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サイエンスの宝石  作者: はましょ。
壱_慟哭
33/57

32.

 一見すると意味不明にもほどがある。だがもし……自分が掟を制定する側であるのなら……その真意を読み解くのは、いとも容易かった。

 ふつうならこう書くはずだ。〈殺した者には死んでもらう〉……と。

 当然のはずだ。殺人ほどに重たい罪は、現状日本にはない。殺人を犯した者こそが、罪を償うがごとく、死ぬべきなのだ。

 しかし……これはどうだ。殺された者こそが死ぬべき? なるほど、意味が分からない。そんなこんなで、クラスの中では「まあ気にしなくていいんじゃなーい」といった具合におざなりにされていた掟・その捌なのだった。

「……わかりました。黙っておきます」

「それでいい」

 華音は蓮杜を問答無用に突き放した。明らかに体格差で劣っているのに、ライオンのように見える人間はむしろ華音のほうだった。

「さて。瑠璃悠理。首尾の方はどうかね?」

「さあ? 悪くはないんじゃないですか」

「認めてくれた、と解釈してもよいのかね? 牡丹遊華、瑠璃桜香の方はどうかな」

「悠理がついてくなら私も伺います」

「右に同じです」

「いや、お前のほうが右にいるだろうが」

「会長の方から見て、と言ったほうがよろしかったので?」

「はははっ。やはり面白い。生徒会室では丁重にもてなしてやる。気楽にしておくがいい」

「はあ……」

 ひとまず一件落着と言っていいだろうか。しかし明日からが幾分不安だ。

 華音のおかげでオレたちの疑いは晴れた。だがそれはあくまで合理的解釈にすぎない。精神的溝はむしろ深まったと言ってよかった。無論、クラスメイトとの間にある溝である。

 特に漆花蓮杜。彼はあんなに落ち込んだ顔をするような人間だったのか。いや、落ち込んでいるというにはどこか……熱を感じる。それも、悪い意味で。華音には絶対追いつけないと弁えている琳とちがって、どうやら本気で勝ちに行くつもりのようだ。たとえそれが……どんな手段を、使ったとしても。

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