第25話 反撃の余波
第25話です。
人質は救出しました。
ですが、戦いに無傷はありません。
反撃には、必ず余波があります。
森の奥、仮拠点。
救出した人質は二十七名。
だが、全員ではない。
三名は、炎の中で間に合わなかった。
沈黙が重い。
ユークの妹は無事だった。
だが隣で泣く少年は、兄を失った。
「あと少しだったのに……」
誰も慰めの言葉を持たない。
俺もだ。
仮面が報告する。
「強硬派は意図的に火を拡大させました」
「黒線紋の証拠隠滅と同時に」
証拠。
人質の名簿。
魔石輸送の記録。
多くが焼け落ちた。
「……読まれてたな」
俺は呟く。
魔石襲撃。
揺さぶり。
強硬派を刺激した。
黒線紋を焦らせた。
結果。
現場は戦場になった。
「あなたの責任ではありません」
仮面が言う。
だが。
「俺が動いたからだ」
静観していれば、
三人は生きていたかもしれない。
“かもしれない”。
その言葉が刺さる。
夜。
焚き火の前で、人質たちは小さく身を寄せ合う。
恐怖はまだ消えない。
村へ戻れば安全か?
保証はない。
「黒線紋は動きます」
仮面が続ける。
「施設を失った」
「人質も失った」
「そしてあなたの存在を知った」
報復は来る。
より大きく。
俺は肩の傷を押さえる。
痛みは鈍い。
だが心の方が重い。
その時、
ユークの妹が近づいた。
「兄さんが言ってました」
「村は守ってくれるって」
真っ直ぐな目。
「……本当に来てくれた」
胸が締まる。
救えた命もある。
それも事実。
夜空を見上げる。
星は変わらない。
だが盤面は変わった。
強硬派は俺を認識した。
黒線紋は損害を受けた。
領主は動きやすくなる。
だが。
代償は払った。
「次は、失敗しない」
俺は小さく言う。
守るために動く。
だが。
守るだけじゃ足りない。
壊さなければ止まらない相手もいる。
夜明け。
村へ戻る準備を始める。
石壁の中で、
新たな覚悟が形になる。
救出は成功しましたが、無傷ではありませんでした。
動けば、波は立つ。
その余波が広がり始めています。
第2章、最終局面へ。
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