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42話 補い合って共に強く。もっと強く


   *


 奇妙な契約関係を結ぶ事となった私とクルミ。互いが互いの苦手分野を指南(しなん)し合い、強さを追い求めていく。


「……フフこんなチョロい選択肢でいいのか? 部活終わりのエウゴちゃんに渡す差し入れ……俺が今まで統計してきた情報によると、当然『校舎前で相手を待ち、スポーツドリンクを手渡す』だ」

「バカヤロー!! エウゴちゃんの特性を考えろ! そこは『セグウェイに乗りながらフィールドに乱入。竿の先にクマの干し肉を垂らしてオシャレなスイーツ屋さんに誘導する』が正解だろうがぁあ!!」

「グァっ! 気安く俺の頭を引っ叩きやがって」

「当たり前だぁ! 私はこの学園のOBだぞ!」


 四人は部屋の隅に固まって、不思議そうに私達を見ている。


 ――――


「フフッ……フッフフフ遂にここまで来たぞ、エウゴちゃんに告白する――この時が!」

「早まるなよクルミ。『ちょめちょめメモリアル』では、最後の告白の選択肢を間違えたその瞬間、これまでの苦労か全て水泡に帰される」

「おいおい、俺も学習してんだぜ? お前の助言など無くとも、エウゴちゃんに適した告白が俺には手にとるようにわかる」

「……やってみろ」

「ああ……告白のセリフはもちろん『アルポルポ、アールポ』だ」

「――ふざけるなぁぁあ!!!!」


 私のゲンコツでクルミは床にめり込む。


「な、何故だ! 『アルポルポ、アールポ』はエウゴちゃんの母国語で、愛しているの意味だ! 俺の選択が間違っているというのか!」

「日本人がテメェの真心を伝えるのにッ! たどたどしい外国語なんて使うかぁぁあ! 意味なんて伝わらなくていい、その誠意を母国の言葉にこめて送るんだろうがぁ!」

「バカなぁ――!!」


 そしてゲームは進行していく。

 緊迫の告白シーン――


『愛しているよエウゴちゃん』

『…………』

『…………』

『…………ポルンガポルンガ』


「な?! おいモヤシ女! エウゴちゃんはなんて言ったんだ! 俺の告白はどうなった!?」


 ♫♪(感動のエンディングテーマ)


「は……この曲は!!」


 ――パチパチパチパチ


 私は手を打って、クルミの幸せを祝福する。


「おめでとう」

「俺は……俺はエウゴちゃんの彼氏になれたのか!?」

「そうだ、よくやったよ」

「ポルンガポルンガとは……どんな意味なんだ」

「それはわからない」


 感動のエンドロールを眺め、クルミは涙を流していた。


   *


 ――昼過ぎ……

 私達はパラディン後藤のテレポートで、人気のない荒野へと場所を変えていた。


「もっと力の流れをイメージしろ! お前は精々、無数にある回路のうちの一つか二つが偶発的に噛み合っているに過ぎねぇ、まずは出力を上げるところからだ!」

「ハァァァァ――!!!」

「チガウ――ッッ!!」

「――ブ、ベェェエエエ!!!!?」

「偶然やなんとなくで出来ると思うな!! 全て必然にしやがれモヤシ女! さぁ気合い入れろ!」


 スパルタ組み手の最中に、何度も何度もクルミに蹂躪(じゅうりん)される私を見て、四人は震え上がっていた。

 どうやら、あの“白狼”がこんな小さな少女にボコボコにされ続ける光景は、かなりショッキングだったらしく、口では理解したと言っていた彼らも、今改めてクルミの恐ろしさを痛感しているらしかった。


「力の流れを……もっと、もっと強く」

「もっとだ、もっと強くなる! 大河の激流をイメージしろ!」


 タンコブだらけの顔を上げ、拳に光をまとわせる。微弱だったはじめと比べると、幾らか光度が上がって来ているが――


「――そんなもんな訳ねぇだろうがアァ!!」

「ブッはぁぉあ――!!」


 拳のみに留まらず、その全身をまばゆい光に照り輝かせたクルミが、驚異の速度で私の腹に肘鉄をねじ込んでいた――


「もっとだもっと! 腹の下の所に力を込めろ。この地球を一撃で粉砕するイメージと、力の波長を合わせて」

「うおおおおおおお!! ……てあれ? そういえば私、全身に傷を負ってた筈なんだけど」

「――気ぃ緩めるなァァァ!!」

「ギャバァァア!!!」

「テメェの体も、奴に反逆したがってるって事だろうが!」


 集中力の途切れた私を、鬼の形相で蹴り上げたクルミが、地にツバを吐き捨てながら口角を上げた。

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