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10話 狙い

その晩、私たちはフレハラウ様の”好意”により、

宿と食事を用意していただけることになった。


――見慣れない野菜や果物を中心とした食事。

だが、とても口当たりが良い。


そこで、お師匠様は思いもよらぬ言葉を口にした。


「俺は、ここを離れる」


「え……?

 これから修行をつけていただけるのでは……?」


「誰が、そんなことを言った?」


「お、お師匠様が――」


「俺は“鍛えてやる”と言っただけだ」


「あ……」


「師匠は昔から、こうです。

 私も大半は、一人で鍛えました」


「えっ、そうなの……?」


「お前たちに、試練を与える。

 それを果たせ」


「試練……?」


「この谷を囲う崖に、

 一切、触れず――超えろ」


言葉の意味が、すぐには理解できなかった。


雲まで届きそうな、あの断崖。

それに触れずに越えろなど――。


触れたとて、

超えることなど果たせないと思えた。


「ジゲン。

 お前はあまりに物を知りすぎている。

 彼女たちに口出しするな」


「……心得た」


「俺は、このバ……鹿を連れて行く」


お師匠様の視線が、ルカへ向いた。


「えー!

 ルカはバカじゃないよーっ!!」


項垂れたクオンを見据え、ルカにきつく言い放つ。


「黙れ。

 お前は忠実な下僕に調教してやる。

 覚悟しておけ」


「ひぃ……」


ジゲンが肩の荷を下ろしたように深く息を吐く。

彼女にとってルカは相当な枷だったようだ。


そして、セイメイ様は私たちに向き直る。


「この谷を囲む崖を越え――

 王都まで来い」


「もし、一日でも神事を怠り、

 条件を満たさず王都へ至れば――

 俺は、――あの世界を見放す」


「そんな……!

 どうすれば……」


「“どうすれば”ではない。

 道は、己で切り開くものだ」


「ですが……」


「安易に答えを求めるな」


「現世に帰りたいなら、

 俺が認めるまで鍛えることだな」


それだけ言い残し、

お師匠様はルカを連れて去っていった。


――この時、まだ誰も気づいていなかった。

クオンの口端に笑みが零れたことを。

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