第47話 新均衡
和平発表から七日。
王都は混乱と静寂を行き来していた。
怒る者。
疑う者。
安堵する者。
百年の前提が崩れたのだから当然だ。
だが。
南方戦線は沈静化している。
大規模衝突は起きていない。
三大魔獣も現れていない。
鎖は保たれている。
王は正式に布告した。
「南方侵攻の停止」
軍縮ではない。
停止。
段階的解除。
黒線紋は公に逆らわなかった。
できなかった。
鎖の修復が確認された以上、
戦争継続の理屈が消えた。
だが裏では動いている。
それは感じる。
村へ戻った夜。
中央塔は以前より安定している。
魔力の揺れが減った。
作物の異常成長も落ち着いた。
魔物の引き寄せも減少。
リオネが言う。
「均衡は再構築された」
「でも固定ではない」
鎖は修復されたが、
維持には意思が必要。
王から使者が来る。
正式文書。
「辺境村を独立自治拠点として承認する」
国家直属ではない。
だが保護対象。
異例。
ゼインが笑う。
「出世だな」
違う。
責任だ。
さらに。
魔族穏健派からも使者。
「結節点としての継続協力」
三点接続の恒常化。
つまり。
村は正式に“均衡基点”となった。
世界の節。
だが問題は残る。
強硬派。
黒線紋の一部。
そして。
戦争で利益を得ていた者たち。
消えていない。
その夜。
森の奥で小さな炎。
強硬派の残党。
数は少ない。
だが怨嗟は深い。
ゼインが報告する。
「散発的衝突は続く」
完全平和はない。
だが。
大戦はない。
俺は塔の上に立つ。
村の灯り。
子供の笑い声。
鍛冶場の音。
日常。
「戦争は終わったのか?」
トルが聞く。
俺は少し考えて答える。
「終わらせた」
完全ではない。
だが構造は壊した。
リゼルが空を見上げる。
「三大魔獣は静かです」
均衡は保たれている。
恐怖による維持ではなく、
接続による維持。
王都。
王は玉座で独り呟く。
「百年の負債を返した」
完全ではない。
だが始まり。
南方。
ヴァレシアが言う。
「若い世代が戦争を知らずに育つ」
それが目標。
そして。
黒線紋当主は地下で鎖を見上げる。
「均衡は壊れぬ」
意味は別。
均衡は常に揺れる。
誰かが触れれば、また動く。
塔の光が静かに夜を照らす。
村は小さい。
だが世界の一部を変えた。
「ここからだ」
俺は呟く。
守るだけだった男は、
世界を修復する側に立った。
第47話まで読んでいただきありがとうございます。
新均衡が成立しました。
・戦線停止
・鎖安定
・村の自治承認
・魔族穏健派との協力
戦争は終わりました。
ですが完全な平和ではありません。
均衡は維持され続けるもの。
そしてそれを支える人々がいる。
次回、最終話。
村から始まった物語の結びへ。
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