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32話 白髪バーコードじじいから譲り受けた魂


   *


 ――夕刻。人気のない河川敷のベンチにて……


「はぁーあ……」


 オレンジ色の西日をキラキラと反射している川の水面を見下ろしていたら、ため息が出た。

 ここも一応、私の好きなアニメに出てくる場所。つまり聖地巡礼をしている訳だが、正直今は興奮よりも、お外生活での不甲斐(ふがい)なさに落胆する。


「全然ダメだったなぁ」


 顔を上げると、遠くの町に聖魔教会の巨大なビルが見える。

 でもなんか傾いてんな。天下の聖魔教会が欠陥工事なんて何事だよ。


「アイツらに合わせる顔が無いなぁ……私にお外はまだ早かったのかなぁ」


 泣き出しそうになりながら、ふと右の掌を開く。その手には、白髪バーコードジジイから貰ったフィギュアが握られている。

 ――これ何のフィギュアだよ……顔がお尻で宇宙服の……おしり星人?

 全く嬉しくねぇ……でも――


「これが、今の私が精一杯やって、唯一得られた戦果だ」


 おしり星人の足を持って、遠景の聖魔教会の上に立たせながら、私はちょっと笑った。


「大切にしよう」


 ――――――ん?


 背後からの違和感に気付いた次の瞬間――私の手にあったおしり星人の頭部が弾け飛んだ。


「その気……間違いねぇぇ。ヤァッと見つけたぜぇぇ」

「誰――!!? 何するの!」


 ニタニタと笑みながら土手を降りて来た男は、フードを被っていて顔が見えない。ただし聖魔教会の制服を着ている事だけは分かる。そして他に仲間は見当たらない。


「聖魔教会の人……しまった、見つかっちゃった」

「なぁんだぁぁ? 白狼。随分よそよそしいじゃぁねぇかぁぁ」

「え……?」

「この……()()に向かってよぉぉ」


 巻き舌の男の声音には、確かな殺意と危険な雰囲気が含まれていた。

 そして、旧友とは何の事だろうか。精神が白狼と入れ替わっている私には、知る由もない話である。


「忘れちまったぁ? ついこの間も会ったじゃねぇか……なぁ、白狼――」


 男の袖から、巨大な()の銃口が覗き、私に向けて迷いも無く弾丸が放たれていた――


「――イイッツ! え……私の体に、傷が……っ?」


 頬をかすめていった弾丸。これまで、一度だって傷付く事の無かった私の体に、一筋の裂傷が出来て血が垂れている。


 ――何、この人? さっきおしり星人を破壊したのもこの弾丸だ……針の目を通すような精度が無ければ到底できる芸当じゃない。

 それに今まで出会ったどの存在よりも、危険なオーラをかもし出している。


「忘れたなんて言わせねぇよぉぉ? ()()聖魔教会に随分なお礼もしてくれてぇ……ずっとそのお返しがしたくてお前を探してたんだ……なぁ、『力』の勇者さんよぉぉ」

「俺……の?」

「そうだぁ。〈神父〉に伝えさせただろうぅ――」


 すると男は、フードを外して腕を上げた。巨大な銃だと思っていた銃身は、彼の()と同化していた。

 いかにも厳格そうな黒髪オールバックのオヤジは、深いシワを刻んだ顔で、銀縁メガネの向こうから私を睨んだ――

 その顔にどうしようもなく見覚えのあった私は、余りの衝撃に、口を覆ったまま動けなくなってしまった。


「――〈司教〉、モルディが、お前によろしくと」

「〈司教〉……中部管区聖魔教会のトップ……いや、そうじゃない!」


 銃になった右腕。言いようも無い迫力と凄み――

 そうだ、この男は……『()()()()――モルディだ。


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