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悪役令嬢は当て馬王太子と2人で幸せになります

本編最終話です。

かなり長くなってしまいました。

魔王封印から1ヶ月近くが経った。ちょうど学年末ということもあり、そのまま貴族学院は休みに入っている。


そして今日、無事シュメリー王国の学院を卒業したメルシアお姉さまが花嫁修業のため、我が家にやって来た。1年間、公爵夫人になる為の勉強を行った後、エイドリアンの卒業と同時に結婚する予定になっている。


「エイリーン、久しぶりね。元気そうで何よりだわ。あなたが魔力を使い果たして命を落としそうになったと聞いて、心臓が止まるかと思ったのよ!そうだ、コレ!あなたが食べたがっていた魚の加工食品よ。後、あなたが欲しがっていた調味料も持ってきたわ」


相変わらず元気なメルシアお姉さま。


「メルシアお姉さま、ありがとう!これは干した魚?おいしそうね」


メルシアお姉さまが持ってきた魚の加工品は、どうやら前世で言う“干物”だ。焼いて食べると美味しいのよね。そして私が頼んだ調味料は、もちろんシュメリー王国で刺身の様なものを食べたときに付いていた調味料だ。この調味料、醤油によく似ている。醤油があれば、日本食も作れるわ!


前世の記憶をカルロ様達に話してから、たまに日本食を披露している。この前は“天ぷら”を作った。皆から大好評だったのだ!



「それにしても、明日の魔王討伐のお祝いパレードに間に合ってよかったわ。エイドリアンとエイリーンの晴れ姿、しっかりこの目に焼き付けないとね」


そう、明日はいよいよ魔王討伐のお祝いパレードが行われる。私たちは街中を天井のない馬車で回るらしい。パレードの後は、王宮で祝賀会も行われるとのこと。なんだか緊張するわね。


「それにしても聞いたわよエイリーン。あなた今回の件で、民から女神として崇められているんですってね!エイリーンとカルロ殿下をモデルとした、魔王討伐の演劇まで行われるらしいじゃない。それも今をときめく人気俳優たちが演じるとのことで、今からかなり話題になっているんですって!そうそうこれを見て」


メルシアお姉さまから1枚のパンフレットを受けとった。なんじゃこれは!!


「今話した演劇のパンフレットよ。さっき街で配っていたの!それにしても素敵ね、命を懸けて王太子を守った婚約者と、瀕死の婚約者の命を取り留めるため、残り少ない魔力を供給し続けた王太子ですって!公開はまだまだ先みたいだけれど、私絶対見に行くわ!そうそう、あなた達の話はシュメリー王国でも話題になっているのよ。凄いわね、エイリーン!」


嬉しそうに話すメルシアお姉さま。それにしても、私の知らない間にこんな大事になっているなんて!どういうことなの?


「ねえ、メルシアお姉さま、その演劇って中止に出来ないのかしら?」


私とカルロ様をモデルにした演劇なんて、恥ずかしすぎる!!何とかして止めてもらいたいわ。


「さぁ、私に言われてもね」

確かにメルシアお姉さまに言っても仕方がないわね。そう言えば、最近リリーがニヤニヤしていたのは、まさかこのことを知っていたから?


「エイリーン、国王陛下や王妃様から許可が出ているらしいから、中止は無理だよ」

その声は、エイドリアン。


「あなた演劇の事知っていたの?」


「もちろん、エイリーンに言うと中止にしろって騒ぎそうだから黙っていたんだけれど。まさかメルシアが教えてしまうなんてね。こんなものまで貰ってきて」

私から奪ったパンフレットを見ながら呆れるエイドリアン。


「そんなこと言われたって、てっきり私はエイリーンも知っているものかと思っていたもの」

慌てるメルシアお姉さま。



「あなた達、いつまでそんなところで立ち話をしているの。さあ、中に入って。メルシアちゃんも疲れたでしょう」


間に入ってきたのはお母様だ。うちのお母様、メルシアお姉さまをとても気に入っている。メルシアお姉さまもお母様に懐いているし、この分だと嫁姑問題は心配なさそうね。


ちなみに、結婚するまではメルシアお姉さまも含め、今まで通りみんなで生活する予定だ。結婚後は新しく隣の敷地に家を建てて、新婚の2人はそちらに移ることになっている。まあ、敷地内同居みたいなものね。


