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6/10

ゴーゴー幽霊船!

ブクマ、感想ありがとうございます。

 レイン・サージェスはDLCで初めて登場する人魚の女の子の名前だ。というかDLCの黒幕である。

 収まったはずの厄災を再び引き起こす『滅びの歌姫』としての役割を彼女に持たせたからだ。


 聖女の歌を真正面から打ち負かす嘆きの唄は攻略対象の好感度を一時的に0にさえするくらいなのだから………ゲームの都合と言えばそれまでですが。


 そんな彼女ですが、DLCの時点では既に死人なのです。理由:好奇心isキャットキラー。

 同族の中でも人一倍、人間に興味があった彼女は船乗り達に自慢の歌を聞かせる代わりにお話を聞いていました。


 ある日、彼女は海賊から『幽霊船』の話を聞き、お宝があると聞いた彼女は好奇心とほんの少しの冒険心を出して霧の海に旅に出たのです。

 結果、帰って来なくなりました。以上。


「教訓。危ないところには行かない。勉強になりましたね?」

「ユア様、ユア様。結局、幽霊船は何かも分かってませんよぉ?」

「そして、人魚姫とやらがどうなったかも分かっておりませんが?」

「大した事じゃないですよ? 幽霊船に取り込まれて、その船長に首を切られて生首を船首にされて厄災が収まるまでそのままですよ?」

「「ですよ? で済ませちゃいけないですよ!?」」


 確かに2章はホラーと呼ばれるような展開ばかり詰め込んだ気がします。だって、恋愛ゲームにホラーは鉄板でしょう?

 殺人鬼に追われる中で高鳴る心臓、それは恐怖のはずなのに、どうしてか隣の冴えない男の子がかっこよく見えてしまう………これって恋!?


 いいえ、吊り橋効果です。でも、恐怖は恋愛において必要なスパイスになり得るので入れたのですが、まさか自分があの恐怖の船に乗り込む事になるとは………


「やだなぁ………あそこに行くの」

「そんなにですか?」

「だってあの船って元は人間達の拷問船なんですよ。どうして自分達だけが苦しむのか? 他の人も巻き添えにする。って事しか考えてませんし、捕まれば最後、体の血を全て抜かれて死にます」

「どうして、そんな所に人魚姫は行ったんですか?」


 びるびると震えるアグネス。そういえば、この子って結構ホラーダメだったわよね。今回起きてる予定の死者の蘇りも闇魔法ぶち込んで「むり、かえる」と言って帰ったくらいですからね。


「これも厄災を抑えるため………抑えるため………耐えるんだ、ボク………耐えなさい、私………」


 闇の回廊を抜けた先、一面に広がる大海原と突き出た多くの桟橋の内の1つでアグネスは体育座りをしながら、気持ちの整理をしてますね。

 因みにエリスはその間に、船の手配をしてくれているそうですが………どうにも上手くいってないみたいですね。


「そうやって、あの子も攫ったのか? また、我らの子を攫いに来たのか!」

「もう魔法を使う隙など与えんぞ! 海は我らの領域。無事に帰れると思うな!」

「手足を切り落としてでも、あの子の居場所を吐かせてやる!」

「安心しろ。偽物の聖女、虚飾の女神よ。王国に引き渡すまで生かしてやる。状態は保障しないがな」

「これ、もしかして私のせいですかね?」

「………亜人達も一枚岩じゃないですからぁ。特に魚人は海鮮物を交易で人間とやり取りしてるのでぇ、自分らが1番価値があると思っているようでぇ」


 通りで陸上にわざわざ港まで作られているわけです。海原のど真ん中に作られたこの街は彼らの棲家とも言える海底都市の真上に作られているわけですが、人間と交易する為のものだったんですね。


「さて、どうしますかぁ? エリス様ぁ?」

「私って話を聞かない人、嫌いなんですよね。別に私を女神だなんて信奉しなくても構いませんが、まずは武器を交わすより会話を交わしませんか?」

「ユア様が私達をこんな風に作ったんですよぉ?」

「皮肉を返すとは不敬ですね、エリス。罰として掃除をなさい。跡形もなく、海の藻屑に変えなさい。ただし、24人まで。そこから先は私が対応します」

「分かりましたぁ。それでは、お下がりを」


 エリスが弓を番える。

 槍を持った魚人の頭が吹き飛んだ。

 エリスが弓を構える。

 剣を持った魚人の胴体に風穴が空いた。

 エリスが弓を向ける。

 盾を持った魚人は既に逃げ出していた。

 

