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50話 ジャッジメントオーダー


「フゴぉ……ふごごぉ!」

「んーッ! んんー……!」


 聖魔教会の信徒によって、罪のない町人たちが、さるぐつわをされて人質に取られている。


「やめろ……モルディっ……町の人たちに、危害を……っ」

「フッククク! 『町喰い』での一件は見せて貰ったぜぇぇ白狼ちゃぁん。どういう訳かテメェが、この町に固執しているって事もよぉお!」


 ……体が未知の光線に焼き溶かされて激痛を覚える。

 だけど私は何もする事が出来ない……だって今信徒たちによって剣を突き付けられている人たちは、私を(かば)って罪を負わされたんだ。

 ……この人たちが、どうして私なんかの味方をしてくれたのかはわからない。だけど、この人たちの命を危険にさらしてまで抵抗するなんて、とても考えられなかった。


「汚いぞ……っ……この野郎!」

「なんとでも言えよぉぉ、この光景を見ている奴なんざいねぇ。SSSランク凶悪犯さえ討ち取れればぁ、こんな小さな犠牲にゃ釣りが来るぅう!」

「小さな犠牲……だと!」


 全世界への生中継を中断し、非道極まる方法でもって私の動きを封じたモルディ。正直こいつが、ここまでやる悪党だとは思っていなかった。


「そうカッカするなよ白狼ぉお。こんな機械なんかじゃなく、ちゃぁあんと俺の手で粉微塵にしてやるからよぉ」

「……!」

「対巨大獣迎撃砲『ラドン』――発射準備」


 赤い光に包まれた私に向けて、モルディは右手の銃口を構えていった。すると奴の右腕はガキンガキンと音を立て、等身を越えるほどの巨大砲台を作り上げていく――


「なんだ……それ……!」

「動くんじゃねぇぞぉ……テメェだけはこのモルディの手で、直々に葬ってやるからよぉ」


 私を飲み込む位に巨大な銃口から、紫電がバリバリと走り、電力を取り込み始めていた。


「電磁加速砲ってぇ、知ってるかぁ……?」

「……!」

「コイツはよぅ、こんな小さな町を丸ごと横断しちまう位にぃ、あくどい電撃弾だぁ……射出までに時間を要するのが難点だがなぁぁ」

「そんなもの……こんな所で打ったら、町が!」


 それも()()()()()だとでも考えているのか、モルディはその銃口に莫大な電力を起こしていく――


()()()……だから避けるなよ?」

「ちく……しょう……っ!!」


 タバコをくわえ、走る電気で火を灯したモルディが、顔をななめにして私を見下ろす。


「充填完了ぉ……」

「ちっっくしょおおおお!!!」


 赤い光の中で、私は大地を踏み締めて体を力ませる……本気で抜け出そうと思えばこのレーザーから逃れることも出来そうだったが、モルディの背後で人質に取られた町人たちの姿が見えて、とてもその決断は取れそうにない。そもそもこの場を動いてしまえば、目前で力を溜め込んだ、電磁加速砲とかいう馬鹿げた兵器が町を破壊してしまう。それほど凄まじい電気のエネルギーをバチバチと感じる。

 二重三重に張り巡らされた策略が、私をがんじがらめにして身動きを封じていた……


 だがそこで私は、モルディの背後で落涙し始めたハゲ神父と、信徒の多くを目撃する。


「……モルディ司教、やはりこのような事は……神の御心に背く行為では……ぅ」

「俺たちだって、こんなこと本当は……っ」


 いくらあの白狼を捕える為とはいえ、あまりにも非人道的な行いの数々……神に仕える聖魔教会の彼らが、そのような行為に嬉々として参じる筈が無いのだ。

 ……悪いのは全部、卑劣な『銃』の勇者モルディだ。


「動くなよ白狼ぉお! 妙な動きを少しでもしてみろぉお、お前を守ろうとした町人の首が宙を舞うぞぉぉ、フッククク!」


 仮にも勇者と呼ばれた男が、なんて悪党面をしてやがる!

 巨大な銃口の中で、白熱する雷電が何処までも肥大化していくのが見える。強烈無比なる電磁砲が、赤い光に押し留められた私を狙いすます――


「コイツでフィナーレだぁぁあ!!」

「くそ……っ!!」

「『ラドン』発射用意ぃ……5……4……3!!」


 憎きモルディの顔を睨み付けながら、為す術もなく口を結んだその時だった――!


 ――――――


「……やっぱりだぜ。テレビ中継が途切れたから、変だと思って来てみたが、こんな卑怯な手段に打って出てくるとはなぁ!」

「罪のない町人たちを捕えて……許せないどぉお!」


 ――信徒たちのひしめく背後。そこに現れた転移の魔法陣に現れたのは、パラディン後藤と4人の仲間たちだった!


「おのれモルディ、お前はやっぱり悪モノだ! 正義の(ジャッジメン)執行者(トオーダー)として、お前の罪は捨て置けない! ヤァァア!」

「汚い手を使う御人は、このルディンが滅殺しましょう」

「私はもう聖魔教会の女ではない! 助けに来たぞ白狼!」

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