32.
一見すると意味不明にもほどがある。だがもし……自分が掟を制定する側であるのなら……その真意を読み解くのは、いとも容易かった。
ふつうならこう書くはずだ。〈殺した者には死んでもらう〉……と。
当然のはずだ。殺人ほどに重たい罪は、現状日本にはない。殺人を犯した者こそが、罪を償うがごとく、死ぬべきなのだ。
しかし……これはどうだ。殺された者こそが死ぬべき? なるほど、意味が分からない。そんなこんなで、クラスの中では「まあ気にしなくていいんじゃなーい」といった具合におざなりにされていた掟・その捌なのだった。
「……わかりました。黙っておきます」
「それでいい」
華音は蓮杜を問答無用に突き放した。明らかに体格差で劣っているのに、ライオンのように見える人間はむしろ華音のほうだった。
「さて。瑠璃悠理。首尾の方はどうかね?」
「さあ? 悪くはないんじゃないですか」
「認めてくれた、と解釈してもよいのかね? 牡丹遊華、瑠璃桜香の方はどうかな」
「悠理がついてくなら私も伺います」
「右に同じです」
「いや、お前のほうが右にいるだろうが」
「会長の方から見て、と言ったほうがよろしかったので?」
「はははっ。やはり面白い。生徒会室では丁重にもてなしてやる。気楽にしておくがいい」
「はあ……」
ひとまず一件落着と言っていいだろうか。しかし明日からが幾分不安だ。
華音のおかげでオレたちの疑いは晴れた。だがそれはあくまで合理的解釈にすぎない。精神的溝はむしろ深まったと言ってよかった。無論、クラスメイトとの間にある溝である。
特に漆花蓮杜。彼はあんなに落ち込んだ顔をするような人間だったのか。いや、落ち込んでいるというにはどこか……熱を感じる。それも、悪い意味で。華音には絶対追いつけないと弁えている琳とちがって、どうやら本気で勝ちに行くつもりのようだ。たとえそれが……どんな手段を、使ったとしても。




