19話 「ぁぁーんっ……ぁっ、やらぁあ、オークが見てるぅ、ッオークが見てるぅう!!!!!!」
「ぬああああああああああああああああああああ!!!!!!」
何故か無数の触手に巻き取られて、空に連れ去られていく私……
「にゃあああああっ! いやああ、やめてぇ! っそっ、そんなとこばっか触らないでぇえ!」
ヌメヌメの触手に絡み付かれ、思わず女の子の声が出てしまう私(中年凶悪ヅラオッサン)を、人々は絶句した表情で見上げていた。
「あんっっ あああぁんっ! やらぁああっ! んんっ!」
「な……何やってんだど白狼。みんな引いてるど」
「ああぁんうっ、うぅんっ! だめぇええ、らめになっちゃうのぉぉおっ!!」
「さっきの力があれば、手枷も触手も簡単に引き剥がせる筈だど……?」
「そんな事……んっ! 言ったってぇえ 私こう見えて、女の子なんだよぉっ、あぁあん……っ」
「そうだったのか、オラはてっきりオッサンなのかと思ってたど」
「馬鹿なんですかガドフさん! 奴は紛れも無いオッサンです、騙される方がどうかしていますよ!」
「やらぁああ見ないデェえ!! 私を見ないでぇえ……っ!」
「おえぇええ!!」
ガドフはそんな事を言うが、夢の触手に絡み付かれた私は(案外気持ちが良いです)、親の顔よりも見た状況に夢中で没入してしまった。
「おい、白狼もういいど……早く降りて来てみんなを助けて欲しいんだど。みんな白けた顔で見上げてるど」
「アッヒャいいいん!! やらぁあ、やめてぇえっ アアッ!! オークが見てる! オークが見てるぅう!!」
「んん……オラがオークだど?」
「やめてぇえ、何する気なの!? そんな舐め回すような目で私を見ないでぇぇ……っ」
「ええっ……」
「くっ……こんな辱めを受けるくらいなら……――くっ……殺せ!」
「んぁ? オラに言ってるのかど!?」
「くっ殺ーーっ!! くっ殺、くっ殺……くっコロー!!!」
「どういう意味だど?」
颯爽とガドフの前に出てきたルディンは、理知的な瞳を開いて私を見上げていった。
「くっ……殺せ――とは、昔エロ同人でよく流行った、女騎士がオークやゴブリンを筆頭とした異種族にエッチな仕置きを受けるという……あれです」
「な、なんでそんな事知ってるんだルディン……それにオークもゴブリンも優しい種族だから、そんな事絶対しないど〜」
「人の欲ほどおぞましいものはありませんよ、ガドフさん。かくいう私も、下民の妄想にはお世話になっていますがね」
「関係考えるどルディン……」
「さしづめ白狼は、ガドフさんのその目に見られる事で、エロ同人のヒロインになりきっているのでしょう」
「ぬあああっ! んはぁっ……おぁぁぁあっ!! ああああああんっ!!」
すると次の瞬間、光の道筋が私を捕らえていた触手を切り裂いた。そして情けの無い姿勢で墜落すると、頭の上から恐ろしい声がして来た。
「遊んでないで……やるの、やらないの?」
「ふ……ふわわぁ風ちゃん」
鬼の様な顔で風香ちゃんが私を睨んでいた。一応その質問は二択になってはいたが、突き付けられた剣先から、その解答に迷う余地の無い事だけは理解出来た。