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境界があった夢

作者: 月見酒

これは、何かを意味する夢ではありません。

教訓も象徴も、答えも用意していません。


ただ、目が覚めたあとに

「確かに、そこにあった」と感じてしまうものを、

言葉にして残した記録です。


境界は説明されません。

越えたのかどうかも、分からないままです。



気がつくと、身体はそこにあった。

立っていたのか、歩いていたのかは曖昧で、ただ重さだけが均等にかかっている感覚が残っていた。動いていた可能性はあるが、動いた記憶は確かではない。止まっていたとしても、それを確認する手段はなかった。


周囲の状態は分からない。

音があったかどうかも判断できない。ただ、進行しているような気配だけがあり、どこかへ向かっているというより、向かってしまっている、という感じに近かった。意志の有無は関係なく、身体がそこに置かれている、という事実だけが続いていた。


少しだけ、空気が変わった気がした。

冷えているとも言い切れず、ただ、さっきまでとは違う温度があったように思う。その変化は理由を伴っておらず、立ち止まるほどのものでもなかった。身体はそのまま、同じ調子で進み続けていた。


何かを避けているような動作をしたかもしれない。

けれど、それが必要な動作だったのか、無意識にそうなっただけなのかは分からない。進行は続いていて、方向が変わったかどうかも判断できなかった。


温度について、もう一度だけ意識が向いた。

冷たさでも温もりでもなく、ただ「ある」という感覚だった。それ以上の情報はなく、そのことを考える余裕もなかった。身体は、考えるより先に、次の位置へ移っていた。


やがて、進行が止まった。

止まったのか、止められたのかは分からない。ただ、先へ行けない状態になっていた。戻るという選択肢も浮かばず、そこに留まるしかなかった。


手を伸ばした。

その動作が自然だったのか、必要に迫られたものだったのかは不明だった。伸ばした先で、何かに触れた。押したのか、触れただけなのか、その区別もつかなかった。ただ、そこに「それ以上進めない」という事実があった。


触れた時間は短かった。

それ以上の確認は行われず、理由も説明もないまま、身体は別の動作に移っていた。先ほどと同じように、動いているようで、動いていない状態が続いた。


進んでいるのか、戻っているのかは分からない。

触れる前と同じ調子で、同じような動作を繰り返している気もした。ただ、同一であるとは言い切れなかった。何かが変わった可能性はあるが、それを特定する材料は残っていない。


その後も、特別な出来事は起きなかった。

温度について考えることもなく、触れたこと自体も、次第に意識の外へ押し出されていった。それでも、完全に消えることはなかった。


理由は分からないが、そこには確かに、境界があったのだと思う。



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