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サイエンスの宝石  作者: はましょ。
壱_慟哭
47/57

46.

 オレと遊華は桜香よりも1年早く生まれた。オレたちは4月15日、桜香は3月11日。ゆえに双子ではないのにもかかわらず、オレたち3人――正確には竜胆もだが――は同じ学年になった。いつも一緒に登校してたし、いつも一緒に下校してたし、そしていつも一緒に遊んでいた。桜香は昔からやんちゃだったので、少し気持ち悪い発想かもしれないが、遊華と設けた我が子のような家族愛を感じていたところだった。


 オレが遊華を明確に好きになりだした時期がいつだったのか、それについては思い当たる節が多すぎてわからない。しかし確かだったのは、歳を経るにつれてオレが遊華のことで考えを巡らせる時間が増えていったこと、そして歳を経るにつれて桜香がオレに対して強く当たるようになっていったことだった。

 まさかこの両者の間に因果があるなどとは、露ほども思いもしなかった。妹が、実の兄であるオレのことを……まさか、まさか異性として好意を抱いているなどとは、まったく思いもしなかったんだ。

 もしかしたら……歴代の対称会の人間たちも……そうだったのかもしれない。オレはいままで、親も含めてみな、嫌々ながらも掟を破らぬよう年子どうしで命を紡いできた……そんなふうに、信じてやまなかった。繰り返すが、きょうだいを持つ者なら誰だってわかるはずである。どれだけ見てくれのいい妹であろうと、どれだけ優秀な弟であろうと、実のきょうだいに対して恋慕の情を持つというのは、遺伝学的にありえないはずなのだ。……どころか、そんなふうに考えることすら生理的に受け付けない。それほどまでに遺伝子は人間の意志に介入してしまっているのである。国は近親相姦を法律として禁じてはいるが、わざわざそんなことせずとも好き好んでそういう行為に走る者などそうそういるはずもなかった。

 しかし……対称会に関しては、こと事情が異なる。もし実のきょうだい間であろうと恋心を持てるなら、性的感情に走れるのなら、都合のいいことこの上ない。それだけで、掟を守る難易度が飛躍的に低下するのだ。好きな者と付き合えて、結婚して、子どもを見いだせるだけで掟は守られる。一族に迷惑をかけずに済む。

 オレの中で……あるひとつの……およそ考えたくもない仮説が脳裏によぎった。悲しいかな、こういう悪い仮説ほど当たっている可能性が高いのだ。できれば思いつきたくはなかった。


 瑠璃家・牡丹家の……対称会の二族の遺伝子は……年子同士が惹かれてしまうように生まれる前からプログラムされている。


 だからこそ掟は……必ず年子を産みつけるように……指示しているのではないか。


 そしてオレと遊華だけが……その規律から抜け出せた……のでは、ないだろうか。


 結局、桜香は今日、最後まで学校に来てくれることはなかった。



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