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45話 お前に教えられる事は全て教えた。だからグッドラック……それぞれの敵へ(絶望的にダセェ)


   *


 ……そして、決戦当日の日がやって来た。

 早朝、私は玄関前でクルミ以外の全員に見送られていた。


「白狼……今更なんだが、本当に一人で大丈夫か?」

「んだどんだど〜。どんな卑劣な手を使ってくるか分からないだど。オラたちもやっぱりこっそりついていくど」

「大丈夫だよ(ふぅ)ちゃん、ガドフ。それにみんなが来たら、私の協力者だって言ってるようなものだよ」


 スライトとルディンは、落ち着かない様子で挙動不審にしている。


「まぁ確かに、それじゃあ白狼の決心が水の泡だけどよぉ」

「ここで見守っていますよ。予想通り、本日の決戦は全世界生中継されると昨日発表されましたし……どうかご武運を」

正義(ジャスティス)は負けない! 突き進め白狼!」

「みんなありがとう……必ず帰ってくるから、ここで待ってて」


 みんなの顔を見渡していると、二階からクルミが降りて来た。そして照れ臭そうに言う。


「俺はお前らと違って顔が割れてねぇ……野次馬としてお前の戦いを見守らせてもらうぜ」


 すると彼らは、安堵したような声を漏らし始めた。


「ロリガキが行ってくれるなら安心だど。何せ白狼より強いお師匠様だからだど」

「そうですね、クルミちゃんが言ってくれるなら、いざと言う時にきっと助けて下さいま――」

「――ダメだよクルミ。お前はここに残れ」


 私の口から出た予想外の言葉に、みんなは耳を疑っていた。

 それはクルミにしても同じだったようで、目を細めながらズイと寄って来た。


「どう言うことだモヤシ女……お前はあの()()()()()()()()()()()んだぞ」

「……うん。わかってる」


 クルミの言ったように、私は最後に伝授された光の巨腕を会得出来なかった。

 すると風香ちゃんも、同じように前に出て私に訴え始める。


「そ、そうだぞ白狼! 相手は『銃』の勇者モルディだ。いくら自信が付いたと言っても、奥義を覚えられなかったとなると万が一ってことも……」

「違うんだよ……クルミには、まだ戦うべき相手が居るんだ」


 クルミの眉がピクリと反応を示す。


「俺の相手……? 『ちょめちょめメモリアル』の話しをしているなら、俺はもう全ヒロインを攻略した恋愛マスターだぜ?」

「それは違うな……ヒロインはまだ一人残されている」

「何だと――!?」

「……もう一度ゲームを起動してみろよ。そこに居る筈だぜ……全ヒロイン攻略後、姿を現す最後のヒロイン――現役アイドルの『二階堂茜(にかいどうあかね)』がな」

「現役アイドル――13人目のヒロインだと!?」


 かなりの衝撃だったのか、クルミは四つん這いになって目を見開いた。


「しかも……『二階堂茜』は実在しないと言われる幻のヒロイン。その存在さえ知らずにゲームを終える者がほとんどだ」

「幻……っ」

「その理由は、彼女が全ヒロイン攻略後の一日後という……もはやユーザーに気付かせる気があったのかと疑う特定の条件でしか姿を現さない事と、鬼畜の集大成とも言えるノーセーブの状況下で、一度限りしか姿を現さない事に由来する」

「一日、つまりそれは今日だけ……しかもミスが許されない相手だと!?」

「私はこの『二階堂茜』という伝説のヒロインの存在を、現実の恋愛にやり直しは効かない、という運営からのメッセージとして解釈している」


 勢い良く立ち上がったクルミは、ブルブルと武者ぶるいをしながら、来たる強敵の予感に拳を握りしめた。


「まだ俺には攻略対象が……これまで以上の難敵、ラスボスとも言える存在を残しているのか……っ!」


 顎を上げた私は、クルミに背を向けて歩み始めた。


「私とお前それぞれの攻略対象へと……」


 クルミもまた、不敵に微笑んだまま二階へと歩んでいく。


「俺に教えられる事は全て教えた」


 ……そして私とクルミの声が重なり合う。


「「後は、お前に出来るかどうか」」



 みんなに見送られながら、私は家を出た。不思議と外が怖いとは感じない。

 町人たちの声援に応えながら、いざ私は決戦の地へと向かう――!


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