 エリスが戦いを開始してから、1分も経っていないというのに魚人達に攻め気はない。それどころか、我先に逃げ出す者たちばかりでエリスは退屈そうに背中を撃ち抜くのみだ。


 ──既に決着はついていた。


「設定した身で何ですが、圧倒的すぎますね。貴女の魔法の発動速度は………殆ど視界に入った時点で撃ち抜いてますよね?」

「戦闘なんて疲れる行為はぁ、さっさと終わらせるべきですからぁ。早撃ち、一斉展開において私以上のものはいませんよぉ」


 目ですら捉えられない。気づいたら、魚人の頭があった場所から血が噴水のように噴き出していたようなものです。

 これが魔弾の射手と呼ばれたエリスの真の実力ならば、ゲームでは何故さっさと聖女を殺せなかったんでしょうか。

 まあ、自分から舞姫の立場を奪われた挙句に妹も死んで視野が狭くなっていたという事にしておきますか。


「ユア様〜これで24人ですぅ〜」

「ご苦労様。それじゃあ、御噺しましょうか? この海底王国の守護騎士改め、ノイズ枢機卿の1人『ウィズ・サージェス』?」

「………っ! ず、随分と野蛮な子魚ちゃんかと思ったら獰猛な鮫の群とはね。同胞を殺す理由を聞かせて貰えるかい?」


 24人を海の藻屑に変えた頃、上がってきたのは攻略キャラの1人。ウィズだった。彼は鯨の魚人であり、控えめに言ってもかなり筋肉質なのだ。腹筋は板チョコみたいだし、腕や足もに引き締まっている。


 加えて、性格は大の女好きで海辺で遊んでいる人間に声をかけては甘い夜を過ごしているという設定の顔のいい男に『おもしれー女』って言われたいファンの多さから作りましたが、まあウザいですね。


 濡れた前髪をかき上げながらこっちへと歩いてきた彼の足は人そのものだが、肌には鱗などある辺り、やはり魚に近い存在なのだろう。


「私を人間達に売り渡そうとしたからですよ。手足をむしって尊厳をとぼしめた上でですよ? それはもう、私という女神に対する不敬ではないですか?」

「………白魚の小魚ちゃん? 確かに僕も自分を海皇だなんて呼ぶことはあるけど、さすがに女神は名前負けしちゃうよ。君がいくらユア様に似ていてもね」

「ユア様ですよ、この方」

「………なんだって?」

「あの運命を見る女神であり、我らが崇拝するユア様御本人よぉ。私達の里が厄災から救われたのもアグネス様に神託を下したからでぇ」

「正気かい? エリス? 君の頭がおかしくなったんじゃないかい? かの女神様がそんなに都合よく現れるわけ………」

「ウィズ? このまま妹を死なせていいなら、好きにしなさい。妹を見張っておけと言われたにも関わらず、人間の女の子と乱行パーティして妹の行方がわからなくなった愚か者。知恵の名前を与えたのは私の勘違いでしたかね?」


 ウィズは女好きではあるが、女性をかなり大事にする性格だ。その為、家族であろうと紳士的に接する彼は妹をたいそう溺愛していて、妹本人からうざがられているくらいだ。


 DLCのストーリーでは、彼からレインが死んだことやあの日、自分が目を離していなければ………という苦悩と後悔を聞く事ができる。

 その時の彼は、女遊びもやめて陰の指すイケメンになっているのでそちらの方が私にとっては嬉しいのだけど。

 まあ、今の信じられないものを見て私の言葉に冷や汗かいてる彼も大人しくていいですね。


「僕を、調べたのかい?」

「レインはファタモルガナ海域にいますよ。このままでは、彼女は助けに来ない兄を憎みだし、世界全てを恨み、死んだ後も怨霊となって世界を呪います。私個人としてはそうなった後で解決しても構いませんが?」

「………っ! 迷ってる暇はないということか!」

「私は貴方の選択を尊重します。ただ、早くしないと世界が滅びるというだけです。別に妹を救わないという選択肢も」

「あるわけないだろう、そんな事!! 〜〜っ! エリス! この方は本当にユア様なんだな!? 薄々そんな感じはしているが!」

「私やアグネスも似たような事されたのでぇ。実際、妹も救われましたしぃ」

「分かった! わかったよ! 船を出す! 少し待っていろ!」

「見なさい、エリス。これが女神の交渉術です」

「脅迫と恐喝が入り混じってるのは交渉とは言いませんよぉ?」


 とりあえずこれで海域に進む為の手段は得ました。目指すは幽霊船。厄災2である『海洋物の減少』を抑えるためにも張り切って行きましょう!

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