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霊能者。
そのあまりにもあやしげな単語。
しかし考えれば考えるほど、それしかないように思えてきた。
なにせ相手はどう見ても生きている人間ではないのだ。
そうなると。そんなやつを相手にできるのは霊能者しかいないのではないかと。
諸星の知り合いに霊能者などいない。
そこでネットで調べてみることにした。
霊能者はほぼ仕事として商売としてやっている人が多い。
それならネットで自分のページを持っている人もいるのではないかと考えたのだ。
帰宅の時間からして、できればここから近い方がなにかと都合がいい。
そこで調べたのだが、こんな地方都市でも諸星が思ったよりかは多く見つかった。
――霊能者って結構いるんだ。
諸星は少しびっくりした。
それは見るからに怪しげなものから、怪しいのか怪しくないのかわからないものまで。
その中で諸星は、野上ちかという霊能者が目にとまった。
簡素で落ち着いたページが目を引いたのだ。
――この人ならいいんじゃないの。なんかそんな気がする。うん、この人にしよう。
諸星は早速連絡を入れた。
「もしもし」
「はい、野上ちか霊能事務所ですが」
「ちょっと相談したいというか、お話したいことがあるんですけど」
「いいですよ、いつがご都合がよろしいですか」
「今夜の九時半ぐらいはどうですか」
「かまいませんよ。失礼ですがお名前をお願いします」
「諸星明美といいます」
「諸星明美さんですね。それではお待ちしています」
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「失礼します」
「はい、失礼します」
電話を置くと、上司が諸星を睨みつけていた。
そして大きな声で言った。
「おい、諸星。やけに小さな声で話していたが、まさか私用電話じゃないだろうな」
「いえ取引先です」
「そうか、怪しいなあ」
上司はにやけた笑いを浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
諸星は思った。
ほんといちいち細かい小さい男だな、と。
諸星はそのまま仕事をつづけた。
毎日残業なのに、毎日同じ時間に終わる。




