第33話 天墜の咆哮
王都上空。
《天墜のヴァル=ゼリオス》が旋回する。
翼の一振りで空気が裂ける。
王城結界が軋み、光が揺らぐ。
地上は混乱。
悲鳴。
瓦礫。
炎。
俺たちは路地裏へ退避していた。
半分に裂けた和平条約原本。
焦げ跡。
だが署名と裏切り条項は残っている。
仮面が空を見上げる。
「……最悪です」
「三大魔獣は、単なる災害ではありません」
低い声。
重い事実。
「どういう意味だ」
俺の問いに、仮面は仮面を外した。
初めて素顔が晒される。
白銀の瞳。
魔族の証。
「三大魔獣は、世界の均衡装置です」
「人間と魔族の戦力が一定以上傾いた時」
「強制的に戦争を再発させる“圧力”として動く」
空気が凍る。
つまり。
「百年前、和平が成立しかけた時」
「封印は解かれかけました」
「ですが人間側が先に条約を破り、戦争を続行させた」
だから均衡は保たれた。
皮肉な形で。
「黒線紋は知っているのか」
「断定はできません」
「ですが封印は王都地下」
「第三層と同時代」
繋がりすぎている。
魔獣が再び咆哮。
今度は王城結界を削る。
このままでは落ちる。
王都壊滅。
その時。
王城大門が開く。
黄金の旗。
重装の近衛。
そして――
王。
王は若くはない。
だが目は鋭い。
魔導陣が足元に展開。
「退け、ヴァル=ゼリオス」
王自らが結界を強化する。
王は無能ではない。
だが。
知らされていない可能性がある。
「陛下は条約を知っているのか」
俺が呟く。
仮面は首を振る。
「王権は象徴です」
「実権は派閥」
黒線紋。
王の魔力が魔獣を押し返す。
だが決定打ではない。
均衡装置は、そう簡単には止まらない。
王の視線が、一瞬こちらに向く。
原本を抱えるエルシア。
そして俺。
気づいた。
広場に王の声が響く。
「混乱するな!」
「王都は守る!」
民衆の動揺が止まる。
王は本物だ。
だが。
真実はまだ知らない。
仮面が言う。
「今、陛下に条約を見せれば」
「戦争は終わる可能性がある」
だが同時に。
「均衡装置が完全発動するかもしれません」
魔獣が完全解放。
世界規模の災厄。
選択が迫る。
・今暴くか
・魔獣を止めてから暴くか
時間はない。
空を覆う巨影。
王城結界が悲鳴を上げる。
世界が揺れている。
俺は原本を握る。
半分でも、世界を変える。
だが変えれば、何かが壊れる。
「……止める」
まずは魔獣。
均衡を理解した上で。
壊し方を選ぶ。
王の結界が崩れかける。
俺は一歩踏み出す。
村のために始めた戦いが、
今や世界の均衡に触れている。
三大魔獣の正体が明らかになりました。
ただの強敵ではありません。
世界の均衡そのものです。
そして王が登場。
王は無能ではない。
ですが、全てを知らされていない。
黒線紋はどこまで操っているのか。
和平を暴けば戦争は止まるのか。
それとも均衡装置が世界を壊すのか。
物語は完全に世界規模へ入りました。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
感想・評価・ブックマークが力になります。
次回、均衡へ踏み込みます。




