第20話 黒線紋の名
第20話です。
反撃に動く前に、
敵の正体を知らなければならない。
黒線紋。
その名の一端が、明らかになります。
深夜。
集会小屋の机に、地図が広げられていた。
王都までの街道。
中継都市。
軍の駐屯地。
領主から渡された情報だ。
(本気だな)
偽りにしては具体的すぎる。
仮面の人物が、紙片を置く。
「黒線紋派閥の中核名」
そこに書かれていたのは――
ヴァルドリス家
王都軍部に強い影響力を持つ貴族。
代々、軍務大臣を輩出。
そして。
「魔石取引の独占権を持つ」
魔石。
魔族と深く関わる資源。
「和平は、利益にならない」
仮面が言う。
「戦争は需要を生む」
「魔石、武器、徴兵」
「黒線紋は、その循環で肥えている」
つまり。
辺境が不安定であるほど儲かる。
「証拠は」
俺の問いに、仮面は首を振る。
「ない」
「あるのは流れと一致だけ」
政治は、証拠より流れ。
領主の書状にはもう一つあった。
王都軍の再編命令。
「第三大隊を辺境へ再配置」
制圧規模倍増。
言葉通りだ。
「ヴァルドリス家の当主は?」
「表向きは忠臣」
「だが弟が軍部実権を握る」
黒線紋を使うのは、弟。
強硬派。
「人質は?」
「王都郊外の訓練施設に移される可能性が高い」
軍属扱い。
だが実態は圧力材料。
俺は考える。
潰すべきか。
交渉すべきか。
揺さぶるべきか。
「直接ぶつかれば負ける」
カイルが言う。
正しい。
村はまだ小さい。
「だから崩す」
俺は言った。
「軍部じゃない」
「派閥を」
具体案はまだない。
だが方針は定まった。
その時。
仮面が静かに告げる。
「ヴァルドリス家は、魔族の一部と接触しています」
「穏健派ではありません」
強硬派同士。
最悪の組み合わせ。
「和平を潰すための戦争」
仮面の声が低くなる。
「それが本筋です」
理解した。
これは村の問題じゃない。
辺境全体。
国家規模。
俺は地図に印をつける。
「まずはここだ」
中継都市。
物資と情報の交点。
「黒線紋の資金の流れを切る」
仮面の目が細まる。
「大胆ですね」
「小さいからできる」
村だからこそ、潜れる。
外で風が鳴る。
王都は大きい。
黒線紋は強い。
だが。
俺たちは、狙われるだけの存在じゃない。
「始めるぞ」
小さな村の反撃が、
国家の裏へ向かう。
黒線紋派閥の名が出ました。
まだ証拠はありません。
ですが、構図は見え始めました。
ここからは情報と資金の戦いです。
次回、村は初めて“外へ出ます”。
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