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【凶悪!おっさん少女】ある日突然、むくつけきオッサンになった私。  作者: 渦目のらりく
一章 最強“最悪”のオッサンがうちに来て、全てを奪い取っていった日
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9話 あぶねぇ、理性を失う所だった(事後)*挿絵あり

挿絵(By みてみん)


 白狼()陵辱(りょうじょく)されまくった挙げ句に破壊された、愛しの彼女が今……私の目の前に居た。


「……ぽ…………ポ」


 その瞬間に、私の中の理性が決壊していく。


「ポ…………ポゥ……」

「なんだ? 何を言ってるんだ白狼……?」


 命を狙われるそのさなかに置いてさえも、私は空想の産物であり、失われたと思っていた、かけがえのない存在を凝視する事を辞められなかった。


 動揺するマリルちゃんに、私の足が向かい始める。


「何をする気なんだ白狼! その血走った目で私を見るな! ヨダレもなんとかしろ!」


「ポォオオオオオオオオオッッ!! マァァアリルチャァァァ!!!!」

「ひ、ヒィええええ!!」


 絶句したマリルちゃんが閃光の様に逃走を始める。しかし私も彼女を逃す訳にはいかない。指先をピンと伸ばした全力走行で、光の一筋の後を追い続けた。


「なんだ!? なんだなんだなんなの!? なんで私の光の速度(ライトニング)に付いて来れる!」

「ヒャぁあポォオオオオオオオオオ!! ペロペロ、マリルちゃんペロペロさせて!!」

「マリルちゃんって誰なんだ!! 寄るなぁああ!!」


 景色も何も置き去りにして、私は無我夢中でマリルちゃんを追い続けた。

 ジグザグに町を掛けて行くマリルちゃんを追跡する為に、障害物はその身で全て破壊していく。

 さっきまでとは段違いの速度が出ている事に気付きもしない程に、私は最愛の存在目掛けて猛烈ダッシュするだけの、破壊の特急列車と化していた。


「来てくれたんだねマリルちゃん! 私の為に、ずっと側に居てくれるって言うんだね!! ギェええええい!!」

「勘弁してぇええ!! 私違うから、マリルちゃんじゃないからぁあ!」

「マリルちゃペロ! 直ぐに追いついペロペロ!! 抱きしペペロエロ!! エロッッレロロロッロ!!!」

「怖いよぉ!! せめて人語で喋ってよぉお!!」


 やがて町を抜けて荒野に出ると、マリルちゃんは息を切らして大岩にもたれ掛かった。


「ハァハァ……あなた、何が……はぁ目的……」

「うピィいい!! マリルちゃん。マリルちゃんマリルちゃああ〜ん」


 魔力を枯渇させたマリルちゃんはもう疲れ果てている。対して私は、全く息を荒げる事も無く、口元で踊り出す舌をペロンペロンする余裕まであった。


「ハァ……ゼェゼェ……ッく、私はマリルちゃんではな……」


 うヒヒヒ、ペロペロチャァア〜ンス♡


「カワイイあんよでチュね〜。その汗と垢をぜーんぶ舐め取ってあげまちゅ」

「クソっ! 白狼が世界謀反(むほん)の大罪のみならず、こんな変態野郎だったなんて……!」

「ペ〜〜ロロロロロロロロ!!!」

「やめてぇええ!!」


 マリルちゃんの生脚に顔を近付けていく私を、すんでの所で誰かが止めた。


「待て白狼、聖魔教会の人に何をする気なんだ!」


 フイに後方から男の声がして、私は正気じゃない目で振り返る。


「なにってセクハラに決まってんだろぉが!! …………ハっ」


 とてもまともでは無い発言が自らの口をついて出た事に気付き、私は正気を取り戻した。そして私を追って来ていたその男を、改めてうかがう。


「なんて堂々とした態度なんだ、くっそー白狼め、お前は悪だ、僕の討つべき敵だ!」

「だ、誰……?」


 仁王立ちした全身金色の重装備をした少年が、手元のロングソードを私に向けて名乗りを上げる。


「僕はっ聖騎士(パラディン)後藤!」

「パ、パラディン……後藤?」


 それっぽいポーズを取って精悍(せいかん)な笑みを決めた10代前半のあどけない少年は、奇怪な舞を披露(ひろう)しながら自身気に続けていく。


「今はまだEランク冒険者だが、いずれSランクにまで登り詰める男だっ! ハッ! ハッ、フンッ! ヤァア!! 正義執行(ジャッジメント)!!」


 剣を振り回しまくる無駄な動きをたっぷりと見せ付けられた後、私は眉をひそめて率直な感想を漏らしていた。


「ダ……ダセェ」

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