第13話 交易か、査察か
第13話です。
交易という名の“確認”が始まります。
発展した村は、外から見れば利用価値のある拠点。
静かな探り合いの回です。
「塩と乾燥肉、それから鉄釘を少し」
商隊の代表は、穏やかな声で言った。
名はロドリック。
王都の商会に属しているらしい。
だが――
「石材の量が多いですね」
「この規模の村にしては」
視線は、石壁へ。
次に、鍛冶場の煙へ。
そして見張り台。
(数えている)
防衛力を。
「生き残るためですよ」
俺は同じ言葉を繰り返す。
「辺境は物騒ですから」
ロドリックは笑う。
「ええ、存じていますとも」
その“存じています”が、引っかかった。
取引は問題なく進んだ。
塩と鉄はありがたい。
だが、向こうが本当に欲しいのは――
情報だ。
「戦える者は、どれほど?」
何気ない問い。
俺は肩をすくめる。
「猟師が数人」
嘘ではない。
全部も言っていないだけだ。
夕方。
ロドリックは村を一通り歩いた。
壁を叩き、罠の痕跡を見て、
畑の再生具合を確認する。
「順調に発展している」
「実に、惜しい」
惜しい?
「王都は、有能な拠点を保護する制度がある」
「税は多少上がりますが、代わりに守られる」
守られる?
誰に?
魔物からか。
それとも王都からか。
「考えておきます」
俺は曖昧に返した。
ロドリックは満足げに頷く。
「返答は早い方がよい」
「最近は、辺境で物騒な動きもありますから」
視線が、ほんの一瞬だけ鋭くなる。
脅しだ。
その夜。
裏切り者の若者――ユークが、
震える声で言った。
「王都の紋章、あれは……」
「妹を連れていった連中と同じだ」
空気が冷える。
俺は決断する。
「ユーク」
「次の連絡が来たら、流せ」
「壁の弱点は南東」
カイルが驚く。
「本当に?」
「ああ」
もちろん本当の弱点ではない。
南東は二重罠地帯だ。
「釣る」
俺は短く言った。
王都がどう動くか。
裏の勢力がどこまで食いつくか。
ここで見極める。
深夜。
村の外れ。
「動きましたね」
仮面の人物が現れる。
「あなたは、罠を張った」
「静観では?」
「静観だ」
俺は言う。
「だが、目を閉じるわけじゃない」
仮面の奥で、
わずかに笑った気配。
「……あなたは面白い」
遠くで、夜鳥が鳴く。
王都は、餌を飲み込むか。
それとも――
もっと大きな存在が動くか。
外との本格的な接触が始まりました。
交易の顔をした査察。
村は、完全に監視対象です。
そして、情報戦が始まりました。
次回、王都側の反応が動きます。
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