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27話 外でもオタ活できるもん!!


   *


 クローゼットにあったお父さんの昔着てた服を引っ張りだしながら、衣類の山の中で、私は真っ赤な顔で奮起していた。


「できるもん……わたしにだってできるもん……」

「白狼、ぶつぶつ言いながらなにやってんだど〜?」


 いかにもオタク然とした服装をチョイスしていく。一応白狼だという事はバレない方が良いだろう。聖魔教会の人にバレたら襲われるし、お店もパニックになっちゃうだろうから。


 背後から無数の視線に見守られる中、遂に私は、本日という輝かしい日に相応しいファッションを見出した。

 姿見に映る自分を確認する。こいつムキムキ過ぎてパツパツだが、まぁ及第点(きゅうだいてん)だろう。


「あいつ正気かよ、どう思うルディン?」

「いや……なんというか、オタクの認識が古いと言いますか……」


 青のジーンズに、サイズ的にこれしかなかったので赤のチェックシャツを着て前を閉める。みっともなくならない様に勿論ズボンにインだ。変装のために縁無し丸眼鏡を掛けて、念の為髪型も隠そうと、黄色いバンダナを巻いた。荷物は多くなることが予測される事から、黒のリュックサックをバッチリ背負う。


「よし……万事オッケーだ」

「全然オッケーじゃないだろう。本当にあれで出掛けるつもりなのかアイツは……」


 振り返った私は財布とスマホを確かに身に着けている事を確認すると、口を真一文字に食い縛り、これから戦地にでも行くかの様に緊迫した顔で敬礼した――


「それでは、声優イベントの時刻もあるので、行ってまいります……!!」


 苦い顔のまま敬礼を返した四人は、まるで勢いに飲まれてとっさに応答したかの様にも思えた。

(ふふふ、こいつら、私の完璧なオタク偽装に呆気にとられてやがる)


 玄関の前まで見送られた私は、扉を開けようとドアノブに手を掛けて……深呼吸した。

 正直心臓がバクバクしている。この前勢いで外に出た時は何とも無かったのになぁ。


「それじゃ、本当にいきます。今までありがとう」

「今生の別れみたいだど……」

「ちょっと心配だが、大丈夫なのか?」

「――ダダダ、ダイジョビィニィ!」

「え、なに?」

「大丈夫デス……」


 改めて外に出るとなると、なんか異様に緊張してきた。この前外の人たちと喋ってた時はそんな事無かったのに、なんかドモってしまう。


 勇気を振り絞った私は玄関を開け放ち、眩しい日の光を掌で遮りながら、勇敢に一歩外へと踏み出した――


 ――その瞬間……




 ――――ズガンッ!! 




 ものすごい勢いで、私は玄関先に設置されていた落とし穴に落ちた。


「ヒィーヒャヒャヒャヒャ!! 白狼の奴引っ掛かったぜ!」

「アーッハハハ! 無様ですねぇ!」

「んだぁははははは!!! さぁ捕えるど!!」


 ……なるほど、こいつらが私を外に連れ出そうとしていたのはこの為だったのかよ……一瞬でも心が清いとか思った私が馬鹿だった。こいつらはゲロだ。


 網を持って飛び掛って来た三人を私はヒョイと避け、カチコチに固まった顔のまま、ロボットみたいに落とし穴から立ち上がった。


「コンナ事で……めげないもん」

「い、いってらっしゃ……い……」


 そう風花ちゃんへと決意を口にして、私はヨチヨチと、日差しの照る町中へと歩いていった。


「大丈夫できるもん。私は外でも、自由に生きてイケルモン」


 怖いのは聖魔教会の人たちに襲われる事だけど。それならきっと、この体があれば撃退できると思う。


「ダダダダダダ……」


 そうだ、そうだよ! 

 私は今誰よりも強い肉体を持っているんだ。だから外なんて怖くないし、楽勝だ!

 今回の外出でお外に慣れたら、息の詰まるあの家に(私の家なんだけどな)ずっと居なくてもいいし、オタ活もはかどる!


「ダイジョビィニィ……でキュゥモン……ダイジョビィニィ……でキュルルルる」


 見てろよお前ら……

 ――萌島(もえしま)クルミ。第二の人生の始まりだ!

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