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いつも姉がいじめたと嘘をつくわがまま妹に陥れられ、王太子に妹をいじめた罪で婚約破棄されて辺境の修道院送りになった悪役令嬢の復讐と、優しい契約悪魔の物語。

作者: 理亜

「クレア・ラッセル! お前との婚約を破棄する。妹のメリアをいじめて、階段から突き落とそうとした罪により辺境送りにする!」


 私は妹がにやっと婚約者の王太子殿下の隣で笑うのを見ました。

 やられたと思いました。だって彼女が私が殿下の婚約者になったのをずるいずるいといつも言ってたのを聞いていたのですから。

 でもさすがにここまでするとは思いませんでした。


「……そんなことはしておりませんわ!」


「お姉さま、嘘はいけませんわ。いつもいつも私をいじめて、階段から突き落とそうとしたのを使用人も見てましたのよ。うふふ」


 使用人を買収しましたわね。狡猾なメリアがしそうなことですわ。

 私はいつもこの一才下の妹にお姉ちゃまがいじめると告げ口され、両親に怒られていたのです。

 いじめてませんし、いつも都合が悪くなると私がいじめたと言い訳をしたのです。

 お母さまの大切な指輪を持ち出し失くした時もお姉ちゃまが、これで遊ぼうといったのと言い訳し、口がうまい妹に私は負けて、罪を認めないまま、両親に怒られました。

 他にも数々の罪を押し付けられてきたのですわ。


 ああ、でもここまでするとは……。


 私は言い訳をするなと怒鳴られ、衛兵に連れられて……辺境に送られることになったのです。




「クレア、今日こそ僕と契約して、すべてに復讐しよう♪」


「いやそんな軽口で、遊びに行こうぜみたいなにいわれても、魂なんて悪魔に売れませんわよ!」


 私が送られたぼろ修道院には悪魔が住み着いていました。

 目の前にいる彼です。

 黒い翼以外は黒髪黒目の十八ほどの普通の青年に見え、いつもいつも修道院でごろごろしている存在です。

 初めて見たときは驚きましたが、でもね、私以外いないこのぼろ屋ならこんなのもいるかと納得しました。


 一応監視している兵はいましたが、うまく彼は隠れているようです。

 私のことを気に入ったといって、契約をしてすべてに復讐しようぜと誘ってくるのです。


「どうして、契約してくれないのかな、あのバカ妹は君を陥れて、王太子の婚約者の後釜になったんだよ? 悔しくないの?」


「悔しいですが、魂を悪魔に売って復讐しようとは思いませんわ!」


 この悪魔の軽口をかわして、私は今日も掃除をします。


「カイン、掃除くらい手伝ってください!」


「……契約してくれなきゃ手伝わない!」


「そこをどいてください、邪魔です!」


 今日も今日とて、彼の軽口を聞きながら掃除をしていました。どうもこれが日課になりつつあります。


「あーあつまんない」


 彼はぽんっと黒猫に姿を変えて、ぼろ椅子からしゅたんと降りて、ごはんでも貰いに行こうかなととっとこと歩き出しました。

 なんというか自由人です。


「クレア・ラッセル! 罪を悔いたか?」


 ばんっと乱暴に修道院の扉があきました。するとそこには王太子殿下と妹がにこやかに笑いながら立っていたのです。半年もたってるのに、どうしてここまでやってきたのか?

 私がほうきを手に驚いていると、妹が子供ができたから、あなたが反省しているのなら、恩赦で許してあげてもいいと言い放ったのです。


 ……ああそういうことでしたか。かなりお腹が大きいので、子供ができたからあんな強硬手段に出たのだなと私は悟りました。


「罪なんて犯してませんし」


「罪人のおばをもつなんてこの子がかわいそうだから、そうね、消えてもらうわ!」


 私が驚いていると、殿下の横にいた兵が剣を手に私に襲い掛かってきました。そうか、すべてを知る私を消しにしたかと悟りました。そこまでするか……と思った瞬間、私は「カイン、契約をするわ!」と叫んだのです。

 死にたくない一心でした。


「わかった!」


 黒猫が話したので、皆が驚いたようです。口をメリアがあんぐりと開けていますわ。

 いえ、時間が止まったようにゆっくりに皆の動きがなって、そして黒い光が辺りを満たして……。


 私の横にいつの間にか人型のカインが立っていて、にっこりと笑ったのが見えたのです。




「……何か優しすぎるね、クレアは、殺さないでよかったの?」


「あれで十分ですわ」


 今日も今日とて、私は椅子に寝そべるカインの横でほうきを手に掃除をしています。

 私が願ったのは、死にたくない、殺されたくないということ、そして……二人に対する復讐でした。


「でもあれって復讐なの?」


「立派な復讐よ」


 私はカインの力を借りて、メリアと殿下を暗黒の国といわれる遠い遠い地に転送するようにお願いをしたのです。

 魔族たちが住まうその国は、私たちの国からもっと遠い果ての果て、船で数十年以上かかる地にあり、人が誰も住まないといわれる暗黒の地といわれるところでした。


「一応、あそこには人も少しいるから、そこまで転送したけどさあ、一応あいつらまだ生きているよ」


「自分たちの権威が通じない場所で、苦労して生きていくのですわ、私を殺そうなんてこちらに戻ることができないので無理でしょうし」


「殺せばよかったのに」


 私はカインに笑いかけます。私の魂は死後、この悪魔のものになるのでしょう。

 でもそれはそれでいいかもと思ったのです。


 優しい悪魔は、今日もふわあとあくびをして私の隣にいます。普通の悪魔は願いを叶えたらすぐ魂をとるのに、彼はそれをせずに私が寿命で死ぬまで一緒にいるといってくれました。悪魔のなかでも変わり者。私を守ってもくれています。

 私はこれもまた一つの幸せと思うのです。

お読みくださりありがとうございます。

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