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【凶悪!おっさん少女】ある日突然、むくつけきオッサンになった私。  作者: のら
一章 最強“最悪”のオッサンがうちに来て、全てを奪い取っていった日
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5話 返せ! 私の“インキャ生活”を!!

 砕け散った下半身。今は亡き、愛らしかったお目々。

 ボトリと落ちた紫色のパンティー部を見下ろして、私達は顔を突き合わせて絶叫し合っていた。


「貴様ァ!!」

「クソ野郎が!!」


 私の咆哮から出た波動に吹き飛ばされた美少女。


「く――――っ!」


 壁に背を打ち付けてフィギュアに埋もれながら、苦い顔をして立ち上がる。


「……油断した。他人の体ってのは存外に動かし辛いもんだ」


 しかし私はそれどころではない。


「うわぁあ!! 返せ! 私の体を……私のマリルちゃんを返せッ!」


 そいつが首をコキリと鳴らしながら歩み寄って来る。


「闘争は膂力(りょりょく)の優劣が全てって訳じゃあねぇ……『力』の勇者ってのは、そのフィジカルに加えて、()()()()()を心得ている者の称号だという事を教えてやろう……」

「え、へぅぅえ?」


 なんだろう……さっきまで私の体だったモノから、なんかおぞましいオーラが出て来た。ていうか怖ッ目怖ッ! そんな悪党ヅラを私にさせるんじゃねぇよ!


 私はその危険を察知してヘコヘコと後退したが、気付けば窓際まで追い詰められていた。


「それにもう、あの魔石はねぇんだ。その辺で手に入る安物とは違うからな」

「ふぇ?」


 ギリギリと、オーラの漂う小さな手が握り込まれていく。

 そうして完成された拳を見上げて、私はぶるぶると震えた。それを叩き付けられれば、明らかにまずい事になると直感で分かるからだ。


 ――ちょっと待てよ、それ私の体の何処から出てんだよ。陰気なオーラ以外出せた覚えはねぇぞ?


「どうしても元に戻りてぇんなら、てめぇで次の魔王をぶっ殺して来るんだな」

「そん、そんな……」

 

 なんだよ、いったなんなんだよこいつ本当に。

 勝手に入って来て無茶苦茶言いやがって! 

 

 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!

 

 夜闇を全てうち払ってしまいそうな光のエネルギーを溜め込んで、その小さな拳が私の頭上に振り上がる。

 

「あぅうう……あわわわ!! 知るかぁぁ!! 魔王なんて倒しに行く訳ねぇだろうが!! わた、わたしはぁ、引きこもりなんだぞこの野郎! ここで永遠、のびのびすくすく、(すこ)やかに生きていくんだぁあ!!」

 

 うろたえる私に、そいつは邪悪な笑みを向けた。


「好きにほざいてろ……てめぇの意見がどうであれ、これからは“白狼”として、戦いに明け暮れる日々を生きていくんだなぁ、モヤシ女」


 ――白狼……私はこれから、あのSSSランク凶悪犯の白狼になるっていうのか? 

 なんで、どうして? 私なんにもしてないのに! ただ家に引きこもってインキャ生活を満喫(まんきつ)してただけなのに!


「俺は静かなる余生を。そしてお前は激動の人生を」


 フィギュア、アニメ、ゲーム、声優。私が心より()でるモノ……

 こいつと体を入れ替えられた事で、それが全て奪われたという事だろうか?

 もしかして私はこれから、何処の誰とも知れぬ、きたねぇオッサンの人生を歩まねぇといかねぇって事なのか?


 ――何もかも私に押し付けて……はいお終いってのは都合が良過ぎるんじゃねぇのか!?


 私の中で何かが切れる。そして気付いた頃には歯を()いて叫び出していた。


「私の宿命までお前に決められてたまるか!」

「あん?」

「私はどんな体になろうとも! このインキャ生活を満喫し続けてやる!」


 たとえ体があの“白狼”になろうとも、私は絶対に、二次元に囲まれ楽しく生き続けてやるんだ!

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