第41話 国家の思惑
朝。
村の入口に二つの旗が立った。
王家の黄金旗。
そして黒線紋の黒旗。
同時に。
偶然ではない。
先に到着したのは王家の使者。
近衛隊副官、レグルス。
若いが、礼節をわきまえている。
「辺境村を国家保護下に置く」
丁寧な宣言。
実質的な庇護。
「条件は?」
俺はすぐに聞く。
レグルスは少し間を置いた。
「中央塔の監査」
「王都への定期報告」
「緊急時の動員協力」
妥当。
だが自由は減る。
直後に黒線紋の使者が来る。
重装私兵を引き連れた監査官。
目が冷たい。
「均衡干渉の疑いあり」
「国家監視対象とする」
言い方が違う。
内容は似ている。
「監査の範囲は?」
俺が問うと、
「塔内部、魔力流路、設計図の提出」
リオネが小さく舌打ちする。
核心だ。
封印線との関係を探る気だ。
二つの提案。
保護と監視。
だがどちらも、村の主導権を奪う。
ゼインが耳打ちする。
「選べば、敵が明確になる」
分断。
狙いはそこだ。
俺は塔の上から村を見る。
村人の顔。
不安。
だが信頼もある。
「返答は三日後だ」
俺は宣言する。
両使者に。
即答しない。
時間を稼ぐ。
その夜、会議。
リオネが言う。
「王は本気よ」
「でも黒線紋はそれ以上に本気」
リゼルも続ける。
「どちらかに完全に付けば、均衡は傾く」
それが最悪。
三大魔獣が再反応する可能性。
「なら第三の道だ」
俺は言う。
全員が見る。
「保護は受ける」
「だが監査は共同にする」
王家と黒線紋、両方を同席させる。
情報を分断させない。
互いを牽制させる。
「均衡を外に作るのね」
リオネが微笑む。
塔だけじゃない。
政治も均衡。
だがその瞬間。
塔の中心が微かに震えた。
魔力波。
弱いが確か。
リゼルの顔が強張る。
「……均衡波の微振動」
遠くで戦力バランスが揺れている。
王都か。
魔族領か。
あるいは。
黒線紋が何か動かした。
森の奥。
赤い光が一瞬瞬く。
強硬派の気配。
まだ消えていない。
村は今や、国家の焦点。
逃げ道はない。
三日後。
選択を示す。
だが実質は選ばない。
均衡を保ったまま、主導権を握る。
俺は塔に手を置く。
「均衡を利用する」
壊さない。
だが、操られない。
遠く王都。
王は窓辺に立つ。
「辺境は、王より賢いかもしれぬな」
一方。
黒線紋当主は笑う。
「利用できるなら、それで良い」
盤面は動き続ける。
第41話まで読んでいただきありがとうございます。
国家が本格的に動きました。
王家の保護。
黒線紋の監視。
そして村の選択。
今回のテーマは「政治的均衡」。
武力ではなく、構造で戦います。
次回、三者会談。
均衡を外側にも作れるのか。
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物語はさらに深くなります。




