第45話 王都地下封印
王城、玉座の間。
俺は王の前に立っていた。
隠し事はない。
半分の条約原本。
原初の鎖。
黒線紋の封印改修。
すべて話した。
王は沈黙したまま、長く目を閉じた。
「……地下へ入る許可を出す」
近衛がどよめく。
禁域。
王家と黒線紋中枢しか入れない場所。
「条件がある」
王が続ける。
「成功すれば、和平を公にする」
空気が変わる。
歴史が動く条件。
「失敗すれば?」
俺の問いに、
「国家反逆として処断する」
当然だ。
覚悟は決まっている。
地下第三層。
以前崩れかけた封印区画。
だが今回はさらに深い。
第四層。
通常記録には存在しない空間。
リオネが壁の紋様を見る。
「改修痕がある」
新しい。
黒線紋の手。
封印を“強化”ではなく、
“偏らせている”。
均衡を片側に寄せる設計。
ゼインが低く言う。
「罠もある」
当然だ。
通路に魔導陣。
踏めば即封鎖。
リゼルが結界を解析。
解除。
慎重に進む。
やがて広い空間。
巨大な鎖が天井から垂れている。
実体はない。
光の鎖。
空間を貫いている。
「……これが」
リオネが息を呑む。
原初の鎖。
三大魔獣の魔力線が、ここで束ねられている。
だが。
中央部に亀裂。
黒い染み。
「偏りが強い」
リゼルが分析する。
南方側に引っ張られている。
強硬派の干渉。
「残りの条文を」
ヴァレシアが差し出す。
穏健派に伝わる写本。
完全ではないが、補完できる。
俺は半分の原本を取り出す。
鎖の中心へかざす。
文字が淡く光る。
百年前の誓約。
「双方、侵略を停止し、均衡を保つ」
言葉が魔力へ変換される。
鎖が震える。
空間が揺らぐ。
三大魔獣の影が遠くに映る。
咆哮が響く。
その瞬間。
背後から拍手。
「面白い余興だ」
振り向く。
黒線紋当主。
護衛数名。
予想していた。
「鎖を繋げば戦争は終わる」
当主が冷たく言う。
「終われば均衡は不安定になる」
「恐怖こそが秩序だ」
思想の差。
「違う」
俺は鎖に魔力を流しながら答える。
「恐怖は維持装置だ」
「秩序じゃない」
当主が合図。
私兵が突撃。
ゼインと近衛が迎撃。
火花。
地下に響く衝撃。
鎖が大きく揺れる。
不安定。
あと一押し。
リオネが叫ぶ。
「魔力を三方向から!」
南方結界。
中央塔。
王都封印。
三点接続。
リゼルが南方と共鳴。
俺が中央塔とリンク。
王が玉座で魔力を流す。
遠隔共鳴。
鎖が輝く。
黒い染みが薄れる。
亀裂が埋まっていく。
「止めろ!」
当主が叫ぶ。
だが遅い。
光が地下を満たす。
一瞬、世界が静止する。
次の瞬間。
静寂。
鎖は安定した。
完全ではない。
だが接続は復旧。
黒線紋当主は静かに退く。
「まだ終わらぬ」
脅しではない。
宣言。
地下は静まり返る。
リゼルが確認する。
「三大魔獣の波、収束」
成功だ。
王城上空。
雲が晴れる。
遠く、ヴァル=ゼリオスの影が薄れる。
干渉停止。
俺は鎖を見上げる。
触れてはいけないものに触れた。
だが。
壊さなかった。
王の声が地下に響く。
「約束は守る」
和平は公になる。
戦争の理由が、消える。
だが。
新しい均衡が始まる。
第45話まで読んでいただきありがとうございます。
原初の鎖、接続成功です。
・地下第四層
・黒線紋当主との対峙
・三点接続による修復
物語はついに百年前の歪みに触れました。
戦争は終わるのか。
黒線紋はどう動くのか。
そして世界は安定するのか。
ここからは“歴史暴露編”。
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物語は終盤へ向けて加速します。




