 「まあ、ただの情報サイトに毛が生えたようなものなんだけど、勝手にオンラインゲームの情報をとってきてクロールして、で、男性・女性別にアバターを表示して、こう、人気投票ができる機能があって」

 「うわ!なんかどうよって感じのビジネスじゃない?」

  ゲって感じのりくもさん。

 「いや、まあ、ボクのサイトも外部に情報をマッシュアップできるようにしてるし、こっちのサイトにユーザを誘引してくれるんなら何やってもいいんだけど」とゲイツ。

 「……まあ、さ、前期の学校じゅぎょうりょう、1000万ジェニーだしな、そろそろ稼ぎ始めないとな」


 *************************************


 2030年、1000万人の失業者があふれる途上国に沈み込んだ日本。事態を重く見た日本政府は、現実の経済社会を学校教育に取り入れた起業アントレプレナー特区を関東に創設した。特区の学校では、授業を受けたという単位の代わりに、仮想バーチャル通貨コイン(ジェニー)がつかわれている。授業を受けるためにも、進級・卒業するためにも、お金がいる。なので、特区の学校では、会社を作って商売をすることが推奨されている。というか、それくらいの大きな稼ぎ方をしないと、中退になる。

たとえば、1ジェニー1円で換算しているんだが、学校税は半年で1000万ジェニー。これを学校に収めないと、進級できなくなるんだ。ハードな学校だろう。


 *************************************


 「せいぜい同級生にならないように頑張ってよね」

 俺はバシンと”りくも”に背中を叩かれる。

 

 じゃ、わたし行くから、と手をあげて”りくも”は背中を見せた。



 ……出来る限りはがんばるさ。と、よかった。話題がそれたな。



 「あ、わたし飛び級するかもしれないから、そしたら後輩になるかな」

 「かんべんしてよ老師さん」




この長編を登録する前に、この作品を間違って短編で登録して削除しちゃいました。すみません。

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