第40話 均衡の代償
夜明け。
村は立っていた。
塔は傷を負いながらも、静かに脈打っている。
だが空気が違う。
重い。
澄みすぎている。
「魔力濃度が上がってる」
リゼルが呟く。
地下から吹き上がる微かな振動。
均衡核との接触。
その影響が残っている。
畑の端。
異変はそこで起きた。
作物が一夜で異常成長。
通常の三倍。
だが――
葉脈が淡く発光している。
「良いこと……なのか?」
トルが不安そうに見る。
リオネは首を振る。
「濃度が不安定よ」
豊作ではなく、変質。
均衡の余波。
鍛冶場。
カイルが顔色を変える。
「金属が……」
魔石残滓が勝手に共鳴している。
炉に入れていないのに震える。
村全体が“敏感”になっている。
そして。
森の奥から低い唸り。
魔物ではない。
もっと小さい。
だが多い。
「小型魔獣種だ」
ゼインが剣を抜く。
普段は辺境に出ない個体。
だが今、村へ引き寄せられている。
均衡点に寄る本能。
数は多くない。
だが問題は別。
「呼び水になってる」
リゼルが言う。
村が“目印”になった。
均衡核は敵と判断しなかった。
だが。
調整対象にはした。
「つまり」
ミラが苦い顔をする。
「放っておいてはくれない」
その通りだ。
中央塔へ集まる。
リオネが流路を確認。
「塔は安定している」
「でも外部からの干渉が増える」
均衡の波。
周期的に揺らぐ可能性。
俺は塔の中心に立つ。
「代償は何だ」
リゼルが静かに答える。
「均衡を保つ責任」
三大魔獣が暴れれば、
この村は反応する。
均衡が傾けば、
最前線になる。
村は安全ではなくなった。
だが。
選んだ道だ。
その時。
見張り台から報告。
「王都から使者!」
早い。
書状。
王の印。
内容は簡潔。
“均衡核観測を確認。辺境村は国家保護対象とする”
ざわめき。
王が動いた。
公的に。
同時に。
もう一通。
黒線紋の紋章。
“辺境村は国家の監視下に置く”
保護と監視。
表と裏。
ゼインが笑う。
「取り合いだな」
だが軽くはない。
王も黒線紋も、
村を無視できなくなった。
森の奥で赤い光が瞬く。
強硬派も気づいている。
俺は塔の上に立つ。
村を見下ろす。
ここはもう、ただの辺境ではない。
均衡の基点。
「守るだけじゃ足りない」
「導く」
均衡に振り回されない。
均衡を利用する。
夜。
塔が静かに光る。
だが村人たちは働き続ける。
日常は止まらない。
均衡に触れた村。
その代償は重い。
だが。
退かない。
第40話まで読んでいただきありがとうございます。
均衡核に触れた代償が明らかになりました。
・魔力濃度上昇
・異常成長
・魔獣の引き寄せ
・国家の注目
村は安全地帯ではなくなりました。
ですが同時に、
国家も無視できない存在になりました。
ここからは政治と勢力の本格戦。
王、黒線紋、魔族穏健派。
三方向から動きます。
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物語はさらに加速します。




