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死にゆく君との100日間  作者: 秋鮭 秋刀魚
2/5

2話 誘ってくる彼女との2日目-1

翌朝、朝礼が始まる前の僅かな時間に俺は幼馴染である夕木 遥鹿(ゆうき はるか)を校舎裏に呼び出し昨日あった事を話した。


「てな事が、あったんだよ」

「お前、それ言って良かったのか」


遥鹿が呆れた顔で俺に言う。秘密だよ、なんて言われた事を次の日には話しているんだ、そりゃそんな顔にもなる。


ちなみに遥鹿なんて名前をしているがコイツは立派な男で、そこそこ顔はよく、密かに女子人気がある。おまえに頭も良い。学年で一位を取るほどだ。


「あんな重い秘密、1人じゃ抱えきねぇって」


余命僅かなクラスの人気者。マンガやドラマじゃありふれた設定の彼女を面白がって遥鹿に話した訳じゃない。ただ、たまたま秘密を知っただけの俺が、死ぬまでにやりたいことがあるから手伝ってなんて言われたら、それなりのプレッシャーがかかるわけで、1人じゃ背負いきれないからこうして信頼出来る人間に話しているんだ。


「まぁ気持ちは分かるよ」

「じゃあ、変わってくれるか?」

「無理だろ」


本気で言ってるのか?そんな怪訝な目で俺を見る遥鹿。...流石に冗談だって。


「ていうか、嫌な事じゃないだろ。学年で一番の美人と言われる月乃さんからのお願いだ、他の人が聞いたら羨ましがるだろ」


嫌どころか、むしろ嬉しいよ。言葉を選ばずに言うと、物凄い特役だなって思う。ただなぁ...


「上手い話しには裏があるっていうだろ」


美人局にハニートラップって言葉があるように容姿の良い女性が都合よく近寄ってきた時は何かしらの裏がある。学生の身分でまぁそんな事ないよなと思いつつ、実は月乃には彼氏がいてそいつと共謀しその気になった俺からあれやこれやと言いがかりをつけて金をゆする。一瞬、そんな悪い未来を想像する。

月乃は本当に顔が良く、モテる。彼氏が居ない方が不思議なことを考えると、無くは無い未来かもしれない。


「どうする、カルトの勧誘目的だったら」


悪い顔をした遥鹿が俺にそう尋ねる。そうか...その線もあるのか。『学年で一番の美人に気に入られたと思ったらカルトに誘われた件』なんてラノベにありそうだな。いや、無いか。


「入信するまで監禁とかされんのかなぁ」

「あるだろうな」


あってたまるか。


「...冗談はさておき。月乃の話だけどよ、病人に対する接し方なんて分からねぇ。困ったら力になってくれよ」

「あぁ、分かったよ」


なんて話していると、いつの間にか朝礼が始まる1分前まで時間が迫っていた。学校にいるのに、遅刻扱いは困る。俺たちは足早に教室へと戻った。




昨日のことは無かったかのように、俺の学校生活は普通だった。月乃とは朝に軽く挨拶を交したくらいで休み時間などでとくに話すことは無く。あっという間に、昼飯の時間になる。

まぁ昨日のことは秘密って話だから、色々な奴の目がある中で話しかけたりはしないのだろう。

と、思っていた。


「飯の時間だ〜」


今日も遥鹿と昼を食おうと思い、カバンの中の弁当を取り出す。

何時のように遥鹿の所で昼飯を食べようと、席を立つと目の前に月乃の姿があった。


「っ!!」


思いもしない人物が立っていた事で俺の肩はビクリとなる。おっ、なんだコイツ...

しかし近くで見るとますます月乃の美人具合が引き立つな。ハリのある白い肌、薄いくちびるに大きな瞳。おまけに花のような心地の良い香りが、フワリと鼻を撫でる。


「一緒にお昼食べようよ」


一緒にお昼食べようよ??


彼女からの何気ない提案。しかし、その一言でさっきまで騒がしかった教室がピタリと静まり返った。そして、全員が何故あいつがあの月乃(・・・・)に昼飯の誘いを受けてんだ?みたいな顔で俺を見てきた。俺も俺で、同じような顔をして月乃の顔を見ていると思う。

たった1人、遥鹿だけは一瞬で状況を理解し顔を伏せて笑っていた。アイツめ。


「えっ...おひる?」


我ながらなっさけなく、思わず声が裏返る。

キツイ、キツイ、他の人からの目かキツイ。そもそも昨日の事は秘密じゃないのかよ。


「そっお昼。ここじゃ目立つから裏庭に行こうよ」

「いや、俺は友達と食べる約束してるから」

「夕木君?」


コイツ、俺の交友関係把握してるのかよ。と言ってもまぁ、俺はクラスじゃ遥鹿とばっか一緒にいるからクラスメイトととして知ってても不思議じゃないか。


「まぁそうだけど」

「ねぇ夕木君!お昼、日野君借りても良い?」


と言って遥鹿の方をコテンと体を掲げてたずねる。なんその仕草、可愛いなチクショーめ。男なら、そんな風にお願いされたら誰だって了承しちゃう。抗えない性だ。

例にも漏れず遥鹿とて同じ。ちょっと照れた顔をして無言で頷く。アイツ、月乃の仕草にやられたな。


「てなわけだから、行こっか!」


いや、俺はまだ一緒に食べるとは言ってないけど?そう思いつつも、月乃は有無を言わさず俺の腕を引っ張り、裏庭へと連れて行かれる。

ちなみに教室を出る時に男子共からは怒りと嫉妬の入り交じった眼光を飛ばされた。

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