その日は、メルシアお姉さまが我が家にやって来た事をお祝いして、ささやかな宴が行われた。ただ、明日のこともあり、早めに切り上げることになった。


正直明日のパレード、不安しかない。自分の知らないところで、いつの間にか女神扱いされていたのだ。私、どうやって振舞えばいいのかしら…

不安な気持ちを抱えたまま、眠りについた。



翌日、私は魔王討伐の時と同じ、女騎士の衣装に身を包む。なぜなら、魔王討伐時と同じ格好でパレードに参加するのがルールだからだ。


あの日、泣きながら私の髪を結んでくれたアンナ、今日は上機嫌で鼻歌を歌いながら私の髪を結んでいる。


「お嬢様、出来ましたよ!」


「ありがとう。アンナ」


私は皆が待っている玄関へと向かう。


「エイリーン、その衣装、とっても素敵ね!本当の騎士みたいよ」


「ありがとう。メルシアお姉さま」


「私たちも後で見に行くわ。気を付けて行ってらっしゃい」

お母様とメルシアお姉さまに見送られ、馬車に乗り込む。今回のパレードは総騎士団長でもあるお父様も参加する。


「エイリーン、緊張しているのかい?」

私が固まっていることに気づいたエイドリアンが、頬っぺたをつついて来る。


「やめてよエイドリアン。別に緊張なんてしていないわ!」

エイドリアンの手を振り払ってそっぽを向いた。

お父様とエイドリアンが笑っている声が聞こえてくるのが、妙に癇に触るわ。そもそも何で私が女神になっているのよ。そんな変な噂さえなければ、私も楽しくパレードに参加できたのに…


気が重いまま、王宮に着いた。案内された広間に向かうと、既に皆揃っていた。毎回待たせてしまって申し訳ないわね。


早速大臣により、今回のパレードの内容やコースが伝えられる。先頭はお父様とエイドリアン、騎士団を間に挟んでリリーとフェルナンド殿下が乗る馬車、再び騎士団を挟んで私とカルロ様が乗る馬車、最後に副騎士団長のカロイド様という順で街を回るらしい。



今回は魔王を封印した聖女が主役ということで、リリーたちが前。とにかく笑顔で手を振っていればいいと言われた。それなら王妃教育で何度もさせられたから得意よ。何とかなりそうね!


「エイリーン様、パレード楽しみですね。私上手に手を振れるかしら」

リリーが私に話しかけてきた。今日も聖女らしく白い服を着ている。そうだわ!


「リリー、あなた私とカルロ様がモデルの演劇がある事、知っていたの?」

私の言葉に、目が泳ぐリリー。


「えっ、まあ…。でも素敵じゃない!エイリーン様をモデルにした演劇だなんて!私公開日に絶対見に行きますわ!」


「リリー、恥ずかしいから止めて…お願いだから」


「エイリーン、恥ずかしがることはないよ。僕たちの絆を世に広める良い機会だ!公開初日は僕も絶対見に行くよ。エイリーンも行こうね」

カルロ様まで何を言い出すの!私は絶対見に行かないんだから。



「お取込み中失礼します。そろそろパレードが始まりますので、馬車まで移動して頂けますでしょうか」

もうそんな時間なのね。


「エイリーン、行こうか」

カルロ様のエスコートで、馬車へと向かった。目の前に現れたのは、金を基調にしたそれは見事な馬車だ。こんな立派なものは初めて見る。


「エイリーン、さあ乗り込もう」

カルロ様に手を引かれ、乗り込んだものの、中もやっぱり豪華ね。馬車を引く馬まで金色の装飾を付けているわ!


そしていよいよ馬車が動き出す。門を出て街中に向かうと、大歓声が聞こえてきた。沿道には沢山の人が溢れており、皆手を振っている。それにしても凄い人ね。


私達の乗った馬車が沿道へと差し掛かったので、私もカルロ様も笑顔で手を振り始めた。と、その時


「「「エイリーン様~~」」」」「「「「カルロ殿下」」」」」

あちこちで私たちの名前を呼ぶ声が聞こえる。その声は凄まじく、耳が痛くなるくらいだ。


「僕達凄い人気だね」

カルロ様が耳元でささやく。それをみた沿道の人たちが


「きゃ~~素敵!!!」と叫ぶ。何なんだこの茶番劇は…

お母様やメルシアお姉さまが言っていた通り、どうやら私達は民たちからかなり人気があるようだ。このあり得ないほど大きな声援を聞いて納得した。


もうどこへ行っても私たちの名前を呼ぶことが鳴り響く。中には“エイリーン様、補填ありがとう“と掲げた横断幕を持っている人たちもいる。順調に補填が行われているようで、その点は安心した。


約1時間、ずっと笑顔で手を振り続け、何とかパレードが終わった。パレード後は、王宮で祝賀会が行われた。ここでも色々な人に声をかけられまくられ、本当に疲れた。長かった祝賀会も無事終わり、今はカルロ様・リリー・フェルナンド殿下・私の4人でゆっくりティータイムだ。


