第42話 三者会談
中央塔の麓。
臨時に設けられた円卓。
村の中央で、国家の未来を話し合う。
異様な光景だった。
王家側代表、レグルス。
黒線紋監査官、ダルヴァ。
そして俺。
背後にはリオネ、リゼル、ゼイン。
均衡の塔が静かに脈打つ。
「まず確認する」
レグルスが口火を切る。
「中央塔は王国に敵対しないな?」
即答する。
「敵対しない」
「だが従属もしない」
空気が凍る。
ダルヴァが鼻で笑う。
「反逆の匂いがするな」
「監視強化が妥当だ」
「監視は構わない」
俺は視線を外さない。
「ただし共同で」
王家と黒線紋、両方。
単独支配はさせない。
レグルスが理解を示す。
「王家は異議なし」
ダルヴァは眉を寄せる。
「無駄な牽制だ」
「均衡を知らないな?」
俺は中央塔を指す。
「戦力が一方に偏れば、三大魔獣が動く」
ダルヴァの目が僅かに揺れる。
知っている。
やはり。
「黒線紋は封印構造に関わっている」
リオネが静かに告げる。
証拠はない。
だが核心。
「根拠は?」
ダルヴァ。
「設計図」
リオネが机に写しを置く。
王都地下封印改修案。
黒線紋関連印。
レグルスが息を呑む。
ダルヴァは冷静を装う。
「改修は安全強化だ」
「なぜ今?」
リゼルが問いを重ねる。
「魔獣出現直前に」
沈黙。
均衡が揺れる。
その時。
塔が震えた。
微弱だが明確。
均衡波。
「南方戦線で小競り合い」
リゼルが目を閉じる。
魔族強硬派と王国軍の衝突。
小規模だが。
波が伝わる。
「見ろ」
俺は言う。
「ここが均衡点だ」
争いがあれば反応する。
隠せない。
レグルスが決断する。
「王家は中央塔を公的観測点とする」
「国家機密扱い」
公開はしない。
だが認める。
ダルヴァは不満を隠さない。
「黒線紋は独自監査を続ける」
「だが強行はしない」
牽制は成功。
完全勝利ではない。
均衡維持。
「条件がある」
俺は続ける。
「封印改修計画の停止」
レグルスがダルヴァを見る。
圧。
「一時凍結だ」
ダルヴァが答える。
完全停止ではない。
だが時間は稼げた。
会談は終わる。
だが本質は別。
黒線紋は後退した。
王家は一歩前に出た。
村は中立基点として承認された。
夕暮れ。
レグルスが小声で言う。
「陛下は直接会いたいと」
動く。
王が前に出る。
ダルヴァは去り際に囁く。
「均衡に触れ続ければ、いずれ壊れる」
脅しではない。
警告。
夜。
塔が静かに光る。
三方向の力が拮抗している。
今は。
リオネが呟く。
「均衡を外側にも作れた」
だが微妙だ。
ほんの僅かなズレで崩れる。
俺は塔に触れる。
「次は魔族側だ」
片側だけでは意味がない。
真の均衡は両側。
遠く南方の空が赤く瞬く。
強硬派は止まらない。
物語は、さらに外へ広がる。
第42話まで読んでいただきありがとうございます。
三者会談、成立しました。
王家・黒線紋・村。
完全な勝利ではありません。
ですが均衡を政治にも作ることができました。
今回のテーマは「牽制」。
そして次は魔族側。
均衡は片側だけでは意味がありません。
物語は王国編から世界編へさらに踏み込みます。
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次回、南方で動きます。




