私の友人は鍛錬の天才。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第二十五弾!
「さぁユリンさん、今日も元気に鍛錬致しましょう!」
「いーやー!?」
私の名はユリン・マッケンジー。
乙女ゲーム『虹色クロニクル』に似た世界において主人公ポジである少女に転生した元OLだ。
そして私を、強引に鍛錬に誘っているのは公爵令嬢ジュリア・イーグルハイム。
この『虹色クロニクル』に登場する悪役令嬢にして……中身が男性格闘家な転生者だ。
ちなみになぜこんな事になっているかと言えば、先日、私が弱いせいで、私達の共通の敵にまんまと利用されたから。そしてそんな私をジュリアさんが身を挺して救ってくれて、その後ジュリアさんがいる場で強くなりたいと言ったせい。
その言葉をジュリアさんに聞かれ、こうしてジュリアさんが日々行っている鍛錬に私が付き合う事になったのだ。
だけど、その鍛錬が地獄だ。
カンフー映画に出てきそうな鍛錬から特殊な環境での鍛錬まで、下手したら死ぬ鍛錬ばかり。
というか私は筋肉を鍛えたくてそう言ったんじゃない。
魔法方面とかで強くなりたいのに。なんで筋肉方面の鍛錬ばかり。
「はいユリンさん、糖度適量のプロティンですわ!」
でもって今回も私は逃げられず。
そして鍛錬して倒れた私に、ジュリアさんはこの世界版プロテインが入った飲み物を寄越した。
「フッ、ユリンさん最近健康的な体になりましたわね」
鍛錬は地獄だけどこのプロティンは好き。
故に私は頑張って飲み、そんな時にジュリアさんは言った。
「休んだら試しに、魔法を使ってみてくださらない?」
「へ?」
言われて私は、体力が回復し次第魔法を使い……驚いた!
前よりも体内の魔力の巡りが良いし魔法の威力も上がってる!
「フッ、何を鍛えるにしても大事なのは肉体ですわ!」
ジュリアさんはウインクしながら言った。
「健全なる精神は健全なる肉体に宿る。ワテクシ達の世界における名言……格言でなく願い的な言葉ですが一理あると思いますの。魔力が精神から来る力なら、肉体を鍛える中で精神が鍛え上げられれば強くなるのは必定。それに血にも魔力が宿るなら、肉体を鍛えて血の巡りが良くなれば、より魔力の巡りが良くなるのは自明の理ですわ!」
「な、なるほど!?」
まさかそんな事を考えて苛酷な鍛錬を!?
ただの鍛錬ヲタクじゃないかと思ってたけど、もしかしてジュリアさんって意外と頭脳派!?
「というワケで、これからもじゃんじゃん鍛えますわよ!」
前言撤回。
メッチャ良い笑顔でそんな台詞……やっぱり鍛錬ヲタクでしょ。
BGM『英雄故事』