「エイリーン様、今日は本当に疲れました。笑顔の作りすぎで顔は痛いし、手も振りすぎで疲れたわ。もう帰って寝たい」


「情けないね!ニッチェル嬢。この程度で疲れただなんて」


「何よ、私はエイリーン様に話しているのよ、何でカルロ殿下が話しに入っているの?図々しいわね」


「図々しいのは君だろう!僕は図々しくない」


「いい加減にしろよ!皆疲れているんだ。変なことで喧嘩するな!」


「「はい、すみません」」


この3人のやり取り、相変わらずね。きっとこのやり取りは今後も続くのだろう。私はふと、今までの出来事を思い返す。7歳で前世の記憶が戻ってから、楽しいこと、嬉しい事、悲しい事、大変だった事、本当に色々な事があった。


物語通りに進まず、焦ったり不安になったこともあった。でももうその物語も魔王を封印した今、フェルナンド殿下とリリーの結婚式は置いておいて、とりあえず終わりを迎えた。


これからは、私たち自身が独自のストーリーを作ってく。その中には、辛いこと悲しいこともあるかもしれない。けれど、皆がいればきっと乗り越えられる。3人を見ていると、なんだかそんな気がした。




♢♢♢♢♢

~魔王討伐から2年後~


「エイリーン、準備は出来た?」


「ええ、ばっちりよ」

私の返事を聞き、部屋に入ってくるお母様。


「エイリーン、とても奇麗よ!さすが私の娘ね。あなたもそう思うでしょ、アンナ」


「もちろんです、お嬢様は世界で一番奇麗です」


「ありがとう、2人とも」

そう、今日は私とカルロ様の結婚式だ。カルロ様たっての希望で、今着ているウエディングドレスも、カルロ様がデザインした。カルロ様、実はデザインの方に才能があるのかもって言うほど、素敵なドレスだ。


コンコン

「エイリーン様、そろそろ式のお時間です」


「はい、今行きます」

私はお母様にエスコートされ、お父様の待つ教会へと向かう。ちなみにアレクサンドル王国では、父親にエスコートされてチャペルを歩くのは日本と一緒。ただ、チャペルで新郎に引き渡すまでは、新郎新婦は会えない決まりになっている。


また、王族の結婚式ということもあり、両親と一部のメイド以外は、式が始まるまで私に会うことが出来ない。中々厳しい決まりになっている。


「エイリーン、来たか。本当に美しいな」


「お父様ありがとう」

私はお父様とお母様に向き直る。


「お父様、お母様、18年間大切に育てていただき、ありがとうございます。私は、カルロ様と必ず幸せになります。だから、これからも見守っていてください」


「エイリーン…」

涙ぐむお母様とお父様。

「エイリーン、幸せになるんだよ」

そう言って抱きしめてくれた。


いよいよ結婚式がスタートだ。私はお父様にエスコートされ、カルロ様の元へと向かう。周りを見渡すと、フェルナンド殿下とリリーがまず目に入った。彼らも半年後には結婚する予定。


反対の席には、1年前に結婚したエイドリアンとメルシアお姉さま。エイドリアンの腕には、生まれたばかりのアランもいる。2人の子供だ。


他にも国王陛下、王妃様、ソフィア王女、ライリー様やエマ様、カルロ様の従兄弟のジーク様もいる。沢山の人が、私たちの結婚を祝うために来てくれているのだ。


そして、カルロ様の元に着いた私は、お父様からカルロ様へと引き渡される。真っ白なタキシードを着たカルロ様は、本当にかっこいい。


いよいよ式が始まる。式と言っても契約書にサインをし、誓いのキスをする。キスと言っても、ほっぺたにするのだけれどね。


そうそう、ほっぺたにキスと聞いて、唇じゃないのか!て、カルロ様が怒っていたけれど、私は頬っぺたで良かったって思っているの。だって恥ずかしいものね。


無事式を終え、バルコニーへと向かう。そこには、沢山の民が私たちを祝福する為、集まってくれていた。私とカルロ様は、民に向かい手を振る。その時


「エイリーン、僕に人を愛するという気持ち、愛されるという気持ちを教えてくれてありがとう。これから2人で幸せになろう」


この言葉…

漫画の世界で、カルロ様が死ぬ前にリリーに向かって呟いた言葉!この言葉を聞いたとき、今までかんばって来た事が報われた気がして、涙がこみ上げる。


「もちろんですわ、カルロ様。必ず2人で幸せになりましょうね!」

私はカルロ様に向かって、微笑む。カルロ様も私に向かって微笑んでくれた。そして、私たちは民に向かって手を振った。

この幸せが、永遠に続くことを願って。


おしまい


ちょっと無理やり感はありますが、これで本編は完結です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m


今後は番外編として、カルロ様&エイリーンやフェルナンド殿下&リリーの今後や、エイドリアン&メルシアの馴れ初めなど、本編で書ききれなかったことを、ゆっくりではありますが書いていけたらと思っています。


よろしければ、引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m



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