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魔王との戦い~リリー視点~

エイリーン様に通路を作ってもらい、私とフェルナンド様は魔族を振り切り何とか奥に進むことが出来た。しばらく進むが、魔族は現れない。


「フェルナンド様、魔族が全然いないわ。さっきみたいに急に現れるのかしら?」


「それは俺にもわからないよ。とにかく油断せずに進もう」

フェルナンド様は私の手をしっかり握り直し、慎重に先へと進んでいく。しばらく進むと、薄暗いが少し開けた場所に出た。


また沢山の魔族が現れるのかしら。私とフェルナンド様は身構える。でも、その先に居たのは…


「よくここまで来たな、聖女。今回の聖女はいつもよりも若いな。さては聖女になって間もないな」


美しい黒色の髪を腰まで伸ばし、金の瞳をした男性が椅子に座っていた。顔はめちゃくちゃ整っている。一言で言うと美男子だ。ただ耳はとんがっているし、角も生えている。もしかして、魔王?


「あなたが魔王なの?」


私は恐る恐る聞いてみる。


「ああ、そうだ!俺が魔王だ」

やっぱり…

この男が皆を苦しめている張本人ね。


「ちょっとあんた、何で私が聖女の時に目覚めるのよ!あんたが目覚めたせいで、王国は大変なことになっているのよ。私もこんな恐ろしい洞窟に駆り出されるし。本当に迷惑しているんだからね」


ふん、言ってやったわ。隣でフェルナンド様が口をぽっかり開けて固まっているのはなぜだろう。


「ハハハハハ。今回の聖女は中々面白いな。まあ良い。俺は無駄話は嫌いだ。さっさと勝負をつけるか。そう言えば前回の聖女は俺を封印することが出来ずに、命を落としたな。そのせいで、次の聖女が現れるまでの間、俺たちの時代が続いた。あの時は良かったな!さて、お前はどうかな?見た感じ弱そうだけれど」


嘘、前回の聖女様は命を落としたの?そんなの聞いていないわ。聖女なら誰でも魔王に勝てるのではないの?どうしよう、私に魔王を封印できるのかしら?


「リリー、大丈夫だ。落ち着け」

無意識に震えていた私に、フェルナンド様が優しく抱きしめてくれる。


「なんだ怖いのか?なら逃げてもいいんだぜ」

魔王が挑発してくる。なんて性格の悪い男なの!


「誰が逃げるものですか!あなたを倒して、私はみんなの元へ戻るわ」

そうよ、私が魔王に勝たないと、私の為に必死で戦ってくれているエイリーン様やカルロ殿下、エイドリアン様、騎士団の人たちみんなが救われない!


絶対勝って見せる!

私は魔王に向かって手をかざし、魔力を放出する。手から一気に魔力が放出され、魔王目掛けて飛んで行った。


魔王も立ち上がり、黒いエネルギーを放出した。私の魔力と魔王の魔力がぶつかり合い、私たちの戦いはついに幕を開けた。


魔力がぶつかり合う衝撃で、周りは凄い風が吹き荒れており、フェルナンド様が吹き飛んでいく姿が目に入ったが、今は構っていられない。


とにかく魔王を倒さないと。私は魔力の放出量を上げ、一気にかたを付けてしまおうと考えた。でも、魔王の魔力はすさまじく、中々撃破することが出来ない。それどころか、次第に魔王の魔力に押され気味になってきた。


このままではまずい。でも、どうすればいいの?どれくらい魔力を放出していただろうか?

何とか私の近くまでやって来たフェルナンド様が、治癒魔法で魔力を供給してくれている。


「おい、聖女、お前の力はこんなものなのか?今までの聖女の中で一番弱いな!こんなものでは俺を封印することなんて、夢のまた夢だぞ」


「うるさいわね、まだ本気を出していないだけよ」


強がりを言ってみたものの、もう結構限界に近い。それにしても、魔王の奴一体何なの?あれだけの魔力を放出しているのに、顔色一つ変わっていないじゃない。



もうダメ、私魔王になんて勝てないわ…


そう思った時だった。


“リリー、諦めないで”


この声は、エイリーン様?

