第28話 監視の都
第28話です。
王都へ向かいます。
ですが、敵は正面にいるとは限りません。
見られているのは、こちらかもしれません。
王都外縁。
巨大な城壁が空を裂いていた。
辺境の都市ラグナとは比べ物にならない。
塔。
旗。
巡回兵。
そして――
異様な静けさ。
「空気が重いですね」
仮面が小さく言う。
「ああ」
以前より明らかに警備が増えている。
検問が三重。
身分確認。
荷物検査。
魔力感知。
「討伐布告の影響か」
「それもあります」
だがそれだけではない。
都市内部の動きが早すぎる。
黒線紋が焦っている。
門を通る。
視線を感じる。
正面ではない。
横。
屋根の上。
窓の隙間。
(監視網)
完全な軍管理ではない。
もっと私的。
派閥の目。
市場を抜ける。
仮面が歩調を落とす。
「尾行が二人」
「右後方と屋根上」
自然に歩く。
振り向かない。
「文官街へは直接行けません」
「迂回する」
路地へ入る。
布屋の裏口。
裏階段。
屋根伝い。
王都は立体だ。
屋根の上。
一瞬、黒線紋の腕章が見える。
私兵。
王都内に常駐している。
(完全支配ではないが、浸透している)
「エルシアは安全か」
「断定できません」
仮面の声が低い。
「既に監視対象の可能性も」
焦るな。
七日ある。
だが猶予は削れている。
文官街の外れ。
古文書塔。
石造りの円塔。
窓は狭く、高い。
「ここです」
その瞬間。
背後で拍手。
「さすがだな」
振り向く。
黒線紋私兵の隊長。
林道で戦った男。
「王都まで来るとは」
剣は抜かない。
余裕。
「討伐布告を読んでいないのか?」
読んだ。
だから来た。
「降伏すれば命は助かる」
同じ台詞。
だが今は都の中。
戦えば騒ぎになる。
「今日は斬らない」
隊長は笑う。
「見ているだけだ」
「どこへ行くのか」
試されている。
「……通れ」
隊長が退く。
罠か。
いや。
泳がせるつもりだ。
背後に目がある状態で動く。
最悪の条件。
塔の裏口。
小さな扉。
ノック三回、間、二回。
静かに開く。
中から女性の声。
「急いで」
中へ滑り込む。
扉が閉まる。
外には黒線紋の視線。
薄暗い部屋。
机に山積みの古文書。
そして。
眼鏡の女性。
鋭い目。
「あなたが、辺境の村長代理?」
王都文官エルシア。
その目は恐れていない。
だが。
覚悟がある。
「七日しかない」
俺は言う。
彼女は静かに答える。
「三日あれば十分です」
強い。
だが。
外では黒線紋が笑っている。
王都は、すでに監視の都になっていた。
王都は完全に監視下でした。
黒線紋は、すでに動いています。
次回、いよいよ封印文書へ近づきます。
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