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死にゆく君との100日間  作者: 秋鮭 秋刀魚
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5話 彼女と噂になる3日目

月乃とカフェに行った次の日、案の定というか俺のクラスでは昨日あった事で話題がもちりきになっていた。

一緒に昼飯を食べただけでもそれなりに騒がしかったのに、ついでにカフェにいる様子も誰かに見られたらしい。そういうのは直ぐに広まる。これぞSNS社会。

それで、いつから仲が良くなったのかとか付き合っているのかとか...諸々、言われている。


まぁ思春期真っ只中の高校生は、こと恋愛事の話題には敏感であり、それもその対象が学年で一番美人と噂の月乃であれば尚のことだ。そりゃそれっぽい話があれば、ちょっとした騒ぎにもなる。


「おはよ〜」


そんな雰囲気の中、俺は気にせず教室へ入る。俺と月乃は別にクラスの奴らが想像するような関係では無い。たまたま話すようになっただけ。変に意識する方がおかしい。


しかしこっちがいくら平然としていても他の奴はそうはいかない。チラチラとこっちを見ては、コソコソと何かを話す。ちょっと聞こえたのは「アイツと月乃じゃ釣り合わない」というセリフだ。


ちっ、勝手な想像でもの言って、人をディスってんじゃねぇ。


「大変だな」


周りのひそひそ話に少し苛立っていた俺に幼馴染みの遥鹿が話しかけてくる。大変だなって言いながらもちょっと口元が笑ってやがる。面白がってんなコイツ。


まぁ遥鹿は事情を知っているから変な勘違いはしないのだが、その分傍から見てこの状況を頼んでいる。


「アイツ、どんだけ人気なんだよ。芸能人のスキャンダルかってくらい騒いでんじゃねぇか」

「学年一の美女だかね。そりゃ今日一番の話題だろうさ」

「話すのは良いが、変な誤解はやめて欲しい」


なんて遥鹿と話していると、そのうちクラスの男子が話しかけてきた。


「お前、月乃さんと付き合ってんの?」


やっぱり聞いてきたか。いや、変に噂されるより直接、聞いてくれた方がこっちも助かる。しかし、ちょっとそれが遅いな。

散々ひそひそ話され、挙句ディスる言葉も聞こえた俺の虫の居所が悪かった。だからだいぶ、強めの口調で言ったと思う。


「友達ですらねぇよ」


その言葉でクラスはしんと静まり返った。怒りの籠った俺の口調に若干の気まずい空気が流れる。


そして間の悪いことに、そのタイミングで月乃も登校して来た。まずい、今の聞かれたか?だとすれば凄い感じ悪いよな。


「そ、そうだよな!お前と月乃じゃ何か違うもんな」

「そうだな、釣り合わないからな」

「悪い悪い!変な事、聞いたわ!」


そう言って話しかけてきた男子は元いたグループの中へと戻っていく。


以降、クラスの話題に俺と月乃の話が出ることは無かった。いや、しっかりと否定することって大事なんだな。少し月乃が睨みをきかせた目でこっちを見ていた気がするが、気のせいだろう。


「お前、良い性格してるよな」


それは言葉そのままの良い意味ではなく。当然、悪い意味を込めた皮肉。友達ですらねぇ、そんな棘のある言い方は流石に不味かった。だけど俺も腹たってたんだよ。しかし、それを含めて良い性格(・・・・)してるなと我ながら思う。




「私は怒っています」


俺はまたしても、何故か月乃と一緒に昼飯を食べることになっていた。おっかしいな、偶にって約束だった気がするだけどなぁ...


ちなみに朝の騒動もあってか、流石に直接、昼を誘ってくることはなく。携帯のアプリにある無料連絡ツールLIFENET(ライフネット)通称、LIFEのトークから呼び出しの連絡があった。


「え、なんで怒ってんの?」

「え、分からないの?」


マジかコイツ、みたいな顔で俺をジッと見てくる。実の所、何で月乃が怒っているのかは想像がついている。どうせ今朝のことだろう。


「朝のことか?言い方は悪かったかもだが、事実しか言ってないぞ」


友達ですらないって言葉は確かに良くなかったと思うが、まだまともに話すようになって3日目だ。細々(こまごま)と友達の定義について述べる気は無いが、たかだがその程度の付き合いで友達とは流石に言えないだろ。

所詮はただの秘密の共有者。


「何かすっごいムカついた。もっと言い方とかあるんじゃない?ていうか、普通に付き合ってないって否定すれば良かっただけで、余計な一言は要らなかった!!」


そう頬をふくらませてぷりぷりと怒る姿は何処か可愛い。


「悪かったよ。俺も色々、言われて腹たってんだ」

「その気持ちはわかるけどさぁ」


納得なんて全然していない様子で頬は萎んだものの、その口は尖っていて、未だ怒りが治まっていない事を表している。


そんな態度のまま月乃が風呂敷を広げ、中から三段重ねの弁当箱を取り出した。確か、昨日は2段だったよな?おかずが入っていた段とご飯が入っていた段。女子にしたら割と食べるほうなんだなと思っていたが、何か更に増えてるぞ。病人とは思えない程、よく食うな。


なんて思っていると、3段に重ねていた1つを俺の方へと渡してきた。


「え?」

「え?って昨日、約束したでしょ?弁当作ってあげるって」

「聞いたけど、聞いてないんだけど」


たまに弁当作らせてよねみたいな、よく分からんお願いはされた。だが、いつかとは約束はして無かったし、今日は普通に弁当持ってきるんだけど。


「俺、弁当あるぞ」

「あるって言っても、またご飯とちょっとのおかずでしゃ?だから、おかず詰めてきたの」


...確かに今日の弁当もほぼ白米に簡単なおかずを1品だけだ。幾らかおかずが増えたところで全然、食べる余裕はある。


「...ありがとう」

「うん、素直でよろしい」


俺は月乃の厚意に甘え、有難く弁当を頂戴する。それに満足したのか、先程のまでの怒った様子は何処へやら、大きな笑みを浮かべている。

良かった、どうやら朝の件についてはもういいらしい。


「それで、さっきの続きだけどさ」


やっぱり許されて無いらしい。


「釣り合ってないって本当に思ってるの?」


どうやら友達ですらねぇ発言の他に怒りのポイントがあったみたいだ。またしても頬を膨らませた怒りの顔で俺を見つめてくる。

怒ったり笑ったり、そしてまた怒ったり...忙しい奴だな。


月乃のお怒りモードはまだもう少しだけ続きそうだ。

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