あり得ない、エイリーン様は今カルロ殿下たちと手前の洞窟内で、魔族と戦っているはずだわ。


そう思いながらも、辺りを見渡してしまう自分がいる。


「えっ、嘘…」

私のすぐ隣に、透けてはいるがエイリーン様がいたのだ。


“リリー、大丈夫よ。絶対に魔王に勝てるわ!だってあなたは()()()()なんですもの。魔王に負けるはずがない”


ヒロインって何?


“さあ、前を向いて。大丈夫、フェルナンド殿下の魔力も入ってきている。そうね、少し肩の力を抜いて、ゆっくり目を閉じて!”


エイリーン様は私の手を握りながら、優しくそう言った。私は言われるがまま、目を瞑った。


“そうよ、次はあなたの中に眠る聖女の力を目覚めさせるの。大丈夫、あなたはヒロインよ!きっとできるわ”


聖女の力?ヒロイン?もう魔力量は大分減っているけれど、魔力と聖女の力は違うのかしら?よくわからないけれど、とにかく心の中で、念じる。


お願い、私の中に眠る聖女の力よ、どうか目覚めて!私に皆を守る力を分けて!私は皆を助けたいの!お願い、目覚めて!お願い!


その瞬間、私の体が一気に輝きだした。体の奥底から、今までに感じた事のない力がみなぎってくる。


「何?!その力はまさか…」

そう呟いた魔王は、明らかに動揺している。これなら勝てるかもしれないわ。


お願い、私の体から湧き上がるパワーたち、一気に放出して!私は全エネルギーを手に込めた。


「魔王よ!我の持つ聖女の力でここに封印されよ!」


その瞬間、魔王目掛けて膨大な光が一気に放出された。


「嘘だろ…やめろ!うわぁぁぁぁぁぁぁ」


“パリーン”


私はその場に倒れこむ。すぐにフェルナンド様が、抱き起してくれた。


「リリー、よく頑張ったね!魔王は無事封印できたよ」

魔王が…周りを見渡すと、確かに魔王の姿はどこにもない。


「私、封印できたのね!良かったわ」

フェルナンド様に優しく抱きしめられた。私も生きているのね、フェルナンド様の温もりが気持ちいわ。


「それにしてもリリー、急に顔つきが変わったからびっくりしたよ。やっぱり聖女って凄いんだね」


「いいえ、私が聖女の力に目覚めたのは、エイリーン様のおかげよ。エイリーン様がアドバイスをしてくれたから私は聖女の力を目覚めさせることが出来たの。そう言えばエイリーン様はどこ?」


再び辺りを見渡すが、エイリーン様の姿はどこにもない。


「リリー、一体何を言っているんだい?エイリーン嬢はまだここには来ていないよ」

フェルナンド様は困惑顔だ。でも、確かにエイリーン様の声と姿を見た。


まって、あの時のエイリーン様、透けていなかったかしら。それに魔王を倒した直後、何かが割れるような音がしたわ。あれは、水晶?


私は首からぶら下がっている、エイリーン様からもらった魔石を確認する。ヒビは入っているが、割れてはいない。フェルナンド様の魔石も確認するが、こちらも割れていなかった。


嫌な予感がする…

もしかして…


フェルナンド様の腕の中から抜け出すと、すぐに立ち上がった。少しふらつくが大丈夫だ。


「リリー、急に立ち上がってどうしたんだい?君は魔王との戦いでかなり体力を消耗している。とにかくしばらく休むんだ」


フェルナンド様が私の腕を掴んで座らせようとしが、それを振り払う。


「嫌な予感がするの!今すぐエイリーン様の元に行かなきゃ!」


もつれる足を必死に動かし、何とか元来た道を戻ろうともがく。

その時、フェルナンド様に抱きかかえられた。


「リリー、今の君には走るのは無理だよ。俺が抱っこしてエイリーン嬢の元まで連れて行ってあげる」


「ありがとう、フェルナンド様。とにかく急いで!お願い」


「わかった、急ごう」

フェルナンド様は私を抱えて走り出した。

お願い…

どうか無事でいて…エイリーン様!


魔王を無事倒すことが出来たリリー。ちなみに、魔王との戦いのときに現れたエイリーンは、もちろん本物のエイリーンではありません。ただ、リリーの胸には小さなエイリーンが付いていたので、リリーを心配したエイリーンの気持ちが、ああいった形で現れたのかもしれません。

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