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サイエンスの宝石  作者: はましょ。
壱_慟哭
39/57

38.

 真なるところは知らないが、【雪柳】や【山吹】を使いこなす存在の中には複数の武器を同時に扱う描写も確認できた。文字として書かれていたわけではない。物陰に鳴りを潜めて盗撮(という名の落書き)を計った者でもいたんだろう。命知らず、ここへ極まれり――と言う他ないが、名前も知らないそんな誰かさんのおかげで得られた情報はあまりに貴重なので感謝はしてもしてもしきれない。複数武器の同時使用のために必要なのが――【宝石】とどのくらい相性がよかったか、という先天的なものなのか、それともシンプルに使用者の熟練度なのか。わからないが、前者の可能性のほうが高いと見ている。オレたちはあくまで指輪を作り出したにすぎず、別に【宝石】をよりうまく使えるような特訓をしたわけではない。というか、そんな方法があるのならぜひとも教えてもらいたい。

「その銃弾は無限回発射可能なんだろう? 思うに【宝石】の能力の本質は力学的エネルギーの膨張……なのではないか?」

「フッ……」

「正解のっ――ようだなっ――!!!」

「瑠璃の唄 ほ長調」

「今度は……()か。物騒だな……って言っても今さらか」


八千滅之雨鎌やちほろびのあまがま


 力学的エネルギーは保存する。増えることなどありえない。食べても食べても減らないアイスなどなければ、無限に撃ち続けられる銃の所在もありえない。

 物理学に基づいて理論的説明を求めるのであれば、【宝石】の最大の不可思議はそここそにあった。日本刀たる〈蒼凪〉は折れても再生し続けるので、新しく指輪を作り出す必要もなければいわんや研ぐ必要もない。結界を創出する〈海《うみ》〉にいたっては、もはや無より有を生み出している。

 そしてこの深海のごとき光を禍々しく放つ大鎌も……


 オレは手にもつ武器のリーチではとうてい届き得ない距離のもと、八千滅之雨鎌を華音めがけて振りかざした。身体の回転を、存分に伴って。


「――――!!!???」


 華音の右腕を容赦なく奪ったのは、鎌から放たれた青光せいこうなる斬撃。

 人類の知るどんな物質より高密度に圧縮された光の刃は、華音に一切の有無を言わせることもなく勝負にケリをつけた。

「「華音っっっ――!!!」」

 美桜と結衣はのほほんとした様相から一転、ドタバタと床を揺るがせて華音に近寄っていく。

「想定していなかったわけではなかったんだがな……まさかこれほどの速度で襲ってくるとは……」

「武器の特性どうこうって話じゃないけどな。いままでの武器だって同じくらいの早さで攻撃することもできた。あえてそうしなかったのは、お前がいちばんよくわかっているだろ」

「まさに私に知らない力――【宝石】とはなんたるか……それを披露してくれたというわけだ……なるほど。端から……勝負などにはなっていなかった」

「そんなことはない。まさか対称会以外の人間にここまで力を出すことになるとは思いもしなかった」

「しかしあれだな……利き腕が使えなくなるというのはどうにも困る。明日は授業を休んで保健室コースだな」

「保健室でどうにかなるものなのか?」

「3年生でさえ今もなお知らない者も多いが、この学園の保健室はある意味で1番の治外法権だぞ? 四肢欠損ごときなら数十分で完治する」

 ……それは相当だな。

 よくあるアニメや漫画の設定は実に確信をついており、回復術というのは並大抵のエネルギーでは実現しうるものではない。学園が【雪柳】、あるいは【山吹】を所持しているのはもはや疑いようもない事実となってしまっているが、使い手もかなりの手練れであると証明されたようなものである。

 今度試しに訪れてみることにしよう。

「良いことを教えてくれたお礼だ。いまここで治してやる」

「……そんなことまで……できるのか?」


「瑠璃の唄 い長調 白夜滴扇びゃくやたるあおぎ


 2人の友人からそっと肩をなだめられ、腕を隠すようにジャージに覆われた華音のそばへとそっと近寄り、そして、一度だけ静かに、扇をあおる。無数に散布された青光あおびかりの粒子が皮膚と言う皮膚にまとわりつくと同時、全身を包む光が空間全体を支配する。あまりの光の粒子の量で、もはや視界など奪われてしまうばかりだ。そしてそれはもちろんオレだけではなく、近くにいた美桜や結衣にとっても同じこと。少しばかりの時間とともに、視界を取り戻した華音の友人たちは体幹からにょきにょきと栄えた右腕を見てそれはそれはもうわかりやすく驚いた。

「えっ……どういうこと……なの……?」

「もはやここまでくると……なんでもアリですな……」

「おつかれさまです、生徒会長」

「おっ……おう、遊華か」

「たいへんお見事でした」

「幻滅させてしまったか?」

「まさか。悠理の言ったとおりです」

「ここまで張り合えるとはつゆほども思いませんでした」

「桜香……」

「兄さまは()()()の歴史においても群を抜いて才能にあふれた存在。私でさえ相手にならないのですから、そもそも端から無謀な戦いだったのです」

「ちょっと桜香ちゃんっっ!? いくらなんでも生徒会長相手にそんなっ――」

「構わんぞ。もとより相手にならないことは理解していたつもりだからな……その……()()()とやらこそが、お前たちの出自なわけだな」

「ええ」

「しかしあれだな……そのことについても聞いてたら、いよいよ日が暮れるどころではない。美桜と結衣にも心配をかけている。また今度、お聞かせ願おう」

「わかった」

「それにしても……【宝石】というのが、まさかこれほどまでに人知を超えた力を持つとは思わなかった。今日得た知見はいずれ必ず役に立つだろう。改めて感謝するぞ、悠理」

「それはどうも」

「ところで……なんだ。遊華なら悠理とも張り合えるのか?」

「えっ――」

「遊華とは何があっても戦いませんからね。オレは」

「どうしてだ 」

「どうしてって……というか、オレの力はもう見せたんだからいいでしょう。やらせるなら遊華と桜香で試合させるべきです」

「ちょっと悠理っ……私は桜香ちゃんとなんて……」

「私は構いませんよ? 遊華さん」

「えっ」

「決まりだな」

「勝手に決めないでくださいっっっ!!!」



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