第34話 均衡の刃
王城上空。
《天墜のヴァル=ゼリオス》が旋回する。
一振りで空気が裂け、
結界が軋む。
王の魔力でも、押し返すのが限界。
討てない。
「止める」
俺は跳んだ。
王城の塔から屋根へ。
仮面――リゼルが並ぶ。
「無茶です!」
「分かってる!」
だが、見ているだけでは終わる。
魔獣がこちらを認識する。
紅い瞳。
巨大な瞳孔が絞られる。
格が違う。
本能が告げる。
「《即席強化》」
魔力を全開。
体が軋む。
限界突破。
俺は翼の付け根へ斬り込む。
衝撃。
刃が弾かれる。
硬い?
違う。
密度が異常。
魔力の塊。
魔獣が翼を振るう。
圧力だけで吹き飛ぶ。
塔に叩きつけられる。
肺の空気が抜ける。
(ダメだ)
次元が違う。
リゼルが結界を展開。
「均衡体は単独で倒せません!」
「最低でも国家級戦力が必要です!」
王城側から魔導砲。
直撃。
だが表皮を削るだけ。
咆哮。
衝撃波で城壁が崩れる。
王の声が響く。
「撤退準備だ!」
王都防衛優先。
討伐は不可能。
現実。
俺は再び立ち上がる。
逃げる?
否。
試す。
「弱点は!」
リゼルが叫ぶ。
「核心は魔力炉!」
「胸部中央!」
距離が遠い。
到達不能。
魔獣が口を開く。
蒼い光。
本能が叫ぶ。
死。
「伏せろ!」
王城結界が割れる。
光柱が地面を削る。
広場が消し飛ぶ。
瓦礫と炎。
俺は地に伏せたまま、理解する。
これは戦争ではない。
災厄だ。
「レイ!」
カイルの声。
いつの間にか王都へ来ていたのか。
村の仲間たち。
俺を追って。
(なぜ来た)
だが嬉しい。
同時に怖い。
魔獣が旋回を止め、上空へ昇る。
王都は半壊。
だが完全破壊はしない。
均衡装置。
目的は均衡。
滅ぼすことではない。
圧をかけること。
リゼルが息を切らす。
「これは警告です」
「戦争を続けろという」
黒線紋の思惑通り。
王城から撤退命令が出る。
「辺境部隊は退け!」
俺は拳を握る。
勝てない。
今は。
「退く」
言葉が重い。
だが必要。
村がある。
仲間がいる。
ここで死ねない。
王都外縁。
煙の向こうで、魔獣は雲の中へ消える。
封印は再固定されたらしい。
だが次は分からない。
俺たちは馬を借り、急ぐ。
七日討伐布告。
王都は混乱。
黒線紋は次を打つ。
村が狙われる可能性が高い。
夕暮れ。
遠くに石壁が見える。
傷だらけだが、立っている。
俺は膝をつく。
「……勝てなかった」
正直な言葉。
カイルが言う。
「死ななかった」
ミラが言う。
「まだ終わってない」
ユークの妹が、震えながらも笑う。
「帰ってきた」
守る場所がある。
それが今の力。
リゼルが静かに言う。
「均衡を壊すには、均衡以上の力が必要です」
つまり。
国家か。
三大魔獣級か。
あるいは。
別の均衡。
俺は空を見上げる。
雲は静かだ。
だが世界は揺れている。
「次は、準備する」
真正面からは勝てない。
なら。
別の戦い方をする。
第三章はまだ終わらない。
世界の均衡に触れた村は、
一度、原点へ戻る。
だが。
これは敗北ではない。
戦略的退却だ。
第34話まで読んでいただきありがとうございます。
今回は明確な敗北です。
世界三大魔獣は、
現時点でのレイたちでは届かない存在。
ですが、無意味な戦いではありませんでした。
・均衡装置の仕組み
・王の力量
・黒線紋の思惑
・そして“勝てない敵”の確認
ここから物語は再構築に入ります。
次は力を集める章。
村へ戻り、
仲間を集め、
均衡に対抗する方法を探します。
感想・評価・ブックマーク、本当に励みになります。
次章、再起動です。




