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でもこれが永遠に続くなんてことはありえないと考えていると、ようやく終わった。
自分の席に戻り、刑事は考えた。
相変わらず目撃者は一人もいない。
目撃者がいたとして、あんな時間にあんな寺にいたら、それはそれで充分怪しいのだが。
とにかくいつもと同じく死体だけが増えて、何の進展もない。
思わず笑っちゃうほどに。
それにしても被害者が見つかった場所だけが、いつもと違っていた。
これまでのように路上ではなく夜のお寺。
被害者はあんな時間、あんなところで一人で何をしていたんだ。
三つのランタンが残されていたから、あそこで何かをしていたのだろう。
それとあの寺の住職。
あの被害者のことをなんだか知っているように感じたが、突っ込んでみるとはぐらかされてしまった。
まああの住職はあの夜、友人の誕生日会に出ていたので、完全にアリバイがあるのだが。
それにこの殺人は全て同一犯だ。
この殺人だけ住職がやったとは考えにくいし、すべての犯行をあの住職がやったなんて、もっとありえない。
それならなぜ、被害者と知り合いであることをごまかそうとしたのか。
刑事は考えた。
殺人とは関係のないプライベートなことで、あの被害者と知りあいだと知られたくなかったのではないのかと。
だいたい警察とは関わりたくないと思っている人は、世の中にいくらでもいる。
どちらかと言えば、そっちの方が多いだろう。
それでこれ以上関わりたくないと思って、知り合いではないふりをしたのか。
そう考えると、なんだかそんな気がしてきた。
根拠は全くないのだが。
とにかくこの連続殺人事件。犯人とは思えない坊さんにかかわっている暇などない。
だったら今何をするべきかを刑事は考えた。
しかしいくら考えてもなにも思い浮かんではこなかった。
会社でもそうだし、家に帰ってからもそうだった。
半ば放心状態だ。
それでも仕事は一応できるのだから、習慣というものは恐ろしい。
上司もあれ以来一度も小言を言ってこない。
親しい同僚には「最近雰囲気変わったね」と言われたから、上司が小言を言いにくいオーラでも無意識のうちに出しているのだろう。
気づけば諸星を奇妙なものを見るような目で、見ていることが度々ある。
普段の諸星なら小言を言われないことを喜んだのだろうが、今はそれどころではない。
トラックの荷台から飛んできた鉄板で首を切られたという霊能者のさあやと言う女がいた。
それが化け物となり、連続首切り殺人が始まった。
あの日、諸星の目の前で頭を喰われた少年。
そして野上を訪ねて今回の事件の全貌を知った。




