第14話 仕掛けた罠と、動き出す影
第14話です。
仕掛けた罠は、必ず何かを釣り上げます。
問題は――それが想定内かどうか。
情報戦、最初の動きです。
夜は静かだった。
静かすぎた。
(来る)
南東の壁。
わざと「弱点」として流した場所。
その周辺の見張りを減らしたように見せかけ、
実際は二重罠と弓兵を伏せている。
ユークは震えていた。
「……本当に、来るんですか」
「来なきゃ困る」
俺は短く答える。
月が雲に隠れた瞬間。
影が動いた。
三人。
軽装。
音がない。
(魔物じゃない)
人間だ。
しかも訓練されている。
南東の壁へ一直線。
躊躇いがない。
(情報を信じてる)
一人が壁に触れた瞬間。
――ガチン。
足元が崩れる。
落とし穴。
続いて弓が放たれる。
カイルの矢が、肩を射抜く。
「伏兵だ!」
小声。
だが遅い。
二人目が罠網に絡まる。
三人目は即座に後退。
判断が速い。
(精鋭だな)
「追うな!」
俺は制止する。
目的は殲滅じゃない。
確認だ。
捕縛した一人の腕には、
小さな焼き印。
王都紋章。
だが――
よく見ると、紋章の裏に
黒い細線が刻まれている。
二重紋。
(裏組織か)
男は何も喋らない。
歯の奥に毒も仕込んでいない。
自害しない。
(末端)
使い捨てではない。
つまり――
試しだ。
夜明け前。
仮面の人物が現れる。
「想定内ですか?」
「半分な」
俺は焼き印を見せる。
仮面の目がわずかに細まる。
「……黒線入り」
「王都でも限られた家系だけが使う」
「魔族と通じている派閥」
確定した。
「食いついた」
俺は呟く。
「だが本命はまだだ」
「これは様子見」
仮面は頷く。
「あなたは、すでに盤上に立っています」
「否定はしませんよね?」
俺は沈黙した。
朝。
村人たちが集まる。
ユークは泣き崩れる。
「俺のせいで……」
「違う」
俺は言う。
「お前の情報で、奴らが動いた」
「今はそれでいい」
利用する。
だが切り捨てない。
それが俺のやり方だ。
捕縛者は、夜のうちに消えた。
縄は切られていない。
足跡もない。
(回収された)
つまり――
見られている。
もっと近くで。
遠く。
森の奥。
黒い外套の人物が呟く。
「……やはり、ただの村ではない」
隣に立つ影。
「排除するか?」
「まだだ」
「価値を見極める」
風が吹き、姿は消える。
村は守れた。
だが――
これは序章に過ぎない。
罠は機能しました。
ですが、相手もただの盗賊ではありません。
王都の裏組織が動き始めています。
ここから圧力は強くなります。
次回、ついに“正式な動き”が届きます。
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