第19話 揺らぐ領主
第19話です。
反撃を決めた矢先、
思わぬ場所から接触があります。
敵か、味方か。
それとも――板挟みか。
夜半。
見張り台の鐘が、小さく三度鳴った。
敵襲ではない。
“来訪”。
南門に立っていたのは、
王都旗ではない。
辺境領主の紋章。
馬は二頭。
従者は一人だけ。
(少ないな)
罠ではない。
本気で目立たぬよう来ている。
現れたのは、領主本人だった。
名はアルヴェイン。
初対面。
だが目は疲れていた。
「……突然で済まぬ」
低い声。
威圧はない。
「話がある」
村の集会小屋。
護衛は外。
俺と領主、二人きり。
「王都軍部が動いた」
「知っているな」
「ええ」
俺は頷く。
「拒否しました」
「聞いた」
領主はため息をついた。
「愚かなことをしたな」
「そうでしょうか」
視線がぶつかる。
「軍部は黒線紋の家系が主導している」
やはり。
「私は命じられた」
「拠点を確保しろ、と」
「できねば、責任を問うと」
つまり。
失敗すれば切られる。
「なぜ来た」
俺の問いに、領主は沈黙した。
やがて言う。
「……私は戦争を望まぬ」
意外だった。
「辺境を安定させるのが役目だ」
「だが王都は逆を望んでいる」
目に、本物の苦悩がある。
「魔族との緊張を維持したい勢力がある」
言葉を選びながら。
「和平は都合が悪いのだ」
ほぼ、仮面の人物の言葉と一致。
「あなたは、黒線紋派閥ではない?」
「違う」
即答。
「私は古い家だ」
「軍部とは距離がある」
だから圧を受けている。
「あなたの村は誤算だ」
「小さすぎる。潰すには目立ちすぎる」
「従わせるには、強すぎる」
皮肉だな。
「私と手を組め」
唐突だった。
「表では敵でいよう」
「だが裏で情報を回す」
「王都軍の動きを流す」
「代わりに、お前は私の領を不安定にするな」
条件提示。
俺は沈黙する。
信用できるか?
完全には無理だ。
だが利害は一致している。
「人質がいる」
俺は言う。
「王都に」
領主の目がわずかに動く。
「……それも聞いている」
「黒線紋はそうする」
「私の家臣の子も、消えた」
静かな怒り。
つまり。
領主も、盤面にいる。
操り駒ではない。
縛られた駒だ。
「期限は短い」
領主は立ち上がる。
「次は制圧規模を倍にする」
「準備しろ」
助言。
脅しではない。
帰り際。
領主が言った。
「お前は、村を守れ」
「王都は、私が揺らす」
完全な味方ではない。
だが敵でもない。
夜風が吹く。
仮面の人物が現れる。
「……面白いですね」
「領主が動くとは」
「信用する?」
「しない」
俺は答える。
「だが、使う」
盤面は広がった。
領主が動きました。
敵だった存在が、
完全な敵ではなくなります。
盤面が一段広がりました。
次回、具体的な反撃計画が動き出します。
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