29.
あまりにもいきなりすぎて、思わず間の抜けた声が出てしまった。
なぜいまの流れでオレに話がふられることになる。
「あの、生徒会長……コレとはいったい……」
「なんだ蓮杜。同じクラスなのに知らなかったのか? この学園には最初の試練として、〈藤花〉……いいや、お前たちの学年では〈瑠璃〉と言うのだったか。そう。〈瑠璃〉がどこにあるのかを捜索するよう求められる。無論、学園側からは一切の指示も助言もないがな。お前たちもウスウス感じとってくれているんだろうが、〈宝石ゲーム〉において他クラスから略奪するのは極めて難しい。だから体育祭や学園祭などで報酬として学園直々に受けとったり、この広大な敷地の中からそれこそ宝探しの要領で探し当てたりすることがカギとなる。ほかにもさまざま獲得の仕様はあるが……それについてはまあ、自分たちで見出してみることだ。話を戻すぞ? この学園ではまず最初に、〈瑠璃〉を探し出すことが求められる。〈瑠璃〉は〈牡丹〉よりも価値の高い宝石だ。見つけ出せれば極めて有利にゲームを推し進めることができる。しかし〈瑠璃〉を道端から見つけ出すのはなかなかに難しい。私も、1番近くに隠されたものを見つけ出すのに3か月を要した」
「それって……まさか……」
「おっ? 察しがいいな、蓮杜。その通りだ」
教室中の全員が、御影華音の話に耳を傾ける最中、蓮杜だけは天井を見つめ続けていた。
「最も近くに隠された〈瑠璃〉の宝石。それはこの電球の中にあったわけだよ」
2062年4月8日19時。
桜香がどうしても真相を確かめに行きたいというせいで、オレと遊華は学校に駆り出された。
オレたちが到着したころにはすでに、Aクラスの天井はきれいさっぱり元どおりになっていた。むしろあまりにもさっき見たときと同じ光景過ぎて、本当に天井を突き破ったのかと怪しんでしまったくらいだった。
「なあ。ずっと気になってたことがあったんだが、いいか?」
オレは教室に1番最初に入ったときからずっと疑問視していたことを、遊華と桜香に投げかけた。1番最初というのは今のことではない。ホームルームのために集まったお昼どきのことである。
「この学校の天井についてる電気って……蛍光灯、だよな? おかしいと思わないか?」
「たしかに……これだけハイテクな学校には、とても似つかわしいとは言えないね」
「気づきませんでした……。しかし言われてみると違和感でしかありません」
「……ん?」
「どうしたの、悠理?」
「いや……もしかして中身は空洞になってるんじゃないか? というか蛍光灯の器具って、カバーの奥に環状の管があって、それを光源として光を散乱させるものだろ。ふつうカバー越しにでも輪っかが透けて見えるはずだ。なのにこの電気は輪っかのような面影もなければ、端っこのほうに影が落ちてる心地もしない。もしこれが本当に蛍光灯なんだとしたら、それはありえない」
「とすると……」
「破ってみるか? もし何もなかったら、【瑠璃】の力で修復すればいい」
「そうしてみましょか。せいやー!」
かくして見つけ出したのが、大量の〈瑠璃〉だったというわけだ。蛍光灯に見せかけた殻を破った先には、天井に平面に張り付くULEDと、かぼちゃ大の〈瑠璃〉があった。G7の連中が天井を突き破ったとき、もしかしたら〈瑠璃〉があることにも気づいたか? と考えたりもしたが、それはいまから直接G7クラスを訪ねてみれば確認できる。もしG7クラスの電気の殻がたった今オレたちがしてみせたように破られて、ULEDが露出している……というわけでなかったなら、気づけなかったというわけだ。
「えっ。ちょっと待って。とするとこれってもしや……チャンス?」
「気づいちゃいましたか? 遊華さん」
「……ああ、なるほど。そういうことですか」
桜香も特性を生かして、半歩遅れてある事実に気づく。
「他クラスはまだ、教室扉にロックがかかる仕組みに気づいてない。つまり部外者であるはずのオレたちも自由に出入りできるってことだ」
「他クラスの天井にも、もし同じように〈瑠璃〉が隠されてるんだとしたら……」
「いまの内に盗んでしまおうという魂胆なわけですね。なかなかに華やかです」
「華やか……はちょっと違う気もするが……。まあ、そういうことだ。いまの内に盗んでおこう」
2062年4月15日17時。
ということがあったわけだった。4月9日の朝、〈瑠璃〉の宝石がかぼちゃ大のものだけでなく、たかだか数ポイントにしかならない小さなものまでそろっていたのはそういうカラクリである。
「お前が見つけたんだろ? 瑠璃悠理」
「お言葉ですが……なぜさっきからオレに意味ありげな視線ばかり向けてくるんでしょう。まったくもって、意味がわかりません」
「それにこの〈瑠璃〉……〈かぼちゃ大〉のみならず小さいものまで入手してくるとは……なるほど? 他クラスからも盗んだわけだ。実に見事だ」
「人の話を聞けよおい」




